『いま、会いにゆきます』

市川拓司さんの作品。


発作を起こす病気を抱えている巧と一人息子の佑司。

雨の日の倉庫で今は亡き母親である澪と会う。しかし、澪は過去の記憶を失っていた。


アーカイブ星という考えがとても素敵だなと思った。

最後の澪の種明かしは驚きとともに、この二人は何度生まれ変わっても結ばれる運命なのだと感じた。


印象に残っている文

所長の代わりに奥の机に年老いたピレネー犬が座っていたとしても、ぼくは気付かないかもしれない。

「忘れるってことは悲しいことだね。私もほんとにたくさんのことを忘れてしまった。記憶とは、もう一度その瞬間を生きることだ。頭の中でね」

ノンブル先生

この年頃のぼくらは、自分が性的に成熟して、子孫を残すためのパートナーを探しているんだというメッセージを、化学物質に乗せてどんどんと自分のまわりに振りまいていた。受け取った人間は、本人が自覚するしないにかかわらず、それに応答してまた化学物質を放出する。それは無意識下で交わされる恋の伝言だった。

「おはよう」とか「おやすみ」とか「おいしいね」とか「大丈夫?」とか「ちゃんと眠れた?」とか「こっちに来て」とか、そんな何気ない言葉全てに愛が宿っている。それが夫婦なんだと、ぼくは思った。

でも、ほんとに可愛かった。それが子供の不思議なところだ。欠点こそが魅力となる逆転の魔法を使う。それが親だけに有効な魔法だったのだとしても。

「それに、あなたのいない人生なんて考えられない。あなたがいて、初めて私は自分の人生を生きたって、そう思えるようになるの」



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