オリジナルを探していた

残虐シーンのために　作者の妻が失神したという

その小説は

件の箇所を割愛されて世に広まったのである

私の好奇は常に

人々のブラックな心性に向かう

知っているかい？　猟奇マニアには猟奇犯罪者は少ないんだ

なぜか

コレクションが集まり　おぞましい話に心拍数を踊らせている限り

禁じられた欲望は天に昇華されるからだよ

『ジキル博士とハイド氏』

かの作人は舞台になり　映画になり　パロディになった

どうだい今は？

現実になったよ

いや　二重人格なんて言葉が死後になるくらい　解離の多様性を極めた時代になったじゃないか

でもなかなかどうして

この古典の古典たるその本質的狂気は

正常を装って自らをも騙している大人たちには　未だにつきつけるものがある

僕はね　それでも足りないんだ

スティーブンソンの　ぎりぎりの良識が伏せたその該当箇所を

この目に収めたくてたまらない

想像力の究極　原始の恐怖小説に　夫人が失神した様を

この魂に呼び起こしたいのだ

血のバリエーションがそろいすぎた時代にあっても　涙を誘えるもの

怯えるのは　ジキル博士たちなのだ

一粒の薬のせいになさるなよ　博士よ

ありゃあ　タガを外すきっかけしかくれないんだから

「キバハスデニモッテイタ」

以前編んだのはこちら。

#ブラックポエム