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さざんか、さざんか、咲いた道。久しぶりの茶の時間のあとで



音が、よく聞こえる

親しい仲間を呼ぶように囀る鳥
風にそよぎ擦れる葉
からからと地面を転がる枯葉

岩が見える
土が見える

五感が戻ってきたようなそんな感覚

ただ、意識的に見つめようと開こうとしているだけなのかもしれない

でもどこか
体の詰まりが取れて
すーっとしたようなそんな気がする

すっきりとしていて
入ってきていいよ
と体が言っているようだ

あっというまに師走
もうすぐサンタクロースも街にやってきて
犬がかけまわり、猫はこたつで丸くなる

さざんかの花が咲いている
鮮やかな紅色
葉は硬く、濃い緑

落葉樹からは葉がおちて
寒そうな枝が揺れている

悲しさはなくて

冬ですね、とすっきりとした空気を楽しんでいるように見える

水面にうつらうつらと数本の木がうつる
幻のように揺れる

揺れが、ここちいい
ゆらぎが、わたしを安心させる

久しぶりの稽古
怒られたくなくて予習していったからまずまず手が動いてくれたけど忘れてる忘れてる

上手くなることを求められない場所に身を置けないだろうかと、思ったりする

階段を登らずに
一段目でずっと足踏みしながら
低い位置から見える世界を見ていたいと

15時か

冬の15時だな

太陽が橙で低いところで私を照らす

無事千秋楽

無事

無事

無事じゃなかったようで
無事だったのだろう
ここにいまいるのだから

息を一つつく

炭のぱちぱちという音を思い出す
高温の釜で、汗だくになりながら炭を作る職人を思う

火や熱に癒される

うさぎのお茶碗
満月のようなお菓子
月夜かななどと思っていたら

「もううさぎ年も終わりだからね」
「12年会えないからね」

と先生。

12年。

一回り違うね、と言うけれど

1年や、12年など、続いてゆく人生に言葉や概念によって区切りをつけて長年生きてきた人

それも、今を、この生を、豊かに幸せだと、ありがたい事だと感じながら生きるための工夫なのだなと改めて思う

今年も終わり

といいたいところだが

今年はまだまだ残っている

なんとか納めて

無事、千秋楽を迎えたいものだ


2023.12.21

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