『てふてふ荘へようこそ』

乾ルカさんの作品。

格安のてふてふ荘に住む人々の物語。てふてふ荘にはある秘密が隠されていて、住人はその秘密とうまく付き合っていかなければならない。


個人的には、3号室の長久保啓介と石黒早智子の話が一番好きである。早智子の言葉によって、励まされた読者も多いと思う。

4号室の平原と薫の話もよかった。他の人が薫の部屋に住もうとしたとき、薫が冷たい態度を取った本当の理由を知って、感動した。

大家さんのためにビリヤードの練習をする場面が印象的だった。練習しても果たして成功するのかどうか、かなり難しい技だと感じた。


印象に残っている文

大体幽霊なんていうものは闇の中からおどろおどろしく登場するものだ。少しずつちらちらと現れては脅かすのが定石だ。地縛霊です、などと語尾にハートマークをつける勢いで自己紹介するものでは決してないのだ。

『※部屋には幽霊がいます(実害はほぼありませんので、ご安心ください』

「でもなあ、人間ってのは上手いことできてるもんだよ。自分の人生を振り返ってみたらなあ、おっちゃん楽しいことしか覚えてないよ。一つきりをしっかり覚えておけば、あとの九十九もそれなりの思い出に変わっているんだよう」

「本気でやってる努力なら、馬鹿馬鹿しいなんてことは絶対ないわ」


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