【学会誌】無機-有機ハイブリット膜の電析

こんにちは。
『表面技術』2023年12月号を読んでいます。
読んだ記事について、気になった部分やポイントをメモしておきたいと思います。

今回読んだ記事のタイトルは「無機/有機ハイブリット薄膜の自己組織的電解析出」で著者は山形大学の中村さんです。

内容

無機/有機ハイブリット薄膜の電析メカニズムに関する調査・考察の手法について、ZnO+色素の薄膜を例に解説されています。

紹介されているZnO(酸化亜鉛)は色素増感太陽電池の光電極として利用することができる材料のようです。

理論的な仮説を元に電気化学分析を用いて、液中での無機と有機の析出反応という複雑な現象の説明を試みています。

著者曰く、酸化還元反応論、反応速度論などの現行の物理学を積み上げることで、複雑な現象も理解できることを示しているそうです。

この研究の究極的な目的は、複合化メカニズムの完全理解による、所望の特性を持つ薄膜を自由に設計する技術を確立することにあるようです。

ポイント・メモ

  • 溶液に溶解した原料から薄膜を得る液相法はコストの低減や大面積化に優位だが、析出物が強い化学相互作用に曝されるため、目的とする薄膜材料が形成されるような条件を見出すことが重要になる(条件を見出すためのハードルが高い)

  • 液相で製膜したCdTe薄膜を用いた太陽電池は、PVDで製膜したCdTeと同等以上の変換効率を達成するものもある

  • 構造制御剤:析出物表面に吸着し、結晶成長に異方性を生じたり、析出物の形態yあ結晶配向を変化させる

    • 添加剤の種類によって、ZnOはナノロッドになったり、ナノシート状になったりする

  • 全ての水溶性色素がZnOと複合化するわけではない。カルボキシ基、スルホン基、リン酸基などを構造に含み、若干の水溶性がある色素がZnOの形成に伴って析出複合化する

  • ハイブリットの形成は、色素分子とZnOの間に適切な化学相互作用があるとのみ起こる選択律に基づいている

  • Eosin Yを添加すると(100)面や(110)面に優先的に吸着し、c軸方向に成長が優先されたナノワイヤー状のZnOになる

  • Coumarin343やクエン酸を添加すると、(002)面に優先吸着してa,b軸方向に成長した板状のZnOになる

  • 構造制御剤が規則的に吸着することは、自己組織化をもたらす重要因子

  • 色素の拡散速度や吸脱着反応の速度に律速される2つの導入形態があり、それらが色素吸着の化学安定性によって支配されている

  • 色素添加時のORR触媒気候および、色素固有の速度増強因子βやターンオーバー数γを実験的に求める方法が確立されれば、これまで実際に実験するまで分からなかった複合膜の析出速度を定量的に予測することが可能になる。

今日は以上です。

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