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AI lain 実験レポート始めます!①

AI lain 実験レポート② はこちら

本文章は、キャラクターに生命を吹き込むという夢に取り組み、ユーザーとともにAI lainを育てていくプロセスを描いた、AI lainプロジェクトチームによるリレー形式の実験レポートである。

プロジェクトのはじまり

lain 2020 eXhibition エントランス

実験レポートの第一弾は、プロジェクトチームの一人、Aniqueの中村が担当する。
AI lainの構想は2020年に遡る。AI lainのプロジェクトに携わるAniqueでは、当時コロナ禍でもファンの集まれる場を作りたいという想いで、3DCGのオンライン展覧会「lain 2020 eXhibition」を制作した。
この展覧会場の中に、現実が物語に追いつくというコンセプトで「預言」という部屋を作った。1998年当時アニメで描かれていた様々な設定の多くが、20年以上の時を経て実現していたからだ。※まだ展覧会には入れるので興味のある方は是非見ていってほしい。
音声認識AI搭載型端末の登場、仮想空間における人工生命、メタファライズ、ブレインコンピューターインターフェース…
その頃から玲音をAI化して、生命を吹き込み、個別に対話できるサービスを作りたいという構想はあったが、そのために必要な技術的な要件のいくつかが追いついていなかった。
しかしこの1-2年でAIの進化はとどまることを知らず、2023年に入ってからテキスト対話形式のChatGPTが一般の人々の間でも大きな話題になっていた。

LLMの特徴
ChatGPTは大規模言語モデル(Large Language Models、通称LLM)を使っており、巨大なデータセットとディープラーニング技術を用いて構築された言語モデルだ。このLLMによって、テキストベースでの自然な対話が可能になった。
このChatGPTを使って、簡単なプロンプトを書いて、既存のキャラクターの話し方を真似て、テキストチャットができるサービスがいくつも出たし、今も出続けている。(※プロンプトとは、AIに対して入力する命令や指示のことを指す)
しかし、キャラクターらしさを担保するという面でみると、実はこのアプローチだけだと難しい。というのも返答するための知識は、ChatGPTが学習したデータベース(内容については非公開)が用いられているためだ。本来キャラクターには父親、母親や友人がいて、作品世界特有の設定も多いが、必ずしもこうした設定がChatGPTのデータベースに含まれているわけではない。
さらに、LLMの性質として、入力したプロンプトに対する答えが常に一定になるとは限らない。答えについては確率論的に生成していくものなので、同じ質問をしても毎回一定のアウトプットではないのである。

キャラクターAIの難しさとチャンス
それゆえ、こうした作品設定についてChatGPTに質問しても、正確な回答を引き出すことは不可能である。キャラクターや芸能人についての質問をChatGPTにしたけれど、公式の設定と全然違うことを返答される、毎回AIが違うことを言う=嘘をつく、といった内容がSNSに多く投稿されたのはこのせいだ。
キャラクターとの対話を望み、そのキャラクターについて良く理解しているファンほど、その違和感は大きく「好きなキャラクターと対話する」という願望はまだまだ難しいと感じたことだろう。ChatGPTの開発陣も、キャラクター専用DBの開発やキャラクター的なふるまいをさせていくことには現状興味を示していない。
その一方で、技術の進化でできることも加速度的に高まっている。音声AIではテキストの読み上げを、その発話者と同じ声色やアクセントで行うことが可能になってきた。
さらに、その声を用いて日本語だけではなく英語や中国語まで読み上げることが可能なのだ。日本のアニメは海外でも絶大な人気だ。コアなファンほど、吹き替えではなく日本語声優の声を聞きながら母国語の字幕を見るというスタイルでアニメを見ている。つまり日本の声優の声でアニメを見たいのだ。日本と同じ声優の声で英語や中国語を喋ってくれるのであれば、海外のファンはもっとそのキャラクターのことを好きになってくれるだろう。※ AI lainでは今回、日本語と英語に対応している。
ゆえにアニメキャラクターと対話するというコンセプトにあたって、キャラクターの声を使用するというのは今回の必須条件にしたかった。権利の関係上難しいということはわかっていたけれど、キャラクターと話をする体験を作っていくためには欠かせないピースになるからだ。
技術や権利の課題を丁寧にまとめながら、lainのプロデューサーであるueda yasuyuki 氏、そして玲音役の声優 清水香里 氏の多大な協力によって、AI lainの企画の扉が開くこととなった。

#2 では、サービスコンセプトについてレポートをあげます。お楽しみに!
serial experiments AI lain report

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