『代理母、はじめました』

垣谷美雨さんの作品。

義父に騙されて代理出産をした女子高生のユキが、代理母を斡旋するビジネスを立ち上げる物語。


ミチオとユキの名前がカタカナであることは、あまり他の人から大事に思われていないことを象徴しているのではないかと感じた。

と思ったら、その後なぜカタカナなのか理由が書かれていた。

下層階の空いているマンションというのが、とても興味深いと感じた。

独身女性が代理母を頼む理由について、納得した。

印象に残っている文

中国では子供がいないと老人ホームにも入れない。ホームでの治療に許可を出し、支払いを保証するのが子供だからだ。霊園業者にしても、子供のいない人間には墓地を売ってくれない。将来の維持費を負担する人間がいないことを懸念してのことだ。

ああ、もしも、もしも、もしも……。この国は、考えると虚しくなる「もしも」がいっぱいだ。

「子供を持つ資格のある人間は、この世の中にそう多くはないと俺は思う」と言いながらミチオはこちらに向き直った。「経済的余裕があって、なおかつ子供好きじゃないとダメだ」

その自主規制とやらが作られたのは一九八三年で、他人の卵子や子宮を使って出産するのを禁じたのだ。

卵子採取をするための排卵誘発剤は刺激が強く、副作用がある。卵巣が腫れたり、腹痛、吐き気、頭痛、めまいなどがあることもあり、悪化すると血液が濃縮して腹水が溜まって血栓ができやすくなる。その結果、脳梗塞で最悪の場合死んでしまったり、後遺症が残ることもあるのだ。

中国には白い肌を好む文化がある。陽に灼けていない肌は成功の象徴だそうだ。

「ジーサンは代理出産がいいことだと思ってんの?」「いい質問だね。僕はね、いいとか悪いとか判断すべきじゃないと思ってる。ただね、法律で厳しく取り締まるのは反対だ。闇でやろうとする人間が出てくるに決まっているからね。そんなことよりも、少しでもよりよい医療や制度を提供するのが本当だと思う」

美しい夜空の色を、私はそっと記憶の中にしまった。いつでも引き出せるように目次をつけて。

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