『サイレントステップ』

本城雅人さんの作品。レース中に落馬で父を亡くした息子の和輝。父は日本一の騎手である平賀のセカンドジョッキーを務めていた。

和輝は平賀と同じ厩舎に所属し、父の死の真相を探る。

馬の調教の方法やレース中の小競り合いなど、競馬に関する知識が豊富に書かれていて勉強になった。セカンドジョッキーという役割があることを初めて知り、良い馬が回ってこない中で他の馬の様子を見ながら勝利をお膳立てするというのが大変そうだと感じた。

騎手の朝はとても早いので、夜型の人は向いていないと思った。


印象に残っている文

新人騎手はデビューしてから三年間は勝ち星で区別されて、他の騎手より一〜三キロ軽い斤量で乗れる。だが、減量の特典がなくなる四年目になると途端に騎乗回数が減る。

厩舎に所属している騎手には、調教師は月給を払わなくてはならない。だからある程度、年数を重ねた騎手はフリーになって、他の厩舎の馬にも乗りながら、自分がメインとしている厩舎の調教を手伝う。

競馬の調教は、鍛えると同時に、いかに馬の気を損なわせないかが大事だ。負けた馬に劣等感を持たせないよう、並ばせてゴールさせた方が、二頭とも気持ちよく本番のレースに臨むことができる。

騎手は時計など持っていないから、すべて体で覚えた感覚が頼りになる。指示より時計二つ、つまり二秒も前後するようでは馬乗りとして失格と言われる。

「競馬というのは人間によって作られたスポーツなんです。だから人の気持ちがレースの結果を左右します。そのことを予想屋はちゃんと分かっているのか。人を取材していることを日々の紙面の中で見せることができなければ、ただいい加減なことを言って読者に金を使わせる詐欺師です」

競馬界には定年制度があり、調教師は七十歳、厩務員は六十五歳でやめなくてはならない。

「バラッドというのは武勇伝とか社会風刺といったものを、メロディーは関係なしにひたすら語るわけです。ただし約束事があって、バラッドは最後は必ず破局を迎えなきゃいけないんです。」

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