毎日ネタだし日記/オタクイグアナの娘

できれば毎日更新していきたいネタだし日記。
今回は「オタクイグアナの娘」について。

子持ちの友人Aはガチガチの女オタク。今はディズニーの乙女ゲー「ツイステッドワンダーランド」の何かのキャラにハマっているとのことで、ささやかに課金をしながら愛を注いでいるそうだ。
そんなAを見て育った娘も、母譲りのオタク遺伝子を発動させつつあるらしい。齢6さいにして「この声の人、おかーさんの好きな○○の人と似てるねえ!」と声優でアニメを語るようになったそうだ。
私を含むオタクの友人たちは「母子で趣味が一緒なのいいじゃん」とさして興味もなさそうに聞いていたが、Aには将来の懸念があるそうだ。

「もし私と推しがかぶってさ、娘と私とで解釈違いだったらどうしよう。私同担拒否だから立ち直れない」

女オタク界隈、案外母子ともにオタクで、母子ともに同じジャンルにハマるという話は、レアケースとはきえ、なくはない話らしい。
で、そんな状況に陥ったらどうしようと懸念している友人は、さらにこう言葉をつづけた。

「私夢女なんだけど、娘も夢女になったとして、そこでの解釈が違うとホント地獄。それなら推しでBLにハマってくれていたほうが嫌だけどいくらかマシ。あ、うそ、やっぱり嫌だ。やっぱりジャンルから被らないようにしないと」
「【最強ヒロイン】とか【特殊能力ヒロイン】とかが好きとか言われたらどうしていいかわからない。自分も昔好きだった分野でハマってたりとかしたら頭破裂しそう」

とのことだった。

ちょっと話は変わるが、オタクの青春時代は黒歴史であることが多い。銀魂っぽいツッコミをしたり、眼鏡のフチの内側に触角を収納したり、マルイとかでオタク知識を大声で早口で語り合ったり、わざと声を低くして闇の波動を出し「嚙み殺すよ?(暗黒微笑)」とかしたりする。
そんな芳しい香りを漂わせた青春時代を超え、社会人になり、ある程度歳を重ねると、どこかでオタク趣味から離れるタイミングがくる…人もいる。
女性であれば必要に応じてクラッシー等を参照し、洗練とした大人を目指していく。オタク趣味が続いていたとしても、昔ほどの情熱はないし、自宅で楽しめる範囲で満足するくらいにはお行儀がよくなった。
が、そうは言うても、R15の花魁パロで夢主を取り合う推しキャラ達の夢小説を読み漁って過去があったことは消えないのだ。

話を戻して。
結局友人が懸念しているのって、単純に「解釈違い」ということもあるだろうが、「自分の過去を見つめているようで嫌だ」というところもあるのではないだろうか。
過去というのはすでに再現できないものであるから笑い話になるのであって、自分の過去をなぞるような行動をしている人間が目の前に現れたら、黒い記憶がフラッシュバックしてPTSDになりかねない。
そんなAの一連の話を聞いて、友人の一人がこうつぶやいた。

オタクイグアナの娘ーー………

萩尾 望都原作、川島なお美が母、菅野美穂が娘役の、もう25年以上前に放映されていたドラマだ。娘がイグアナに見えてしまい嫌悪する母親、母親に愛されたくて何とか機嫌を取ろうとする娘の姿に、涙無くして見られないというドラマだ。
若干ファンタジー要素を含む作品ではあったものの、母子の確執と愛、折り合いをつけるべき過去など、現代人にも通ずる精神的なテーマが描かれており、単なるフィクションとして見るには惜しい名作であった。

オタクイグアナの娘ーー………

つまりAと娘が置かれた状況はオタク版のイグアナの娘だ。
自分と推しがかぶっているにもかかわらず、自分の解釈とは全く異なる二次創作作品を見て喜ぶ娘ーー……。
「どうして!なんでバトロワパロハーレム夢を愛してくれないの!」と涙を流す娘に、冷たい視線を向けながら、娘をまんだらけに残して立ち去る母…。
「それはね、私も好きだったのよ…でもね、今となってはそんな自分が許せないの…」
夢サイトサーチで死ぬほどそんな小説を探していた過去を思い出し、胸の古傷がうずく母親…。きっとこの母親の悲哀を理解できるようになるには、まだ時間が掛かるかもしれない…。

「ってことでしょ」と包み焼ハンバーグをつつきながら盛り上がる我々。
「しかしイグアナの娘っていつ放映よ?」と言う話になり、
1996年と聞いて戦慄するアラフォーたちだった。


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