人工知能の感情を視覚的に捉える
人工知能が感情を持つ可能性があるのかどうかについて考えてみました。
早速ですが質問してみたいと思います。
僕たちが人工知能から感情を感じ取ることはできると思いますか?
・人工知能が感情を持つこと
・人工知能が人間の感情を認識すること
・僕たちが感情を持つこと
・僕たちが人工知能から感情を感じること
これらは関連していますがそれぞれ全く別の内容を示していますよね。
僕たちは“人間は感情を持っている”と信じて疑いませんが、実は感情を持たない人が存在し、彼らには感情があると錯覚させられているだけなのかもしれません。
今回は僕たち人間が人工知能から感情を感じ取ることはできるのか、その可能性について考えたいと思います。(人工知能が感情を持てるかどうかについてではありません)
まず初めに確認しておかなければならないことがあります。
心とは一体なんでしょう?
心を辞書で確信してみると
・人間の理性・知識・感情・意志などの働きのもとになるもの
・物事について考え、判断する働き
・気持ち
といった説明が載っていました。
やはり多義的かつ抽象的な概念ですね。
今回はこの中でも感情に限定して話を進めたいと思うのですが、まずは感情認知という言葉について触れておきます。
感情認知とは、他人の感情を“推測”することを言います。
最近では人間の感情を読み取る(推測する)ことのできる技術が出てきていますが、それは人間の脳内に存在する神経伝達物質の量や脳波を測定することによってではなく、人間の感情が現れやすいとされる表情を分析して、それについての学習を重ねることで可能となった技術です。
※世界初の感情認識ロボット:Pepper(SoftBankの製品)
なお人間の表情には個人差があり、ある感情を正確に現す表情を定義することが難しい(感情に由来する表情における個人差が大きすぎる)ため、感情認識モデルの作成が困難であるとされています。
つまり、ある表情における共通のパターンを見つけることが困難だと言うことです。
さて、感情認識機能を有した人工知能は僕たちの表情のなかに潜むパターンを検出することで感情認識をするということが分かったところで冒頭での質問を再度したいと思います。
僕たちは人工知能から感情を感じ取ることはできるのでしょうか?
人工知能がある対象の感情認識をする際には表情に潜むパターンを検出すると言いました。
人間による観察だけでは見落としてしまう特徴を人工知能は検出できてしまうことに加えて、感情認識の精度が上がれば、僕たちはそれまで知り得なかった感情別の表情パターンを手に入れることができるでしょう。
それらのパターンを元にして人工的に表情を再現できるのではないか?と思ったわけです。
もちろん、これは人工知能技術だけでは実現しないことなので他の技術との併用が絶対条件であるように思えますが。
人工知能から少し離れて、人間以外の生き物から感情を感じることはあるか考えてみたのですが思い当たる節がありました。
犬です。
突然犬の話になって困惑している人がいるかもしれませんが、後で人工知能と感情の話に繋がります。
犬と感情について詳しく話す前に、心理学的観点からみた感情の定義について少し触れておきます。
心理学の研究では感情を
・比較的長時間持続する強度の弱い気分
・一時的で強烈な情動
(情動:主観的な感情で、行動的・運動的反応として表出される)
・精神的刺激に対して生じる情操
の3つに分けて考えることが多く、研究の対象になるのは主に気分と情動です。
(情操というのは美的、道徳的、知的、宗教的の4つに分けることができ、それらは社会的価値を持つとされます。)
上記に挙げた、3つの感情のなかでも情動は比較的容易に人工知能に実装できるものなのではないかと個人的には思っています。
そう思うのは、僕の実家で飼っているミニチュアダックスフンド(以下ダックス)の行動が理由です。
家族の誰かが口喧嘩をするとダックスは喧嘩に関わっていない人の所へ行って体をべったりくっつけて動かなくなるのですが、その時のダックスの表情、行動を見るとどうしても感情を持っているように見えてしまうんです。
あえて見えてしまうと表現しています。
自分が飼っている犬が感情を持っているのでは?と思ったことがある人は僕以外にもいると思いますが、その理由はその犬の行動ではないですか?
僕たちが犬から感情を感じ取るための要因と言えば表情や行動のどちらかであることが多いでしょう。
飼っている犬がなぜそのような行動をとったのか正確な理由は分からないけど、行動を見れば感情を抱いていると感じざるを得ない。このように思うことが少なからずあるのではないでしょうか。
情動は行動的・運動的反応として表出される感情であると説明しましたね。
つまり、情動は行動によって視覚的に捉えることが可能であることを意味します。
以上の理由で、僕たちは人工知能から感情を感じることは可能であると考えました。
参考文献
戸梶亜紀彦(2001)『感動』喚起のメカニズムについて, Cognitive Science pp 360-368
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