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お題 鳥獣戯画ノリ

山奥の苔むした石段を登っていく。
膝が震える頃にようやく山門に辿り着いた。
山の斜面に建つこの寺の名を高山寺という。

国宝鳥獣人物戯画はこの寺の所蔵品である。
拝観料千円を支払い、足を踏み入れた寂びた境内、悠久を思わせる建物は貫禄さえ感じさせる。

それはガラスケースに入っていた。巻物の枯れた和紙の両端を文珍が押さえ、侘びた味わいを一層引き立てている。
鳥獣を自在に遊ばせるその筆致は、世の人々の遊び心の成果と言うべきであろう。時代の心を現代まで伝えるその存在意義は大きい。
ふと巻物上辺に目をやると「複製」の文字。

なに?
「実物は京都国立博物館にございます」慣れっこですよ、という素軽さで問わず語りに返ってきた。
「でも・・・」
「ね、お客様。その辺はノリで。鳥獣戯画ノリでお願いします」
「そんなノリ」
「みなさんにもお願いしているんですよ。鳥獣戯画ノリで本物になるんです」
「で、でもさあ。わざわざここまで足を」
「さあ、みなさんもご一緒に」

                         了 410字

*現場ではこのように説明されます。博物館でも展示はされていませんので、複製でも貴重なのですが・・・
拝観料は破格の千円!本物だと思うよねぇ

たらはかにさま
初めて参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。

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