002_ムンク

超ミーハーな理由でムンク展に行ってみた

 そもそも「ムンクの叫び」っていうタイトルだと思っていた。仮にもデザインやイラストに携わっているのに、ヒドい話ですが、マジでムンクさんのことを何も知らない。キョーミがなかったってことです。意識低い。やばたにえん。

 そんな私がはるばるムンク展に参上した理由は、好きなゲーム実況者がムンク展に行った動画をあげていたから。

 ムンク展は音声ガイドもついていて、ムンクの声は福山潤が担当している。「福山潤の声が聞きたくて遊びに来ました」とかでも、全然イイと思うワケ。歴史とか、伝統とか、ムンクさんって大巨匠だし、そういうの重んじて向き合わないと…なんて怒られるかもしれないけど、美術への入口が声優だろうがゲーム実況者だろうがも~よくね? 平成も終わるぜ?

だから許せ。私のミーハーを…。
ゴッホ。バッハ。

 私はムンクに興味を持ったことはないけど、絵画には一応、義務的に興味を持っている。そろそろ20代も半ばに差し掛かるわけだし、10代のとき避けてきたものにも、少しは理解が追いつくんじゃないか…と思ったりラジバンダリしてたところ、好きなゲーム実況者が休日返上で美術館に行きムンク展を鑑賞したのち、「写実系じゃなくて、若干抽象絵画には入るけど、抽象絵画の一線は超えていない」と語って大満足~な動画をあげた。ちゅ、抽象絵画には入るけど超えとらんってdo you koto?ってなった私は、むしろ興味をそそられた。実際に現場で確かめて、彼の言葉に「わかりみ!」ってしたくなったし、ここから私の美術ライフとか始まればイイ感じ…って思った。はーいオッケー☆ミ


そういうこった。

 富士そばで腹ごしらえをして、東京都美術館に着いたのは午後12時過ぎ。土曜日の真昼間だったけど、待ち時間は30分と意外に少なめ。

 いよいよ展示室に入り、早速衝撃を受ける。ムンクは自撮り魔だったのだ。ムンクは、画家の中でも自画像の数がかなり多いほうで、その際に自らを撮影した写真を用いることがあったらしい。三脚とか立てて、ポーズをキメていたのだろうか。

分かりやすく自撮りだ!!

 他にも多数の自撮り写真が並ぶ異様な光景。画家の展示会を見に来たのに、最初に軒並み俺の写真きた。セルフィー!

 そしてムンクの自撮りって、どれもピントが背景に向けられていて、肝心の被写体がボヤボヤなの。撮るのむっちゃヘタクソなのでは?お茶目なオジサンだな…なんて笑っていたんだけど、実はあえて被写体をぼやかしていたことが判明。SNOWかよ。

 ちなみに、個人的にドキッとした自画像はコレ。

【家壁の前の自画像】

 ムンクが黄色い日差しにかざされているんだけど、こんなピクニック日和の庭先で、自室で三徹キメたんかってくらい険しい顔をしている。やっぱりインターネット上の画像では伝えることに限界があるけど(なんでそんな顔をするん)ってドキッとしちゃったな。

 ムンクは、幼い頃に母と姉を亡くしていて、それから死とか、病とか、孤独や絶望を何度も表現していた。正直、9つあるブースの中で私がいちばん好きだったのが、この「家族ー死と喪失」の展示だった。

【病める子 Ⅰ】

 なんとなくだけど、ムンクの中でも有名な作品なのかなって思う。私は何の前情報もなくこの絵を見たんだけど、あまりにも病を赤裸々に描いていて、ちょっと傷ついてしまった。だけど、生きている心地を感じたのもまた事実。病に蝕まれながらも、まだ自分が生きていると確かめられているような横顔。ムンクの見てきた生命なんだなあ。

 この作品は好きすぎて、ポストカードも買っちゃいました。「ブローチ、エヴァ・ムドッチ」という絵も好きで、あわせて購入。ムンクの描く女性の中でも、珍しく骸骨みがなくて、美しく健全な女性って印象を受けた。ムンクの生きていた時代に私がオタクをしていたら間違いなくハマっている。

 まさにこの次のブースが、その骸骨みたいな女まみれなんだけど、なんならもう、眼球周りの陰をボール状にぐるぐると描いている。


今回、上野ZOOに行けなかったんだよな。


 そして、ついに「叫び」とご対面…!

【叫び】

言わずもがな。

 教科書でも見たし、バラエティでも見たし、グッズでも、友だちがアイコンにしてるのとかでも見た。人生でむっちゃ見てきたワケだけど、原画を見るのはこれが初めてだった。

 「叫び」の展示だけ、特別な整列をおこなっていた。「最前列で見られるけど歩みを止めてはならない」列と、「最前列より後ろで見ることになるけど時間制限はない」列の二つだ。私は最前列のほうに並んで、「叫び」の前を横切った。

絵画が生きてんのかと思って、全身がざわついた。

進むしかなかった最前列で、この出来事は一瞬だった。しかし、たしかに人の描いた形跡がある、あのムンクの叫びだった。こんなに心が落ち着かないのは、見知った絵だったからなのか、それとも…。

 あの一瞬だけでは満足できず、むしろ駆り立てられ、結局時間制限のない列にも並んだ。かれこれ10分近く、「叫び」の虜になっていた。感情と現実が混ざり合うのを、ムンクは目撃していたんだな。すごすぎた。


 お次はセクシーゾーン。

【接吻】


お〜…


【接吻Ⅱ】

いや吸引力すごっ!


 お次はおっぱいむっちゃあるゾーン。私は「すすり泣く裸婦」が好きでした。なんとなくだけど園子温を思い出してしまった。


 続いて肖像画の展示。最後にムンクの晩年。


 いろいろあったムンク(家族の死とか、初めての個展でむっちゃ誹謗中傷を受けたとか、婚約者うんぬんで指の一部を飛ばされたとか、健康も精神も蝕まれアルコールに溺れたとか)だけど、孤独も絶望も、生きるも死ぬも、愛も拒絶も、全部キャンバスにぶつけてなんだかんだで80歳まで生きている。エラい…。

 そんなムンクの晩年の絵は、今まで見受けられなかった綺麗な有彩色がたくさん使われていて、自身の作品のリメイクも多く手がけていた。そんな中、右目の血管が破裂して眼病を患うムンク。そのときに描いた作品がこれ。

【狂った視覚】

 ここで私はようやく、あの一言の意味が分かったような気がした。若干抽象絵画でありながら、抽象絵画の一線は超えていない。そういうことか…!ってなった。コナンくんだよ。

 これがムンクに見えていた世界なんだなあ。見えたものを、見えたように現実世界に落としたから、抽象絵画でありながらも、抽象絵画の一線は超えない。いや…もお、わかりみ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!


 そんなこんなで、私はムンク展をあとにした。まさか絵画を見て、こんなに放心することになるとは思わなかった。マッサージを60分受けたあとの余韻のような、映画を120分見たあとの余韻のような。心が満たされるってこういうことなんだなあ、心にも満腹中枢作用してんなあ。

以上、超ミーハーな理由でムンク展に行ってみた話でした。セルフィ〜!!

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