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「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」“ジャケ買い”が大当たり!かわいいダークヒーローのファンタジー。

どうも、安部スナヲです。

「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」観てきました。

チョン・ジョンソ扮する主人公はアジア系の20歳くらいの女の子。

カノジョは12年ものあいだ、精神病院で隔離されて過ごしているらしい。

出典:映画.com

〈その日〉も、だだっ広く寒々しい独房に閉じ込められたカノジョのもとを、看護師が訪れる。

口汚く罵りながら乱暴をはたらく様子から、この看護師が日頃カノジョを虐待していることは明らかだ。

が、今日のカノジョは反撃に出る。

カノジョの憤りがピークに達したことを機に、看護師は爪切りニッパーで自らを滅多刺しにしていた。

どういうわけか、カノジョには相手を操る不思議な〈チカラ〉が突然宿ったらしい。

そのチカラにまかせて警備員をも撃破したカノジョは、病院から脱走する。

見上げた空には不気味に赤い月が浮かんでいた…

飢えた猛獣と化したカノジョは食べ物を求めてニューオリンズの街を徘徊し、色んな人たちにカラみ倒す。

出典:映画.com

とにかく危なっかしい。

とあるレストランにて、因縁をふっかけられて取っ組み合いの喧嘩をしてるボニー・ベル(ケイト・ハドソン)というお色気マッチョな女を助けた?ことから2人は親密になる。

ボニー・ベルはストリップクラブのポールダンサーをしながらギリギリ生活をしているシングルマザー。

出典:映画.com

カノジョのチカラを知ったボニーは浅知恵をはたらかせ、チカラが齎す不可抗力を濫用してストリップクラブの客たちからチップを巻き上げたり、ATM利用者にキャッシュを引き出させたりして、さながら濡れ手に泡で、はした金を貪る。

やがて先の精神病院脱走に関連する傷害事件とあわせて、警察による捜査の手が伸びる。

カノジョの名前はモナ・リザ・リー。

北朝鮮生まれで、10歳からアメリカに住んでる。

どうやら政治亡命らしいが、そのあたりの詳細は明かされない。

モナ・リザの運命や如何に…


アナ・リリ・アミリプールという監督を知らなかったし、この映画の前情報は皆無だった。

まずポスターに惹かれた。

出典:映画.com

濃紺とピンクのグラデーションをキーカラーに、ゾンビのように佇む少女やネオンサイを模したタイポグラフィ。

このポップだけど毒々しくもあるビジュアルセンスに期待が膨らみ、これは絶対観に行かねばと思った。つまり〈ジャケ買い〉に近い。

その後にチェックした予告編で、精神病院から脱走した少女が街中で色々やらかすハナシだと知り、なるほど、それなら尚更否はないと思った(“次世代のタランティーノ”という触れ込みフレーズは、何だかマユツバ臭ぇなと思ってしまったが…)。

やはり、ビジュアルが最高にキマってる。

例えばハナシがてんでつまらなかったとしても、これなら映像だけで106分楽しむ自信がある(実際、ハナシも超面白い)。

抜きん出た配色センスもさることながら、印象的なのはワイドなフレーミングをいかした画作り。

パンフ情報によると、ほとんどのシーンの撮影に15㎜や10㎜といった超広角レンズが使われているらしく、引きアングルでの街や建物の等身大感が特徴的だった。

さらにそういうレンズの特性上、画の端が魚眼のように歪むのだが、そのデフォルメ効果がモナ・リザの〈歪んだ目線で見る歪んだ世界〉のようなものを思わせた。

モナ・リザが超能力を使おうとする時の怒りを溜め込むような表情と、操られる相手の怯えた表情が交互にアップになる見せ方もうまい。

あの瞬間、まるで彼女が地球の引力を一点に集中させているような印象を受ける。

モナ・リザが徐々に人に触れ、最後は自由を得るというストーリーラインは、奇抜なキャラクター像や状況設定をよそに、シンプルに赤ん坊の成長過程を見ているようだった。

ほとんど言葉を発せず、空腹や無垢な好奇心の赴くままに行動する彼女の振る舞いは、赤ん坊そのものだ。

出典:映画.com

そんなモナ・リザの無垢さに付け込み、超能力を悪用して荒稼ぎをするボニー・ベルは最低なクズにちがいないが、そこのところも決して一筋縄では描かれていない。

蓮っ葉なアバズレという表層の下に、これまで背負ってきた挫折や苦労や息子・チャーリーへの頼もしい母性が垣間見える。

劇中、彼女がチャーリーを産んだことによってどのように人生設計が変わったのかを示す描写はないが、クライマックスの逃亡劇で、チャーリーが電話で「母さんは好きに生きて」みたいなことを言ってるところから、きっと何らかの夢をあきらめざるを得なかったのだろうと想像する。

チャーリーもまた、蓮っ葉な母を嫌って反抗するだけのグレ小僧なのかと思いきや、とても賢くて、その辺の大人よりずっと秩序意識の高いところが面白い。

だいたいボニー・ベルという女は、生きていくことで精一杯な事情を斟酌したとて非常識が過ぎる。

出典:映画.com

この母を見ていながら、こんなにちゃんとした子が育つのだから、反面教師というのも侮ったもんではない。

モナ・リザはチャーリーと心を通わせたことで、それこそ氷が溶けたように生気が芽生える。

顕著なのは、絵がうまいチャーリーが彼女の似顔絵を描いて見せたシーン。

あの時の天使みたいな笑顔を見て、何故彼女が〈モナ・リザ〉なのかがわかった。

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