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2月の日記-じゃあな!おやすみ。

2.14
タブッキの「インド夜想曲」を読む。特別だと思った。一つの鉱山で一個だけ見つかった特別な鉱石みたいな、奇跡的な本だった。コエーリョのアルケミスト、サン=テグジュペリの星の王子さま、フィッツジェラルドのグレート・ギャッツビーみたいな。この本に今まで出会ってこなかったこと、まだ出会っていないこんなふうに特別な本がきっとたくさんあることが、わたしの現在の不幸であり未来への最大の幸福だと思う。

2.15
仕事でなかなか追い詰められていたが、追い詰められることがいつものことになりつつあり、「このくらいの追い詰められ方ならまあいけるっしょ」となってきたあたりに4年目を感じた。慣れというのは怖くも強いものであるな。洗濯物が高く積み上がっているけれど、なんだか洗う気分はない。

2.16
家をもっと「生活している事務所」くらいに捉えられたらいいのに、と思う。生活をしすぎない場所にしたい。それよりも、そこにいることでよりものづくりの緊張感が生まれるような場所。抜本的な改革が必要だな。出ているものを大幅に減らす必要がある。「そのための時間は?」痛い問いかけ。

2.17
Youtubeにある柴田聡子さんの鯖江周遊紀を何回も見ている。何が面白い、というより、元気をもらっている。会社でHDDが壊れてしまったのを先輩に相談したら「貸してもらえるよ」と言うのでなんで知ってるんですか?と聞いたら「だって俺のハードディスクもイカれてるもん」って振り返って言われて、なんか格好良くてメモした。

2.18
話した人がちょっとマイナーな曲を知っていて、サビ前のラップを歌ったら意気揚々とさびを歌ってくれた。この広がりのない楽しさ。

2.19
台所の排気口の下に椅子を持っていったタバコを吸いながらPC を打つのがデフォになりつつある。もるげんのめんだこピースラジオを、聴いていないけれど流している。なんか最初の一文がスパって決まっていれば、うまくいくんだけれど、そのスパッを自然に行うことが難しい。

2.20
ここのところ毎日小説を書いていて、自分の手がするする動くのが魔法とかSF チックなものではなくって、レモンサワーを寝る前に飲んでしまってトイレで絶対起きるよっていってわらってるみたいな話ばっかりで、なんだか自分の書き手としての呆気なさ?に笑っている。

2.21
会社の人たちとのむ。ちょっとありえないな、ってことがありその話で怒りながら盛り上がった。帰り道が一緒の上司と最後の分かれ道でもう一回その話で盛り上がって20分くらい立ち話になったところで雨が降ってきてしまって、上司は自転車を引いていたのでわたしが傘を差して上司のマンションまで送ることにした。上司もわたしも東京から異動できているから会社のそばに家がある。わたしはこの人のおかげで仕事に行けているんだよなあ、と酔った頭でこの一年半何回も思ったことをもう一度思った。あと半年後にはほぼ間違いなくいなくなってしまう。その時、この夜を思い出すのだろうか、とか思おうとして、あ、いや、そんな感傷的になる感じの人じゃないしな、と、「じゃあな!おやすみ。」と言ってマンションに消えていく上司に手を振りながら思った。

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