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【今日見た夢の話】「ぬ」のお菓子

こんにちは、深見です。
今日はちょっと変な夢を見ました。


夢の中で、私はどこかのホテルに宿泊していました。
あまり新しくも綺麗でもなく、自動販売機コーナーが半地下のような場所にあり、私は腰をかがめてそこへ入らなければなりませんでした。

自動販売機では何も買わず、ホテルの外へ出ると、私はようやくここが見知った場所であることに気が付きます。私が学生のころによく行っていた商業ビルにそっくりなのです。

細い路地を抜ければ、コンビニエンスストアがあるはずです。私はそこでコーヒーを買おうと思い、路地を真っ直ぐ行きました。

しかしその先にあったのは、コンビニエンスストアではなく学校の教室でした。路地を歩いていたと思っていたのですが、いつの間にか、暗い廊下を歩いていたようです。廊下の突き当たりには教室があり、引き戸から中に入ります。

自分の席がどこなのか、私にはすぐ分かりました。机の上には数冊の本が置いてあります。そのうち一冊、藤色の和紙が表紙の、和綴じの本こそが、私の命を救うものです。

和綴じの本は、住民台帳のようなものらしく、たくさんの人の名前と住所が書いてあります。どれも見覚えのない名前です。私はひたすら、それを読みました。

いつの間に、教室に入って来たのでしょう。先生が私を睨んでいます。中年の、男の先生です。彼は私をよく思っておらず、読書に夢中になっている私に文句を言いに来ます。
「授業中にそんなものを読んで、やる気がないなら出ていけ」
と、彼は言いました。そうです、今は授業中なのです。

しかし私は平然と、読んでいる本の表紙を先生に見せました。するとたちまち先生は青ざめ、「そんなつもりじゃなかった」「それを読んでいるなんて知らなかった」などと繰り返します。

私が読んでいる本は、決して侮辱してはならない本なのです。この本を「そんなもの」呼ばわりした時点で、彼はこの土地の禁忌を破ったこととなります。
そうして、禁忌を破った者がどうなるのかは、私は知りません。ただ、先生は私を害そうとしていましたから、これで助かった、と思いました。

藤色の本を置き、私は立ち上がります。早くここから抜け出さなくてはなりません。

教室を出て廊下を歩きます。廊下はいつの間にか細い裏路地になっており、裏路地の突き当たりにあるのは、もちろんコンビニエンスストアです。

コンビニエンスストアに入りますと、その一角がお土産コーナーになっていましたから、私はそこへ向かいました。帰る前に、お土産のひとつでも買おうと思ったのです。

お土産コーナーには、いくつかお菓子が置いてありました。そのひとつに、「ぬ」とだけ書いてある個包装のお饅頭がありました。

私が「ぬ」のお菓子を見つめていますと、お土産コーナーの店番をしているお婆さんが近寄ってきて、「それを知っていますか」と私に尋ねます。
私はこの「ぬ」のお菓子が、さっき読んだ藤色の住民台帳に関係あるものだと、そう思いました。

「私はここでは、いわゆる……『よそもの』ですから、詳しいことは分かりませんが」
『よそもの』という単語を、非常に慎重に、口にしました。
「詳しいことは分かりませんが、ご苦労なさったんですね」

私がそう言いますと、お婆さんは長いこと私を凝視したのちに、ふっと笑って、「そう思ってくださいますか」と言いました。
お婆さんの笑みは親しみや安心というよりも、若干の侮蔑と嘲笑を含んでいたように思います。

けれど、私は許されたのでしょう。
「では、お帰りください」と、お婆さんに見送られて、自動ドアをくぐり、そして目を覚ましました。

今日見た、夢の話です。


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