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みんなが知らない場所に行った。第1話・旅行中に旅立つ編

世界には、まだまだ未知の大陸や土地がたくさんある。


世界地図は地球上のほんの一部に過ぎず、冒険家が今も船を駆り新大陸を探している…
5歳頃まで、はちゅきはそう信じていた。

真実を知った時、世界がすごく窮屈に感じたものだった。

「そうか、だから人間は宇宙開発したり、深海を目指したりしているんだな。もう陸地にロマンなどないのだから…」

悲しさを忘れようとした結果なのか、かつてはちゅきの心に宿っていた未知への冒険心は、2024年のある瞬間まで忘却に消えることとなった。

2023年の秋から年明けにかけて、はちゅきはベトナム中部のダナンに滞在していた。
近年注目度爆上がりのビーチリゾート・ダナン。
リゾートでありながら物価が激安で、円安下でも安く滞在できるコスパ最強都市。過去にも訪れたことがあるが、コスパの高さが世界中にバレてきてるせいか、はちゅきのような貧乏くさい外人が増えてる気がした。

60円の激ウマ!なワッフルコーンソフトクリーム。


飯は1食200円前後。


美しい朝日。

ヤシの木が映える洗練されたビーチ。

ダナン、控えめにいって最高である。
幸せでごめんな。

冒険心を忘れたとか言って海外旅行してんじゃねーか、と思われるだろうが、はちゅきはここでバックパッカー用語でいう沈没ライフを送っていたのだ。冒険とはかけ離れている。



一泊数百円のホテルで昼近くまで寝て過ごし、飯はほとんどデリバリーで済ませ(雨期だったからというのもある)、夕方までネットでレスバトルに熱中する堕落した生活。
たまにビーチへ散歩に出ては無料ジム器具で運動。
何の実りもないクソみたいな生活を2ヶ月も送っていた。


そんなある日のことである。

その日、はちゅきはいつものようにビーチを散歩していた。

ダナンのビーチはよく整備されて非常に洗練されている。都市そのものはまだまだ発展の余地アリだが、ビーチのクオリティは世界の有名リゾートたちと張り合えるのではないだろうか。

ダナンのビーチの問題点といえば、海の透明度が低いことである。とても泳げたもんじゃ…お?


なんか今日の海は透明度が高い。2ヶ月滞在してこんなにコンディションが良いのは初めてだ。
思わず、ホテルへ水着を取りに戻った。

はちゅきは透明度が高い海が何よりも好きである。綺麗な海ではガチで数時間は泳げてしまうほどだ。


一人海ではしゃぎながら、かつて国内外の離島で見た絶景ビーチを思い出した。

某離島のビーチ

自分以外に誰もいないビーチで、綺麗な海を独り占めした記憶。
またああいう経験をしてみたい。
誰も知らない絶景を探しに行きたい。
自分しか知らない、未知の海。

幼い頃の想いが蘇ったようだった。
大人になった今なら、未知の場所を探しにいける。人類未踏といわずとも、日本人が訪れるたことのない場所なら見つけられるのではないか。

冒険がしたい。

はちゅきはGoogleマップを開いた。帰国が2週間に迫った状況なのでもう時間とお金がない。ダナンからほど近い場所に意味不明な秘境がないかを探した。

できれば離島で、綺麗な海があると良し。

ベトナムってどちらかというとまだマイナーな国だから、日本人に全然知られてない場所は結構多いだろ。


お、ここなんか良いのでは。
ダナンからそこそこ近い、クアンガイ省にある謎の2つの島。
ふむふむ、でかいほうがリーソン島で小さい方はベー島。日本語で紹介されてるサイトはいくつかあるが、情報量はかなり少なめ。

なんでも、手つかずの自然が残る絶景の島らしい。

悪くない。2ヶ月間、堕落しきっていたはちゅきには丁度よい冒険になるんじゃないだろうか。

……決めた!
リーソン島とベー島に行ってやる。この超秘境を訪れて、SNSでイキりまくってやる。
旅行中に旅に出るという謎状況。ワクワクするぜ。


翌朝、リュックに最低限の荷物を詰めてホテルを後にした。
フロントに「数日空けるからよろしく」と伝えたかったが、スタッフは『トイレでうんこなう』してて不在だった。
この時点で、まだ向こうで泊まる宿すら決めてない。前夜に色々決めようとしたが、寝落ちしてしまったせいでほぼノープランでの旅立ちとなった。
てかネット予約受け付けてる宿が全然なかった。どうなるかはわからない。まあ現地に行けばなんとかなるやろ。一軒くらいどっか空いてるはず。冒険には予約という保険はいらない。

じゃあな、毎日そこら辺でたむろってる犬ども。また会おう。

リーソン島への旅は鉄道でクアンガイ駅を目指すとこから始まる。
ダナン駅へ向かう前に、行きつけのフォー屋で朝飯にした。雨の降っていない日は決まってここで飯を食っていた。

ここのフォーは濃厚すぎる牛骨スープが絶品。うまいのに値段はたったの200円ほど。間違いなくベトナムで最高のフォー屋である。
離島にはたぶん4泊くらいするので、しばらくこのフォー屋とお別れしなければならない。店主のおっさんであるグエンにも挨拶しなければ。

はちゅき「おっちゃん、数日間ダナン離れるよ」
グエン「お、どこ行くんや?」
はちゅき「リーソン島ってとこ」
グエン「どこやねんそこ」

地図を見せると、グエンは「ああ、ラィソンね」と正しい発音を教えてくれた。ベトナム語は発音が難しく、地名でさえ伝えるのに難儀する。

ダナン駅にはダークグラディオンが展示されている。こいつを見るたびに、手前の木が邪魔だなぁと感じる。こんなんビッグ●モーターだったら許さないだろ。


ベトナム統一鉄道の座席にはいくつかランクがある。

木製ハードシート(貧民向け過ぎて搭載車両少ない)<革製ソフトシート<<<超えられない壁<<<6名寝台<4名寝台<2名寝台(高級すぎて搭載車両少ない)の6種類である。

はちゅきはギリ壁越えた先の世界である、6名寝台をセレクトした。



4時間の距離で1000円弱。日本人の感覚からすると激安だが、平均月収2万円のベトナム人にとってはひと財産なのだろう。普通席はほぼ満席だが寝台はガラ空き。同室の客はおらず独り占めできた。6名用の部屋を独占できるのだから考えようによっては4名や2名寝台より贅沢じゃね?お得さ6倍。


日本では人権のない最底辺のはちゅきだが、ベトナムでは誰もが羨む富裕層の一員であり、経済活動の重要な1ピースである。
乗務員もベトナム基準で上流階層のはちゅきにはニッコリ笑顔のVIP対応。ベトナム、余裕すぎるぜ。


ダナンから離れるとすぐ田舎の風景。クアンガイってどんな場所なのだろうか。

リーソン島への通過地点でしかないが、クアンガイも外人が全然訪れない未知の都市である。
下手したら道がコンクリ舗装すらされてない未開の地の可能性。冒険心が煮えたぎってくるぜ。

幼き日のはちゅきよ、未来のおまえは冒険してるぞ。どうだ誇らしいだろう。

やがてクアンガイ駅に到着。


ここが外人のいない街、クアンガイか。
なんかローカル民すらいない雰囲気なんですが。


…と、思ったその時!

無数のグエン「へい、ビーシップ、ビーシップ」


はちゅき「!?!?」

次回


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