『ガラスの殺意』

秋吉理香子さんの作品。

麻由子は高校生のときに通り魔に両親を殺された。通り魔から逃げる際に、車で轢かれたために記憶障害になってしまった。その後、リハビリなどをきっかけに、麻由子を轢いた運転手の光治と結婚する。

ある日、麻由子は例の通り魔を殺した罪で逮捕されてしまう。


映画の「メメント」を観ているようであった。麻由子は本当に短時間で記憶を失ってしまうので、誤った認識がどんどん刷り込まれていくのが怖いと感じた。

もし記憶障害の人が殺人をしてしまったら、取り調べなどはかなり難しいだろうと思った。

光治のことを完全に疑っていた。めちゃめちゃ良い夫であった。こんなに良い人が死んでしまうというのは、世の中は何て不条理なのかと感じた。

認知症の母親を介護する優香がとても大変そうだと感じた。介護の現実というものを見せつけられた気がする。


印象に残っている文

「記憶の過程には、覚える・貯える・思い出すという三段階があり、この障害があると互いの回路やプロセスがうまく働きません。」

母が健康であれば愛し、健康でなくなったら邪魔に扱うのか。

介護とは、見たくない親の姿を見せつけられることだ。

不受理申出とは、もし相手が離婚届を出しても、自分には離婚の意思がないから受理しないでほしい、とあらかじめ役所に伝えておくものである。

「我が子の為なら、死だって受け入れられるし、何にだって立ち向かっていける。親っていうのは、ものすごく強くて、特殊な生き物なんです。どんなことも厭わないし、見返りもいらない。ただ我が子が笑ってくれるだけで、苦労なんて吹き飛んじゃうんです。だから親なんてね、子供が幸せでいてくれさえすれば、それ以上の幸せなんてないんですよ。」

「色がついていれば、ガラスだって見ることができる。あなたが、わたしの記憶を彩ってきてくれた。あなたを通してこそ、わたしは今日までのことを実感できるのよ」

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