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2023年路線価発表 全国平均2年連続上昇

7月3日、国税庁より相続税、贈与税にかかる土地等の評価額の基準となる路線価(1月1日時点)が発表されました。

全国的に上昇率が拡大し、コロナ禍からの回復の兆しが強くなっているようです。

しかし、東京都心部のオフィス空室率は6%越えしており、弱いオフィス需要が今後の懸念材料となっています。

現場サイドとしては、ここ数年の東京都心部の不動産価格上昇については短期的に見ると、そろそろ天井に近いのではと感じております。

なぜなら、建築費上昇などの影響から東京都心部の新築マンション価格上昇は止まらない状況ですが、購入している層は超富裕層であり、一般サラリーマンが到底手を付けられる価格水準ではないからです。

また、新築マンション以外においては、今年に入ってから在庫の増加が止まらず、水面下では大幅な値段調整によってまとまっている事案も多くなっています。

そんな中、悩ましいと感じるのは新規物件供給価格が下落していない点です。

これによって、
この不可解な不動産相場をどう考えるべきか?
当分の間、不動産購入は待つべきか?

というようなお客様からの相談も増えています。

そこで今回は、路線価の発表内容を分析しつつ今後の展望を解説していきたいと思います。


7月3日路線価発表、その内容は?

全国ベース

日本経済新聞「路線価、2年連続上昇 23年分1.5%、経済活動戻る」
日本経済新聞「路線価、2年連続上昇 23年分1.5%、経済活動戻る」

全国約32万地点の標準宅地は平均で前年比1.5%上昇した。上昇は2年連続。新型コロナウイルスの影響が弱まり、観光地や繁華街を中心に人出や経済活動が戻ったことで22年の上昇率を1ポイント上回った。
新型コロナの感染症法上の分類が5類に移行する前の評価だが、インバウンド(訪日外国人)客の増加も見込んで上昇地点が広がった。地方都市もにぎわいを取り戻しつつあり、コロナ禍からの回復傾向が鮮明になっている。

日本経済新聞「路線価、2年連続上昇 23年分1.5%、経済活動戻る」
23年路線価 全国平均2年連続で上昇 コロナ前への回復進む 銀座は38年連続最高
23年路線価 全国平均2年連続で上昇 コロナ前への回復進む 銀座は38年連続最高
路線価、上昇率が拡大 23年分1.5%
日本経済新聞「路線価、25都道府県で上昇 オフィス回帰がけん引」

東京都内ベース

日本経済新聞「都内路線価3.2%上昇 23年、3年ぶり下落地点ゼロ」

東京国税局が3日発表した東京都内の2023年1月1日時点の路線価は、標準宅地の平均で前年比3.2%上昇した。都内税務署管内ごとの最高路線価で前年比マイナスとなった地点はなく、上昇率も拡大した。新型コロナウイルス禍の影響が薄れ経済の回復傾向が鮮明となる一方、弱いオフィス需要が今後の懸念材料となっている。都内48の税務署管内ごとの最高路線価は47地点で上昇し、30地点だった前年から大幅に増加した。

日本経済新聞「都内路線価3.2%上昇 23年、3年ぶり下落地点ゼロ」
日本経済新聞「都内路線価3.2%上昇 23年、3年ぶり下落地点ゼロ」

そもそも路線価とは?

「路線価」とは、主要道路に面する土地の1平方メートル当たりの価格のことで、国税庁が1月1日を基準として毎年7月1日に発表します。

「路線価」の算出方法は、地価の指標の内の一つである公示地価の8割を目安とし、国税庁が売買例や不動産鑑定士の意見などを参考に算出します。
(2023年の調査地点は約32万カ所)

【路線価以外の地価の指標】
・国土交通省が毎年3月に公表する公示地価(1月1日時点)
・都道府県の調査をもとに同省が毎年9月にまとめる基準地価(7月1日時点)

そして、この「路線価」は主に「相続税」「贈与税」における「不動産評価額」の算定に活用されます。

相続税法では財産を「時価」で評価すると定めていますが、土地の時価は現金や上場株などと異なり把握が難しいため、国税庁は原則として路線価に基づく算定を認めています。

路線価を調べる方法

路線価は国税庁のHPにアクセスすれば簡単に閲覧できます。

【国税庁HP】
https://www.rosenka.nta.go.jp/

路線価と実勢価格の格差をどう考えるべきか?

実務的に売買をしているなかで「路線価を基準にするとこの物件は割高/割安なのでは?」という話をよく聞きます。

しかし、実際の売買現場において路線価は「1つの基準でしかない」のです。

不動産価格を決定する要素はとても複雑ですが、単純でもあります。

なぜなら、「この物件をいくらで購入する人がいるか?」という1点で全てが決まるためです。

路線価は「価格の6~7割程度」と言われていますが、物件によっては路線価格から割り戻した際に「路線価よりも安い」、逆に「路線価よりも割高」ということもよく発生します。

また、不動産価格では

  • 高台か低地か

  • 街並みや雰囲気

  • 人気学区かどうか?

  • 〇〇丁目は人気

  • この街区は特別

このような要素が重要です。

残念ながら路線価には上記の様な本当の意味での「プレミア」が反映されていません。

これから急激な「人口減少」「空き家問題」などが進行してく日本ではこの「プレミア」が不動産価格を決めていく要素になりつつあります。

このことから「路線価算定」だけで購入決断をするのは極めて危険でナンセンスであるというのが現場のプロである私の意見であります。

路線価はあくまでも一つの基準として考え、「路線価よりも安い場合」「注意して再分析する」
「路線価より高い場合」「その価格乖離を生むプレミアは何か?を分析する」ことが大切となります。

好調の路線価だが懸念事項も

今回の23年路線価を見ると総じて絶好調な数字に見て取れます。

しかし、「天井感」「頭打ち感」が徐々に出てきているのが現実です。

実際に、不動産売買における「在庫件数」はここ半年で急増してきています。

また、「好立地」「希少性」のある比較的高額の物件流通は好調ですが、一般的な物件流通は鈍化の傾向にあります。

その結果、最近では多くの分譲業者さんから「売れないし、問い合わせも無いので、赤字でも処分したい」という相談が増え始めてきました。

昨年までは、「買えば売れる」という相場でしたが、今年に入ってからは「良い物件は売れる」「大半は値引き交渉に応じて成約」という事案ばかりです。

カネ余りの時代の中で高額流通が好調な分、「表面価格上昇維持」ができているだけであり、「実需」という観点においては「難しい市場」=「天井感」に到達してきている様相です。

まとめ

  • 23年の路線価は全国平均2年連続上昇

  • 都内路線価は3.2%上昇で3年ぶり下落地点ゼロ

  • しかし、オフィス需要に先行き懸念

  • 路線価は「贈与税・相続税」根拠になる指標

  • 路線価格と実勢価格の乖離理由を読み取ることが大切

  • 実態の価格には天井感満載

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