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【CALメンバー紹介】生と死を見つめる作家・物部木絹子の文学世界

♦️作家・詩人としての物部木絹子♦️


令和時代の新しい純文学
を発信する実力派作家集団CAL(Classic Anthology Library)は2022年に結成され、皆様の熱い御支援のおかげで来年でいよいよ2周年を迎えます。
この度、2024年2月12日に第3回配本となる総勢18名の作家陣営によるアンソロジー小説『マテリアル・ゴシック』をデザインエッグ社より刊行いたしました。
今回は出版記念といたしまして、CALメンバーで作家・詩人の物部木絹子様について御紹介させていただきます。
物部様は幼少期より読書に親しみ、特に一番のお気に入りはオスカー・ワイルドの『幸福な王子』だったそうです。
青春時代には太宰治の『人間失格』に出会い、本格的に文学への道を志すために四国大学文学部日本文学科に入学されました。
その後、御自身でも文筆活動を開始され、文芸社より『スートピア』を出版されました。

【Amazon内容紹介】より
俺、山田優太朗は自殺を図ったはずだった。しかし、目覚めたところは「スートピア」、自殺者のみが集う死後の世界。俺はそこでこの世界の目的と、生きることを放棄した者たちの壮絶な過去と想いを知ることになる――。自殺者たちが集う世界で絡み合う複雑な関係。「満足して死ぬ」とは? 魂の「消滅」とは? そして「生きる」とは? わたしたちの価値観を揺さぶる5つの中短編を収録。

Amazon書籍情報

その後、しろねこ社の一般公募に選出され、第一詩集『空中傍観者』で詩人としてもデビューされました。
地元の徳島にある徳島現代詩協会では理事を担当されており、現代詩を多く楽しんでもらえるよう発信する活動もなさっています。
そしてこの度の御厚意により、2024年2月にデザインエッグ社から発売されたCAL主催の『マテリアル・ゴシック』に、シュールな転生譚「鏡に映るは」を御寄稿して下さいました。

♦️御寄稿作「鏡に映るは」の魅力♦️


物部木絹子様の「鏡に映るは」は、読者様だけでなくCALメンバーの作家様がたの間でも極めて評価の高い作品です。
筆者も編集作業で初めて読ませていただいた時、発想力の斬新さ、巧みな構成力、何よりも先読みできないスピード感のある文体に大変驚かされました。
この物語は仏教的な「輪廻転生」をテーマにしており、同じ一つの人格を持った霊魂が捉える視点を通して、生前の家族の情景を描いています。
まず注目しなければならないのは、この物語の人称の問題です。
本作には「あなた」に呼びかける二人称が採用されています。
この場合、誰が「あなた」を見つめ、呼びかけているのかが読者にとって興味深い問題として浮上するでしょう。
輪廻のプロセスを上から俯瞰しているこの観察者とはいったい何者なのか、筆者はそのことを読みながらたえず考えておりました。
この点はもちろん、物部様の第一小説『スートピア』が死後の世界を扱った物語であるということとも関連してきます。
此岸ではなく、あえてこの世界の彼岸に人称を設定することで、私たちが暮らす日常世界の普段は見えてこない様々な問題点が浮き彫りになります。
物部様の描写は、そこにどこかユーモラスな視点を与えることで不思議な余韻を残す物語に仕上げられています。
おそらく私たち読者は、登場人物の人間ドラマを書きながら俯瞰している作家の視点と、物語の内部で人間たちを彼岸から俯瞰している超越的な存在の視点が一致する瞬間に、ある種の慄きさえ感じてしまうことでしょう。
このようなめくるめく一致が、物部様の「鏡に映るは」に驚異的な読後感と、ある種の戦慄をもたらしている理由の一端なのかもしれません。

知られるように、輪廻転生という観念は東洋と西洋でほぼ同時期に発生しました。
二十世紀を代表する南米の幻想作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスもまた、短篇「タデオ・イシドロ・クルスの生涯」や「神学者」などで、輪廻転生をテーマにした神秘的な物語を残しています。
輪廻というこの主題――同一の魂が、時代を越えて複数の身体を横断しながら生を繰り返す諸様相――は、どれほどテクノロジーが進化しても、人間の本質はけして変わらない、だからこそその本質を越えた何かを探し求めるというロマンティシズムの反映なのかもしれません。
物部木絹子様というこの一人の作家・詩人の視座を通して、私たちは古代から現代にまで連綿と続く人間の「生と死」を見つめることができるはずです。

物部木絹子
作家・詩人
Classic Anthology Libraryメンバー
©MONOBE Yuko 2023

♦コスプレイヤーとしても人気の物部木絹子


そんな素晴らしい文才を御持ちの物部様ですが、彼女はSNS上で高い知名度を誇る人気のコスプレイヤーでもあります。
こちらは『Axis Powers ヘタリア』に登場する「アリーチェ・ヴァルガス」(Alice・Vargas)というキャラクターで、物部様のファンの間でも人気を博していた一枚を、御本人様からの特別の御厚意によりお借りいたしました。
調べてみますと、イタリアという国家を女性として擬人化したキャラクターのようです。
ちなみに、御本人様にお聞きしますと、『文豪ストレイドッグス』に登場する「与謝野晶子」が一番御好きなんだとか。
ライトノベルや漫画・アニメ層はマーケットが非常に広いので、CALでもいつか面白い企画ができないか編集部で模索中です。

物部木絹子様の転生譚「鏡に映るは」を含むアンソロジー小説『マテリアル・ゴシック』についての特集記事は、以下からもチェック可能です。

物部様の最新の御活動は彼女のXアカウントでも日々更新されていますので、ぜひともフォローと御支援をよろしくお願いいたします。
CALの最新情報はCAL公式アカウントでも随時発表していきますので、どうぞご期待下さい。

※本記事に掲載されている御写真は、御本人様の御許可を頂いた上で掲載させていただいております。©MONOBE Yuko 2023

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