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【8/365】 父との記憶

父の日に送ったわたしのメールに反応がない。父に「ありがとう」を強要したかったわけじゃないけど、気になって電話した。

いつものように、のんびりした様子で、
「元気か?」という一言。

「いやぁーお前だけだよ。父の日にわざわざ連絡くれるの。」

といったところで、わたしには妹が一人いるだけ。他に誰が祝うというのだ。
ちょっと抜けてるというか、ぼけてるのか。思わず笑った。

父は今年の3月に退職したものの、相変わらず週4日はせっせと仕事をしている。。
典型的な仕事人間。(ちなみに、わたしの母も仕事が大好きな人。)

おっと。話がそれた。
父の日、はちょっとすぎたけど、今日は記憶の中にある父について書こうと思う。

思えば、わたしの記憶の中にある父の姿は、いつも仕事に一生懸命な背中だった。

休みの日にどこかに一緒に遊びに行くことはほとんどなく、平日も休日も帰宅はわたしが寝てから。夜に目がさめると、書斎に灯りがついていて、タバコをふかしながら黙々と仕事をしていた。それがわたしの子どものころ見ていた父の姿。

だからといって、わたしは父のこと不満に思っていたわけではない。
父の働く姿を見るのが好きだったから。

そんな仕事で忙しい父とわたしをつなぐのは「本」だった。
本屋に行き、それぞれ好きな本を選ぶ。
選んだ本をもって、行きつけの喫茶店で父はハンバーグを、わたしはミートソーススパゲティを頼む。

そこに大した会話があるわけじゃないけれど、読んだ本の感想を父に話すのが楽しかったのだ。

こんな本を読んだよ、
この本が面白かった、
次はこんな本が読みたい。

そんなたわいもない話。
子どものころは、おもちゃ屋さんへ行くより、本屋さんが好き。将来の夢は本屋さん。それはきっと、父ゆずりに違いない。

父もわたしも読書が好きで、今でもそれは変わらない。今日の電話の中でも、最近読んだ本の話で盛り上がる。最近はどうやらフランスの哲学に興味があるらしい。その道40年もずっと研究の道をひたすらに走り続けて、なおも現役。知的好奇心は衰えることなく、むしろ時間に余裕ができた分、活性化してるんじゃないか。

そんな父がおすすめしてくれる本は、わたしにいつも新しい刺激をくれる。だからわたしも、自分が好きな本をすすめるのが楽しい。
(だからといって、父が読んでるとも思えないのだけど…)

今は離れて暮らしてるけれど、本を通した交流はずっと続いてる。
性格もぜんぜん違うけれど、本を愛するという共通点で父とつながることができる。本は勧めてくれる人の人生や生き方を教えてくれるものでもあると思う。
読書を通じて、父を知る。

わたしと父は、本を通して会話をする。

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