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旅するミニ絵画、切手文化博物館

2005年頃からインターネットと電子メールが一般に普及して、近頃はすっかり影が薄くなってきた切手。今回は切手のお話。

切手文化博物館

有馬切手文化博物館に行ってきました。有馬温泉(神戸市北区)に所在する切手関係の専門博物館です。ちなみに館内は写真撮影禁止🈲、残念。

開館2005年(平成17年)
財団法人郵趣文化センターが運営する博物館として開館。同法人理事長で、世界的な切手収集家の金井宏之氏が館長を務めました。

金井宏之氏は切手に対してすごい熱心で、切手2枚を1億2000万円で購入した逸話があります。

1971年に金井は、1ペニーの赤い切手と2ペンスの青い切手を貼付してボルドーの宛先に郵送された「ボルドー・カバー」(ボルドー・レターとも)と呼ばれるカバー (Philatelic cover) を、1億2000万円で購入した。

wikipedia

収蔵品総数は約50万点(2007年時点)
約4000点が常設展示されています。

1871年に発行された日本最初の切手「竜文切手」
1894年に発行された日本最初の記念切手(明治天皇銀婚記念切手)なども。

1840年に世界最初の切手であるイギリスの「ペニー・ブラック」なども随時展示されています。

趣味週間見返り美人


昭和23年(1948年)11月29日発行。
菱川師宣の浮世絵「見返り美人」を図案にした切手。その美しさと異例の大きさとで大人気となった1枚。額面は5円で5枚が1シートになっており、普通切手よりも大きめのサイズです。

実物を初めて見ました。
意外なことにモノクロです。

東京国立博物館にある、菱川師宣の浮世絵は赤が鮮やかなカラーなので、てっきり切手もカラーかと思い込んでいました。

しかし、考えてみると、戦後間もない1948年に色鮮やかな印刷機など無かったのでしょう。

今のように一般の地方都市在住の人が簡単には旅を楽しむ時勢でも、博物館で浮世絵を楽しむこともなかったと思われます。

そんな中で、切手で手軽に文化に触れる機会が得られたとすれば、この趣味週間見返り美人切手も価値があったのだろうなと。

ちなみに「見返り美人 」
平成にカラーとわざわざモノクロで復刻再販されました。
オリジナルの人気にあやかったようですが、こちらは希少価値はあまりありません。

かの有名な切手レプリカを、切手趣味愛好家のみんなのお手元に、というコンセプトらしいです。

でもなんだろ、コレジャナイ感がすごくします。


奥の細道シリーズ小型シート20種

今回、個人的に1番よかったのはこれ。
1989年発行と今から25年前のもの。
特段のプレミア価格がついているわけではないのですが、気になるのはそのコレクション性。

松尾芭蕉の紀行本「おくのほそ道」著作(1689年)から300年を記念し、作品中の俳句のうち40句を取り上げ、旅程に沿って発行されたもの。

俳句40句が、右側に俳句 左側に挿絵。
これがまた実に美しい。

行春や 鳥啼魚の目は 泪


芭蕉の句をモチーフにした切手で、有名な書家や画家によって手がけられ、実に華やかな「書」を主題とする切手です。

閑さや 岩にしみ入る 蝉の声

展示方法も凝っていて、日本地図にそれぞれの切手の読まれた場所が配置され、さながら芭蕉の旅を擬似体験できます。

この原画展が、東京・押上にある郵政博物館で2016年1月から約2ヶ月間「日本の美・奥の細道切手原画展」が開催されました。
その時のレポートがこちら。

「月日は百代の過客にして行き交ふ年も又旅人也」「行く春や鳥啼魚の目は泪」「夏草や兵共が夢の跡」「閑さや岩にしみ入る蝉の声」

どの切手も素晴らしいコラボレーションでした。

切手収拾趣味というのは、なかなか未知の世界だったのですが、こうして博物館でまとめて見ると、これはなかなか奥深い。
そして、沼な世界が垣間見ることができました。

こちらの有馬温泉訪問は、この記事の補足となります。

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