『眠れる美女』

秋吉理香子さんの作品。『ジゼル』の続編である。

次回の演目が「眠れる森の美女」に決まり、脚本家とプリマに世界でも有名な人物を割り当てることができたバレエ団。本番に向けて練習を重ねていくが、オーロラ姫の代役2人が亡くなるという事件が発生する。


ユリカの言葉が印象に残っている。観客から簡単そうに踊っているように見えるまで技術を高めるというのが、すごいと感じた。

野崎さんは嫌な人物かと思ったら、バレエ団が利益を得るために裏でさまざまな調整を行っていて、イメージががらりと変わった。

達弘がパーティーで機転を利かせた場面は、読んでいて心が苦しくなった。

2人が亡くなってしまった理由がとても悲しかった。


印象に残っている文

きっかけがなければ、一生観ないまま終わる人もいるだろう。つまり、バレエに興味がある人は何度でも公演に足を運ぶが、そうでない人は一度も運ばないという二極化した状態だといえる。

フィッシュダイブとはまさに魚が海に飛び込むごとく、バレリーナが男性パートナーの腕に飛び込むというスタイルのリフトだ。

「演じるんじゃない。なりきるのでもない。なるの! その役と一体化するの。そのための一歩が、努力のあとが一切見えないくらいになることなの。汗と涙のにじんだテクニックなんて、見苦しいだけ!」

四人の王子から順番に求婚される場面では、オーロラ姫はずっとこのアチチュード・バランスを保たなければならない。つまり何分間も、全身を片足のつま先だけで支え続けるということだ。

何年キャリアがあっても、毎日必ず何か気づきがあり、成長の余地がある。バレエは基礎が全てだが、一つ一つを完璧にこなすことは至難の業だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?