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2月の日記-幸せになろうとしなくてすむ

日々が常にわたしのわたしさを明かし続けている。そのことに、わたし以外の誰も気がつくはずはなく、そっと耳打ちしてくれることもない。わたしの日々はわたしのもので、それは確かに尊さを含んでいるけれど、日々はわたしのためにあるのではなく、ただ、そこにあるようにあるだけだ。言葉がいつも真ん中に辿りつけず、周縁を点々と跳ねてばかりいる。

2024の日記

0208
出張で一週間だけ一緒に仕事をしている人たちとご飯を食べる。なんだか、これから続く関係のことを考えなくていい空間が楽しかった、し、「もっと一緒にいれたらいいのに」と、多分それが叶わないと知っているからこそ思うことができた。金沢おでんに入っている具「くるまふ」を、すごい「知ってる?これ、くるまふって言うんだけど、めちゃくちゃ美味くてさ」とわけ知り顔で説明したら、全部話し終わった後に、「いやまあ昨日食べたんですけど」と言われて大爆笑してしまった。
みんな明日が早くって10時前に解散。

0209
日中、能登半島の奥地を回って被害の特に大きな場所で仕事をした。帰り道なんだか神経が落ちてしまってずっと音のないため息をついていた。けれどちゃんとこの目で見ることができて、時間をとって感じることができてよかったと思った。金沢へ帰ると出張一週間の一応最後の日ということで飲み会があった。同期と二軒目に行き、午前2時くらいに店を出て、どうしてもというのでコンビニによって、同期が買うアイスを同期と後輩と3人で選んだ。極寒の金沢でアイスを美味しそうに食べている彼女の横顔はなんかすごいハッピーエンドな感じがあった。ホテルに帰ったあとも少し浮かれていてBUMPのプラネタリウムを歌いながらシャワーを浴びる。

0210
新幹線のくる結構ぎりぎりまで仕事をして、夜に甲府へ帰った。荷物が多いのと乗り換えが多いのが流石に疲れてしまった。普段は移動時間って読書するからいいんだけどさ、多分出張で気分がハイになっていてさ、なかなか黙って長時間座っているのがしんどかった。
一人でぼうっともできないのでそのまま深夜までラジオをとった。能登半島で考えたこと、でもまだまとまっていないことをしゃべったら、相方はすごくフラットに聞いてくれた。考えが変な方向に、独りよがりのものになるとき、ちゃんとわたしを尊重しながらも、それでも同調しないでいてくれる冷静な友達がいることのありがたさ。なんだかすごい疲れていたようでシャワーも浴びずに気がついたら寝ていた。

0211
東京で主に3人の人と会い、その3人ともがちゃんと話すのは初めてって感じで、それで3人とも大好きになった。つまりすごい1日だった。
最初にあった人は言葉を書いている人で、三連休の中日で混みすぎている吉祥寺を歩きながらいろいろな話をした。途中行きたい道がわからなくなって曲がる通りにわたしが迷っていたら「あ、今ってずっと右折して街を歩くゲームをしているんですか?」と聞かれて、その声色がそれだったらそれで楽しい、って感じだったから、ああ、そういうことに付き合ってくれる人なんだ、ととても嬉しくなりながら、口先では「いや、そしたらずっと回っちゃうじゃないですか。」と笑いながら返した。言葉を書くことがひとりであること、いつも路頭に迷ってしまうことを正直に話した。真摯に聞いてくれて、言葉を考えながら紡いでくれる人だった。
2人目の人は絵を描いていて、いつか何か一緒に作りたいとずっと思っていた人だったから展示にいってみたら在廊していて嬉しくって、ほんですごいしゃべってくれる人でびっくりした。話を聞いているように見せかけて、目が綺麗な人だなあ、とかぼーっと思いながらいいタイミングでただ頷いているという時間があり(すみません)、その時に、その人の持っている対外的な光の強さと、作品の持つ静謐さがもたらす美しい距離に思いいたって、これってすごいことだと思った。うまく言葉にできない。また会う人だろうと思う。
3人目は一度会ったことがあるだけの人で、でも多分話が合うだろうと思って連絡したら会ってくれた。この人も、というか一人目の人も、この日会った人はみんな目がとても綺麗だった。目が綺麗ってなんだろう、まつ毛が上がってんのかな、いや、どうなんだろ。でも目が綺麗って第一印象で思う人のことは好きになるっていう自分のジンクスがあって、自分が好きな人の中には勿論まつ毛上げてない人もいるから、このよくわからない「目が綺麗だなあ」って感覚は信じてみてもいいのかもしれないな。わからんけど。話が合うというか、優しさの使い方がよくわかっていないところがすごく似ている気がして、まず人に話さないような感覚の話をしたら、何やらいろんな言葉を探している空白があったのちに、それしか言えないのが悔しいって顔で「え〜、わかる〜〜」といってくれた。せやんな〜、と相槌をうちながら井の頭公園の奥の方の川辺を二人で歩く。静かに泳ぐ鴨に目がけて「わかるよね〜」とその人は話しかけていた。駅のホームの蛍光灯の光が水面にぼわっと反射していて、綺麗すぎたので、あ、この光景忘れそう、って思った。そしたらここだけ覚えてた。

0212
今日も今日とて東京で2人の人と会った。一人目は短歌のWSで一緒だった人で、一緒に荻窪から吉祥寺までを歩いた。途中Titleに寄ったら買おうと思っていた本があったので買った。なんか、Titleで買おうと思っていた本を買っているのがちょっと勿体無いような気がした。Titleって、ザ・まだみぬ出会いの場所なのにね。
西荻窪のそれいゆに学生ぶりにいってめっちゃテンション上がった。生活どんな感じですか?と聞かれて、ちょっと考えてovercookみたいって答えた。飲食店の経営をするゲームで、お客さんのオーダーに合わせて料理を効率的に作りながら皿洗いや掃除をしつつ、限られた時間でお店を回転させるゲーム。なんかでも、冷静になってみて、めちゃ格好つけた答えしてダサすぎるな、と思った。overcookは理想の自分であり、「結果的にそうなっちゃってるように見える自分」だ。なんだろう、もっとこう、面白いこと起きないかな〜って散歩してる感じに近い。なんとなく何時にどこまで行かなきゃっていうのだけ決まっていて、その道中を歩いたりやすんだり、思った以上に迷ったり気がついたら先に来る予定だったところに先に訪れたりしている。無意識にできるだけ身を任せて散歩してる感じだ。何がovercookやねん。
夜はパートナーと会ってアジア料理を食べた。ああ、帰ってきた、とその時なんかしっかり思った。パートナーの幸せがとても強固であることがわたしにとって何よりの救いになっている。わたしはそのおかげで、幸せになろうとしなくてすむというか、頑張らずに、わたしの散歩を続けていられる。それが結果的にわたしが幸せという果実を食い尽くさずにずっと収穫していられる生活の形なんだと思う。

0213
甲府に戻って久しぶりの仕事、色々やんなきゃなことは溜まっているけれど全然体が動かなくって一日かけてならしたって感じ。そんなことしてる間に休日いろんな人に出会ってみえた光明みたいなものに身を任せたら短歌ができた。それもなんかめっちゃいいやつができた。
夜9時ごろもう無理だな〜全然できない、と思って家に帰る。部屋が諦めたくなるほど汚れていて、優先順位をつけずに目についたものから片付ける。誕生日の掌編の草稿を一個仕上げて、漫画を一話読んで、日記を書いている。

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