見出し画像

活用する機会がないことを願いながら、非常時に備える

子どものころ、JALの訓練所を見学させてもらったことがある。

パイロットが訓練するフライトシミュレーターでコクピットに座ったのだ。
また、機体と機内を再現してある訓練施設では、サービスだけでなく緊急時の対応や緊急脱出の訓練ができるようになっている。脱出用のスライドは海上着水時にはボートになり、水上訓練ができるプールもある。

子どものころは、アメリカにしばらく住んでいたこともあり、飛行機に乗るというのは危険への備えが大切なのだなと漠然と思っていただけだった。
大人になってから世界を旅すると、この安全感覚の重要性をより強く感じるようになった。とくに大きな空港で行き交う飛行機を見ながら、これほど短時間で離発着が頻繁な中、よくオペレーションができたものだといつも思う。

非常時に備えるということは、その知識や訓練を活用する機会がないようにと願うこと。
10年でも20年でも10000回のフライトで何も起きなかったとしても、たった一度の非常時に明暗を分けるのが知識と訓練なのだろう。

年明け早々に非常にショッキングな事故が起きてしまったが、乗務員の素晴らしい仕事は当然脚光を浴びると思うのだが、同時に多くの関係者が事故対応に奔走したことだろう。
そんなことを想像しながら、航空関係者の日ごろの仕事と訓練とマニュアルに感謝し、安全が当然ではないということを改めて考えたいと思う。

アフリカで仕事をしていると、安全への備えに慎重なひとよりも、危険を想定すること自体を軽視したり嘲笑したりするひとが圧倒的に多い。(もちろん、日本にもどこの国にもそんなひとは一定数いるとは思うが)
整備不良の車に過積載の積み荷で100キロ超のスピードを出すバスなどはその典型だ。

危険について話すたびに笑い飛ばされることも少なくないが、たとえ100回笑われたとしても、わたしはめげずに危険に対する備えをしたいと思う。

あとで、何もなかったと笑い話にできるのがいちばんなのだ。

エッセイ100本プロジェクト(2023年9月start)
【8/100本】


言葉と文章が心に響いたら、サポートいただけるとうれしいです。