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【CALメンバー紹介】作家・優月朔風の描くAI社会の光と闇

♦️「再構築」と加速主義の終焉♦️


令和時代の新しい純文学
を発信する実力派作家集団CAL(Classic Anthology Library)は2022年に結成され、皆様の熱い御支援のおかげで2024年で2周年を迎えました。
この度、2024年2月12日に第3回配本となる総勢18名の作家陣営によるアンソロジー小説『マテリアル・ゴシック』をデザインエッグ社より刊行いたしました。
今回は出版記念といたしまして、CALメンバーで作家の優月朔風様について御紹介させていただきます。
優月様は日頃は公認会計士として忙しい日々を送られる中、連載小説「wink killer もし、ウィンクで人を殺せたら――」で高い人気を集める作家でもあります。
『マテリアル・ゴシック』では、AIとの共生で生じる人間ドラマについて非常にハイレベルな物語「再構築」を寄せて下さいました。
この作品について、CAL副代表でYScompany所属の女優・人形作家の由良瓏砂様は御自身のブログ「Rosa†Antica」で以下のように評価して下さっています。

「優れた構成力、ストーリーもよく出来ている。ショート・ショートのお手本のような作品だ。以前ならSF、と呼ばれたであろう。だが今やこの作品に描かれているのは、ほんの数年先には現実化しているだろう光景なのだ。」

(C)Rosa†Antica http://rosaantica.com/

由良様の高い御評価からも察せられるように、「再構築」には「愛をダウンロードする」、「記憶を消去する」、「現実の再構築」といったMR、VRの問題系において議論されたトピックが風刺的に描かれています。
この物語の主人公の意識は一見、非常に幸せな世界に浸っているように見えますが、著者はその姿がどこか本来の人間的な生活世界から逸脱しているように距離を置いて描いています。
この微妙な距離感は、かつてウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』(1984年)で描いた電脳世界への没入感とも異なっています。
この時代にはまだ、サイバースペースが空想的なユートピアの変種として肯定的に受け止められており、それは1999年にラナ&リリー・ウォシャウスキー姉妹がギブスンにインスパイアされて製作した映画『マトリックス』の時代にも共有されていました。
このようなSF的な想像力は、ジャン・ボードリヤールの消費社会論とも合流してニック・ランドに始まる「右派加速主義」を生み出すと同時に、それに対する批判意識(左派加速主義や、一連の「新しいマルクス」の読み直し)も呼び覚ましました。
優月様の「再構築」を、このようなテクノロジーの問題――あるいはプロメテウスの火という古典的テーマ――として捉えた時、そこであらためて浮かび上がってくるのは人間の情感性をも商品として消費していく現代の資本主義システムへの強い批判意識に他なりません。
いわば盲目的なプロメテアニズムに対する懐疑がこの物語の核にあり、それが本作の主人公の悲劇的な側面に繋がっているのだと。
筆者が編集長として『マテリアル・ゴシック』「総解説」に掲載させていただいたレビューは文字数の関係で短評となっておりましたが、このような文脈で受け止めていただくと、「再構築」のラディカルなメッセージ性がより深く伝わるのではないかと考えております。

優月朔風
作家・公認会計士
Classic Anthology Libraryメンバー
©YUDUKI Saku 2024

♦️ヴァンパイア企画にも参加決定♦️


そんな奥の深い作品を御寄稿してくださった優月様は、感謝すべきことにCAL第四回企画「ヴァンパイア」にも御参加していただけることになりました。
彼女の視点で描かれる吸血鬼小説がいったいどのようなテーマを投げかけるのか、今から楽しみな読者様も多いはず。

優月朔風様の「再構築」を含むアンソロジー小説『マテリアル・ゴシック』についての特集記事は、以下からもチェック可能です。

優月様の最新の御活動は彼女のXアカウントでも日々更新されていますので、ぜひともフォローと御支援をよろしくお願いいたします。
CALの最新情報はCAL公式アカウントでも随時発表していきますので、どうぞご期待下さい。

※本記事に掲載されている御写真は、御本人様の御許可を頂いた上で掲載させていただいております。©YUDUKI SAKU 2023


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