『ヤスの本懐』

原宏一さんの作品。ヤッさんシリーズの5作目。

ヤッさんが東京からいなくなってしまい、タカオやミサキ、マリエは不思議に思う。
どうやら深刻な事情があるようで…。

加寿子ママがマリエに対して掛けた言葉が、とても印象に残っている。

マリエが決めたお店の三つの約束が、良いと感じた。

大人数で予約して当日キャンセルとなったら、店側はとても大変だということを知った。絶対にやらない。

タカオがヤッさんのように叱る場面が良かった。


印象に残っている文

もともと京都に鯖が根づいたのは江戸の昔、日本海の若狭湾から鯖が運ばれてきたことに端を発する。

アクアヴィットはジャガイモが原料のアルコール度四十%前後の強い酒で、現地ではビールをチェイサーにする。

「そりゃ人生、子どもを産むだけがすべてじゃないけど、世の中には、あたしみたく産みたくても産めない人たちがいるわけ。なのに、せっかく授かったあんたが産んであげなかったら、かけがえのない命にも、産めない人たちにも、申し訳ないでしょうが!」

「店ってものは店主と客の信頼関係で成り立ってるものなんだから、それを理解しない人間とは、きっぱり縁を切るべきなの」

一つ、神楽坂店と姉妹店も含めて、今後は店を広げすぎない。一つ、おいしい商品を開発して結果的に売れるのはいいけど、売るためだけの商品は開発しない。一つ、けっしてお客さんを裏切らない。

「何なの? 隠れ飲食チェーンって」中略「店の名前や店構えは個人オーナーの店みたいなのに、本当は飲食チェーン会社が経営している店のことです」

「いやしかし」「いやしかしじゃない! おれ、ヤッさんと出会った頃、しょっちゅう怒られてたじゃないすか。自分の頭で考えろ! って。自分の頭で考えたら、そんな忖度、あり得ないし、あんたはマジでヤッさんっすか! あんときのヤッさんは、どこ行っちゃったんすか!」


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