『汚れた手をそこで拭かない』

芦沢央さんの作品。

「ただ、運が悪かっただけ」「埋め合わせ」「忘却」「お蔵入り」「ミモザ」の5つの話が収録されている。


「ただ、運が悪かっただけ」の真相を知って、普段の行いが悪い方向に出たのではないかと感じた。

「埋め合わせ」では、味方になってくれるのかと思いきや、裏切られた理由になるほどと感じた。

「お蔵入り」が一番印象に残っている。


印象に残っている文

非常事態にこそ本性が出る、という言葉があるけれど、やはり非常事態に出るのは非常事態の感情であって、それがその人の本質や本音だと考えるのは早計だ。

「長く教師をつづけるこつはねあ、仕事が途中だろうが何だろうが、時間になったら無理やり帰っちゃうことなのよ」

ファンの誰もが、その人の活躍を喜び、真っ直ぐに応援するとは限らないのだ。たとえば、相手が成功するほどに自分と距離ができたと感じて悲しくなる人もいれば、あえて人前ではその人の評価を下げるようなことを言う人もいる。いわゆる、親しみの卑下というやつだ。自分は、みんなが知らないような姿を知っている。だから、他のみんながしているようにただ褒め称えるだけではなくて、こき下ろすこともできるーーそんな、ある意味でのマウンティング。



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