顧客のインサイト把握手段におけるB2BマーケターのB2Cマーケターとの違い

広告代理店側から企業のB2Bマーケターをサポートする中で、B2Cマーケターとの違いの中でも顧客のインサイトを把握する手段の違いは大きいと感じる。

B2Cの顧客インサイト把握手段の例

B2Cマーケターが顧客インサイトを把握する手段は幾つかある。

- 外部調査会社のアンケートモニター
- 自社商品の会員組織や直接コンタクトの取れる購入者
- (店舗がある場合)店舗での観察や店員からの情報
- 自分自身・家族・広告クリエイター等が顧客と近い場合は自分自身の経験

特にマス向けの商品であれば、広告クリエイターの感性がターゲットインサイトにマッチしていると、素晴らしいコピーや映像・グラフィックが出来上がる場合があるし、外部調査会社のアンケートでもそこそこ信頼できるサンプルサイズが確保できる。

ニッチな商品であったとしても、イベント会場・ロケテスト・会員組織など顧客を直接目にする機会はそこそこあり、ちょっと勇気を持って声をかければ声も拾えるし短いアンケートならイベントでも回収できる。

B2Bの顧客インサイトの把握手段の例

一方で、B2Bマーケターの場合、マーケター自身が顧客に直接触れる機会が少ない

- 展示会・セミナー等の来場者
- 営業が接触している商談現場

セミナー来場者とは直接コンタクトできるものの、自社の商材がセミナーに適していないものであれば人は集まらないし、セミナーに集まる人の質が良いのかというと何回も行って何百人と集まった中で、キーパーソンと言える人は数名で、殆どが少し暇な情報収集目的の人だったり競合や販売パートナーが潜り込んで勉強しているだけだったりする。

商談現場の方はというと、営業の質問力が高くないと顧客インサイトを発掘はできないし、マーケターを同行させてくれる意識の高い営業も少ない。そして多くの企業は直接営業だけでなく販売会社にフロントを預けているので情報を提供して貰うことすら難しい。

外部調査会社のアンケートモニターも使えるのだが、なかなか狙ったレベルの人は集まらないというのが実感だ。

ではどうしているのかというと、勉強熱心な商品企画(プロデューサー的な人)が周辺情報や個人的なネットワークを生かして未来洞察をしていて、その人がエイヤで描いたシナリオを信じて、セミナー・ホワイトペーパー・記事コンテンツ等を作っているのが現実だ。

マーケティング部・販売促進部・プロモーション部などに属する人は徐々にシナリオ作りを事業部側に任せるようになり、シナリオが決まった後の工程を担当するという役割分担の体制になっていく。

B2Bマーケターが顧客インサイト発掘するには(心理的ハードルが強くても)営業連携しかない

商品企画側で優秀な人が居ないとどうなるかというと、顧客インサイトが見えない中で活動することになり何とも手応えがない。外部に便利なコンサルタントが居ないかと相談しても、ツールの使い方のコンサルタントは居るが、自社商品に最適なシナリオを設計してくれる人は見つからない。見つかったとしても競合他社のサポート経験があってたまたま詳しい人が居るというケースで、古い情報しか持っていない(最新の情報を持っていたらNDA違反になるのが普通だろう)。

B2Cのように自分自身がターゲットでもなければ、外部のクリエイターがインサイトを代弁してくれるわけでもないので、マーケター自身がなんとか情報をかき集める必要がある。組織の力関係の中で営業や販売代理店に協力して貰うことはとても難しいことではあるものの、やはり営業・販売代理店と関係構築ができないと顧客インサイト発掘や有効なシナリオ作りには至らない。

B2Bマーケターに向いているのかどうかの重要な視点の一つとして、B2Cマーケター以上に組織同士での利害調整を交渉していくコミュニケーション能力と意志力があると感じる。