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【推し短歌】"推し"ということば

「推し」って不思議な言葉だなと思う。使いやすいけど、言うのは気恥ずかしいような、すごく微妙な言葉。そんな「推し」という言葉にまつわる短歌です。

思いなら どっちが強い "推し"と"ファン" 
ノートにかいて 不等号をつけた

「推しです」「ファンです」は似てるようで違う。
私の感覚だと「推し」のほうが軽くて言いやすい。
もし言われたとしても「あざーっす」って返せちゃう。
でも仮に「胡坐家さんのファンです!」だなんて言われた日にゃ、そんな風に言ってもらえる人間じゃございませんと大いに照れて、みっともないほど慌てると思う。
だから私には『ファン > 推し』


「推しだから」 そんな呪文で ごまかして 
言わなかったよ 好きでしたって

「ファン」よりさらに強い言葉は「好き」。
『ファン<<<(超えられない壁)<<<好き』くらいに。
「カレーライスが好き」「海が好き」みたいなのは普通にいえるけれど、これを個人に向けるとなるとなかなか…。

高校のときって、学年にひとりふたりはアイドルみたいな男子いましたよね。かっこよくて勉強もできて部活でもエースでおまけに性格もいい男子。
普通そういうのは雲の上なので「ほ~…かっこええのぅ」で終わるのだけど、本気で恋をしてしまうことも。

告白したい(高校生だからね!)。でもなんだかそれはいけないことのような気がする(彼は尊い存在だから!)。でも告白したい(高校生だもん!)

そんな時、たまたま放課後教室で二人だけになってしまったりするんだ。
同時にバッグを持って「駅まで一緒に」ってなるんだ。話が思いの外弾んでしまったりするんだ。
そして彼が鈍感なのか無頓着なのか(多分両方)、気を持たせるような態度をとってしまったりするんだ――。

嬉しくてたまらないのに、舞い上がってはいけないという自制が働いて
「あはは……〇〇君は私の推しだからね~」
なんてごまかしちゃったりするんだ(泣)


言わないよ 「推せる」だなんて 
だってそれ 「愛してます」の 下位互換だし

一方、最強の「推し文句」は「愛してる」
ここまでの気持ちになると、ごまかすほうが格好悪い。
用法と用量は守らないといけないけれど、出し惜しみもしたくない言葉。


"推し"という言葉にまつわる短歌はこれにておしまい。

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