『口福のレシピ』

原田ひ香さんの作品。

老舗の料理学校を実家に持つ留季子と、名家の女中として働くしずえ。2人の物語が交互に語られていき、やがてつながる。


留季子の料理の献立を考えたくない人向けのアプリの話が面白かった。

しずえの孫たちがしずえの店を訪れていたというのがとても良かった。

理事の坂崎さんはとてもいい人だと感じた。

フォアグラのTKGを食べてみたいと思った。


印象に残っている文

働く女の料理というのはむずかしい。その日食べたいものと、自分の身体の状態をいつも秤にかけている。疲れていたり、残業帰りで時間がなかったりしたら、冷蔵庫に買い置き食材が用意してあってもすべてがご破算になってしまう。

「簡単に言わないでよ。それがつらいんだから。料理嫌いは、残り物でちゃちゃっと作るのってハードルが高いの。そんな才能は遥か遠く山のかなたにー」

精一杯、荒々しく画面を閉じた。昔の電話はいいな、とこういう時は思う。がちゃん、と切れるからだ。今はホームボタンを強く押すくらいが関の山だ。

「ふふふ。らっきょうの処理の仕方には性格が出るんですよ。坂崎さんのむき方は丁寧です。だけど、薄皮と実の部分との区別がつかなくて、迷った時は、ええいままよ、って感じでがっつり剥がしちゃうでしょう。意外に大胆に」

女は歳を取ったら、髪と肌さえきれいにしていれば十は若く見える。ミニスカートをはいたり、高い物を着たりしなくても十分だ、と思う。

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