ケツ爆弾上京物語

三重県の田舎で育った私なんですけども、大学卒業と同時に就職で上京することになりました。大学は家から通っていたので22年間地元で育った私が地元を離れるのは、とても辛かったです。離れる前に地元で思い出を作ろうと思い友達と山を登ることにしました。山から地元を一望できるので、最後にふさわしい行為ですね。

山登りは特に問題なく、登り終えてからは近くの温泉に入って最高の思い出になりました。そこから数日後お尻に何か違和感がありました。座るたびにとても痛いのです。座ると痛くなることは今までに何度も経験していたのでそこまで深く考えていませんでした。

いつもよりお尻の痛みが治まりが遅く、気になったのでお風呂に入っている時にふとお尻をさわってみました。すると、何かデキモノがあるのがわかりました。触っているうちにそのデキモノに違和感を感じました。デキモノって山みたいな形をしていると思うのですが、それはピロピロっと動くんです。何に例えたら良いのかしばらく考えてみたのですが、もうピロピロ動くデキモノとしか言いようがないのです。ピロピロ動くそれは指でつまめました。強めにつまんでも痛くないのです。ならちぎってみるか?という考えに至り、勢いよく引きちぎる覚悟を決めました。すね毛に貼り付けたガムテームと同じです。勢いが大事なのです。

ブチッと音がした気がしました。思ったよりも痛くなく、ホッとした私は指先にあるそれを見てみることにしました。指を開けた瞬間、驚きのあまり床に投げ捨てました。2、3ミリの丸い物体に左右から何本か触手が生えていたのです。もう何かの虫であることは一目瞭然です。ここで大事なのは何の虫かです。10数年前に流行ったおしりかじり虫〜おしりかじり虫〜ってやつなのかとも考えました。お風呂の中で裸のままその虫が何かスマホで検索している頭の中でずっとおしりかじり虫〜おしりかじり虫〜と鳴り続けていました。あのポテチみたいな頭をしたよくわからない虫が頭の中であざ笑いながら歌っているのです。

動揺していたので当時どんな検索ワードで見つけ出したのか覚えていませんが、一つの虫にたどり着きました。見た目や噛み付いていたこと山に行った事などからマダニであると判断しました。その虫の情報を読むと、”感染症などを引き起こす可能性があるので、絶対に自分でちぎらないでください”と書いてあるのです。

とりあえずちぎったマダニを拾い上げて、もう一度お尻に噛み付かせるかってところまで考えました。最悪の場合死に至るとまで書かれているのを見るとかなり不安になりました。しかし、上京まであと数日だったのでそれが原因で上京できないことになると嫌だなと思い放置することにしました。

お尻に爆弾のような傷を残した私は上京してからもお尻をずっと気にしていました。毎日触って確認しました。腫れがひどくなってないな、良しと確認する毎日でした。病院に行かなかったのは2つ理由があります。一つは仕事の忙しさ。ADという仕事上休みがあまり取れないのです。そんな貴重な休みを病院に行く気力がありませんでした。もう一つは東京でお尻で見せれますかという事です。山でマダニにかまれた田舎から来た大人なんて東京で笑いものです。東京のおしゃれな病院でおしゃれなお医者さん、綺麗な看護師さんの前で汚いおしりを見せるんです。そんな恥ずかしい事するぐらいなら死んだ方がマシだ!と思いいきませんでした。

今こうしてこの記事を書いているということは無事生きているわけですが、東京でお尻を見せるという経験をした世界線での私はもっと素晴らしい日々を過ごしていて、見せなかった今の自分は実はマダニによって死んでいるのではないかと思うことがあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?