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JTCを救いたい その1 ~JTCの欠陥?~


「JTC」ってなんですか

あなたは「JTC」という言葉をご存知でしょうか。この記事をご覧になっているということは、ご存知なのでしょう。「Japanese Traditional Company」を略したこの造語は、外資IT企業の対義語のような位置付けで、しばしば蔑称として使用されます。筆者の主観では、退職エントリなるものでよく見かけるように思います。「パワハラに耐えかねてJTCの退職を決意しました」「前職のJTCでは意思決定が遅く、仕事が全く進みませんでした」等、ネガティブな情報は簡単に見付かりますが、ポジティブな情報と言えば「なかなかクビにならない」ぐらいしか目に付きません。何を隠そう私もJTCの一構成員ですが、確かに普通にしていればクビにはならないでしょう。職場で堂々と鼻孔を掘削してアウトプットを出していた若手社員もクビにはならず、なぜか自分から辞めていきました。
あなたが就活生であれば、「JTCには成長環境が無いから、就職はやめておこう」と感じるかもしれませんし、そう思われるJTCは没落して然るべきなのかもしれません。しかし、JTCの地位が低迷することは、果たして我々国民にとって好ましいことでしょうか。少なくとも私はそうでないと考えている為、noteで情報を発信し、少なくともJTCの現状について知っていただこうと乱文を書き散らしている次第です。

JTCの欠陥?

「Traditional」とはそんなに悪いことでしょうか。私はTraditionalなものが大好きで、前輪が後輪の10倍ぐらいある自転車に乗っています。


前輪が後輪の10倍ぐらいある自転車

これは嘘ですが、「Traditional」であること自体は別に悪いことではありません。近年のJTCが害悪視される文脈を見ていると、「Traditional」が「変化に乏しい」「旧態依然」といった意味合いで捉えられているように思います。私の周囲で観測された、JTCに対する不満は下記の通りです。

  • 会議が多い

  • 意思決定が遅い

  • 終身雇用の為、成長環境にない

  • パワハラ・セクハラ

 (これらが必ずしも欠陥かどうか、という点は後述します) 私はこれらがJTCの構造に起因するのではないか、と考えています。JTCはその多くが高度経済成長期を支えた大企業です。当時のモノを基軸とする市況や、苛烈な勤務が当然とされた状況に基づいて組織が形成され、成熟してきたと思われます。これが弊害となり、上記のような欠点を生み出しているのではないでしょうか。具体的には、モノの生産には設備が必要であり、その実現には莫大な規模の投資、つまりリスクが伴います。そして、当時は作れば儲かる環境があった。つまり、一度の投資額は膨大であるが、それによるリターンも相応なものであったということです。付記すると、一度設備を導入すると数十年単位で使用し続ける場合もあり、その間大きなコストを発生させることも大きなリスクです。
 もし私がボクサーで、一発打てば肩甲骨が爆裂四散するが確実に相手を仕留められるパンチを持っていたとすると、120%命中するという確証が得られるまで打てません。慎重に相手の体力や位置を調整し、入念に計画したタイミングで必殺の一撃として放ちます。仮に1ラウンド目のゴングが鳴った瞬間が最も命中しやすいとしても、開幕1秒で自爆してヤムチャ状態となるリスクを鑑みると実行を躊躇してしまうでしょう。

ヤムチャ状態


 この例えは少し大袈裟ですが、多少はJTCの特性を説明できているかもしれません。つまり、大規模投資を前提とした業態を中心に経済発展した結果、合意形成のインパクトが大きくなり、また、苛烈な勤務の許容により時間の価値が低下したことで、大人数の時間を消費するデメリットが薄まり、会議だらけの働き方が生まれた。また、パンチを打つリスクが高い故に、意思決定の迅速さより慎重さ、若さより経験が重要視され、終身雇用スタイルとなった。このような推論が可能ではないでしょうか。
 以下では各項目それぞれについて私の経験を交えて説明していきます。

会議が多い

 上記の通りの推論もあり、JTCで会議が多いのは恐らく事実かと思います。実際に私の会社でもやたらと会議があります。日によってはほとんど一日中会議ということもあります。これについて、私は必ずしも悪いことではないと思っています。議題が明確であり、参加者が然るべき準備をしている会議はスムーズに進み、有意義な情報交換や意思決定が成されることが多いです。また、会議とは責任分担の場でもあります。議事録さえあれば、少なくとも反対はしていない人間が数名確保でき、これはプロジェクト事の進行に貢献できる可能性があります。研究者にとって嬉しい話ではありませんが、プロジェクト進行に人間関係の力学が作用するのは世の常であり、この観点からも会議は有効活用できる可能性があります。ちなみに時々何の意味もない会議もありますが、最近はオンライン会議であることが多いので、内職をすることで事なきを得ています。

意思決定が遅い

これも事実であることが多いのではないでしょうか。立場が近い上長から順番に承認を貰う、という話は私もよく聞きます。ベンチャー企業や大学研究室の話を聞いていると、自分たちの組織が非常にフットワークが重いように感じられます。一方、このようなスタンスには担当者を失敗の責任から守る要素もある為、一概に悪いとは言えない気もします。上手くいっている時には邪魔にしか感じませんが、保険とは往々にしてそのようなものです。

終身雇用の為、成長環境にない

これは私の経験上、「NO」と言いたい部分です。確かに、(少なくともこれまでは)終身雇用が前提であり、成長せずともある程度の年齢まで会社に残れたのは事実です。しかし、少なくとも私の周りには、飽くなき探求心で成長を続けるヲジサンも多数観測されます。

AIが考える「飽くなき探求心で成長を続けるヲジサン」

そもそも「成長環境」とは何でしょうか。「成長しなければ生き残れない環境」であればJTCには無い場合が多いかと思いますが、「成長する為に必要な情報がある環境」はあります。JTCは多くの場合、短いスパンでキャッシュを獲得しなければ危険、という状況にはありません。つまり、走りながら社員を育成する体力はあります。その育成が上手く為されているかどうかはさておき、自分が成長を望むのであれば、それを実現する環境はあります。成長しなかった人は、モチベーションが足りなかったのではないでしょうか。

パワハラ・セクハラ

これは残念ながら、私の観測範囲にも存在しました。私も当事者となったことがありますが、これは別の記事に書こうかと思います。一つポジティブな情報としては、会社側は特にここ2~3年、ハラスメントに対して非常に注意深くなっています。パワハラ上等!という上長の数は確実に減ってきていますし、まだ末端までは行き届いていませんが、管理体制も強化されてきています。但し、撲滅された訳では無いと思います。

まとめ

よく言われるJTCの欠点について、確かにそのような要素は存在しますが、これらは必ずしも欠点ではない、或いは欠点であるが、何かしらの長所の副産物である、と言わせてください。言わせていただきたくお願いいたします。何せ現役社員なもので…。
今後はJTCの長所や就活、個人的なパワハラ経験などについて書いていこうかと思います。

その2を投稿しました。


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