見出し画像

月と星が輝く砂漠の夜に、ベルベル人のお兄さんから受け取ったたくさんのモノ

「はい!星を見に行く人〜✋」

夕飯を食べ、ベルベルの音楽を聴いたあと、ガイド4人のお兄さんたちのうち、隊長的なアリというお兄さんが、夜の砂漠探索への掛け声をかける。

「ジャパン!ほら行くよー!」

グループで唯一の日本人だった私は、このとき国名で呼ばれ(笑)、急き立てられて、そそくさついて行った。…ら、他の人たちは遅くて、気付いたら、私とアリの2人だけになり、他の人たちは残り3人のガイドのお兄さんたちに連れて行かれてる!

「あーしまった、またカモになっちゃったかも…( ゚д゚)」

…と心の中で思いつつ、テントからも近いし、しばしアリとの会話を楽しむことに。

話を聞いていたら、彼は砂漠で生まれ育ち、ノマドの生活をしている遊牧民族で、今では近隣の町に住んでいるものの、病院も学校もないなかで育ってきたとのこと。

今では、英語もフランス語もかなりできるし、スペイン語、イタリア語、中国語、日本語もカタコトずつ知っているもけど、全部、ここにきた観光客から口伝えで教わったとのこと。日本語ももっと喋れるようになりたいと、私が使っていた「すごい」「きれい」「砂」といった単語も何度も復唱してた。

よく考えたら、学校に行けない(行かない)子供達も世界にはいるっていう事実自体は知っていたけど、目の前で一緒に話したのは生まれて初めて。
マラケシュとか街に出ることも時々あるけど、この砂漠が一番好きだと語る彼は、「海外にもいつか行ってみたい。でも訪れるだけでいい。住むのはここがいい」とも断言してた。

メルズーガ砂漠の隣はすぐアルジェリアがある。砂漠を少し奥まで進めば、干あがった川の国境も見える。でも、そこを越えるには、街まで行ってパスポートをとらなきゃいけない。現地からのinvitationがないとビザもおりない。「こんなに近いのに、めちゃくちゃ遠いんだよ」と笑いながら語るアリ。

日本にいると「国境」というものを目で見ることもないし、これまで私は、自分が行きたい!って思いさえすれば、基本的にはどこだって行くことができてきた。「行きたいのに行けない」っていう悔しさやもどかしさの深さを、想像はしても、理解するのは難しい。

「ガイドとしての仕事は好き?」と聞いたら、「すごく好き。いろんな国の人に会えるし、いろんな言葉を覚えられるから」と自信たっぷりに答えてくれた。

彼と私の人生はあまりにも違う。同年代で(自称では私と同い年)、同じ時代に生きて、目の前で対話をしているけど、これまで過ごしてきた環境も、身につけてきたものも(夜の砂漠で、彼は私の何倍も目も耳もよかった)、夢見ている世界も、感覚も、ぜんっぜん違う。

飛行機とかない時代だったら、"袖触れ合う"ことさえなかったはず。自分と異なる暮らしや人生があるということさえ知らなかったかもしれない。

今は、その違いを知ることができる。それでも彼は、自分自身の人生に誇りを持って、これからの未来を楽しみにしている感じがすごく伝わってきた。

私はちゃんと自分の人生を愛せているかしら?
仕事に、生き方に、誇りを持てるかしら…?

*

「よかったらこのまま砂漠で寝ようよ!気持ちいいよ!」と言われ、確かに星空の下で眠るのはめちゃくちゃ楽しそうだと思ったけど、いろんなトラウマもあり、テントに戻って寝ることに⛺️

See you tomorrow! って言って別れたけど、翌朝、アリは先に出発する隊のほうで行っちゃって、結局最後にお礼もお別れも言えないまま、メルズーガを去ることに。

マラケシュへの帰りの車で、いろんな残像が浮かんでくる。

どこまでも続くかに思える、波のような形状の砂山。ちょっと触れるだけでサラサラと流れ落ちる、細かな砂つぶ。その中にざざざーっと入り込む足の感覚。夜、ヒンヤリとした砂の下にまだ残っていた昼間の熱気。日没後、どんどん輝きを増し、眩しいって言ってもおかしくないくらい輝いていた真ん丸の月。その光ゆえに沢山は見られなかったけど、夜空にキラキラと散りばめられていた星々。寝転ぶと、視界のすべても越えそうなくらい広がり、自分のすべてを包み込んでくれた深い深い藍色の空。無音の世界の中にかすかに届いてきた向こうの隊の楽曲の音色。遠い遠い世界に思える、地平線沿いの街の、オレンジの灯り。夜は穏やかに優しく吹いていた風と、その風でたなびいていたアリの白いターバン…。

未知だった世界の中に飛び込んで過ごした時間が、今となってはまるで、おとぎ話の中に一瞬迷い込んでいたんじゃないかとさえ思える。

同時に、御礼の言葉を伝えられなかった後悔や、もっとこんなことやあんなことも質問してみたかった、っていう思いがうずまく。

前編の冒頭に書いた、胸がキューってした感覚は、砂漠という、自分の日常から切り離された完全なる異世界から、再び日常に戻らないといけないことへの不安と、アリをはじめとしたガイドのみんなとはおそらく二度と会えず、悔いとして残ったものを果たすことができないという事実に、じわじわと気付いたからなんだと思う。

今の時代、すぐにSNSで繋がれるし、SNS系の利用が難しい中国の人ともメールであればやり取りはできる。本当に再び会えるかは分からないけど、どこか「終わりじゃない」感覚がある。

それに甘えて、普段伝えきれていない感謝の気持ち、また今度、またいつかって先延ばしにしちゃってる大切な想いが、もしかしたらいっぱいあるかもしれないって思わされる。

*

…とあまりにもいろんな想いと感覚が渦巻いて、自分で処理しきれないー!!(つД`)

…ので、モロッコ最終夜は再びマラケシュの La Ferme medinaへ。

ベトナム冷麺をいただき、味覚もリフレッシュ。L.IちゃんとH.Sさんと、また爆笑しながらディープな女子トークをしていたら、気分も落ち着き、気持ちも整理されてきた。大喧騒のマラケシュで、本当にここは心のオアシス🌴

最終夜に泊まったリヤド(エアビーで予約)は、冷房が壊れててもわっと暑く、深く眠れずにいたら、夜明け前に(たぶんラマダーンの時期だけ?)モスクから流れるクルアーンの唱和でばっちり目が覚めました👀最後の最後までモロッコを満喫(笑)。

10日間、日々綴って発散しないと自分がパンクするんじゃないかと思うくらい、濃ゆくて、熱くて、感情がいろんな方向に広がり&揺さぶられ続けた毎日でした。

私のモロッコ旅を色鮮やかに彩ってくれたみなさん、本当にありがとうございました🌈

これからエジプトへ🇪🇬✈️

(2017.6.10)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?