見出し画像

超能力彼女 毎週ショートショートnote

新しい携帯電話が発売されて、僕たちは販売店の行列を見ている。
「あれにはカラクリがあるのよ」
頬を赤らめて彼女が言う。
「どんな?」
「これこれしかじかで、ってわけ」
「ふーん。統計のゼミにいる君が言うと説得力があるな」
「これは説得力じゃないの。ちゃんとデータがあるんだから」
 
翌日の学食は賑わっていた。
「このリモコン、操作してみて。賑やかなあの人たち、キッチリ並ぶから」
僕がリモコンのボタンを押しても学食の群れは乱れたままだ。
「じゃ次は君」
彼女が押すと行列はキレイに一直線。
「ほらね。君には特別な力がある」
「変ね。リンゴのケータイショップはどうなんだろう」
「きっとそれも君にしかできないよ。だからもうそれを卒論のテーマにするのはやめた方がいいと思うな」
「そうね。そうする」
僕はこうして彼女が卒論で失敗する危機を救った。体育会のみんなに豚まんを奢って結構な出費だった。
かといって、これで彼女が振り向いてくれるかどうかはまた別の話。


たらはかに さま
今週もよろしくお願いいたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?