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慾望


一杯の酒を求め
酒場を巡って彷徨う
酒を求めているのか
語る相手を求めているのか

ぼくの手には小銭の入った
偽革の財布だけ
女たちは金もの喰い
此方には目もくれぬ

綺羅綺羅しい姿をした女たち
氷のような視線を寄越す

ああ、ぼくは脱落者なのだ
蔑まれても仕方がない
女たちは蜜を求める蜂のように
金の在処を探し当てる

昨日と今日と明日
ぼくはまるで変わらない
捩れた心に
捩れた涙
空っぽの心に
空っぽの財布

誰も寄りつかない
誰も寄せつけない
実のところは
ひとりで居るのが、半分心地よい
けれども、半分だけだ
その残りの半分が、
心の切れ端を責め苛む

ひとが恋しい
ひとが恋しい
ひとが慾しい

矛盾して裏返った気持ちの裡には
何やら判らぬ
腐った臓物のようなものが詰まっている


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