あの先生

朝いつも駅へ向かう歩道ですれ違う人を見て息が止まる。中学の時の担任の先生にそっくりだ。そっくりのレベルではない。本物かと思う。もし本物だったらどうしよう。1番に伝える言葉は有難うか、ごめんなさいか、どっちだろう。きっと、どっちも伝えられないんだろうな。だから今こうやって息が止まってるんだろうな。本当にお世話になった。周りの友達より目にかけて声もかけてくれた。当時のわたしは、嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちを両方持つ方法を知らず、そして、その時の有難さを知らず、ただ、突き放すこともできず、無視をした。見ないことを選んだ。

卒業しても先生からの声かけが止むことはなかった。毎年1回手紙が届く。今年も宜しくお願いしますの文字と共に、元気かどうかの質問と自分の近況が綴られている。その中には、君はすごいんだ、と、いつもわたしに言ってくれる言葉が書かれていた。中学の時から変わらないもの。それは大学1回生に届いたものが最後だった。最後までその手紙に返事をすることはなかった。

そうか。次会ったときはこう伝えよう。私25歳になったよ。わたしすごいでしょ?と。朝すれ違うあの人とすれ違う時に、もう息を止めないように。


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