【詩】演劇

物心ついたときから 演じてゐる気がした
どこかに劇作家のやうなものが存在して
わたしの好むと好まざるとにかゝはらづ
わたしといふ登場人物の演技指導をする
けれど わたしはわたしでは幸せになれづ
わたしはわたしの役を演じたくなかつた
わたしはこの舞台の運命に抗おうとして
わたしではない何者かを演じやうとした
しかしデウス・エクス・マキナの調整か
それとも わたし自身の性格による運命さだめ
気がつけば わたしはわたしを演じてゐる
あゝ わたしはわたしにしかなれなかつた