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星の王子さま 26章

 王子からパイロットへの贈り物は、笑うことを知っている沢山の星。
星たちはみんなあなたの友だちになることでしょう。
            ★ ★ ★
 石造りの古い壁の遺跡が、井戸の側にありました。翌日の夕方、わたしは仕事の後で戻ってくると、遠くでその壁の上に座って足をぶらぶらさせていた。そして、話し声を聞きました。
 -君は思い出さないのかい?そう聞こえました。全く、この場所じゃないよ!
(王子が地球に到着したのが、この井戸のあたりだったとしたら、井戸の場所は、初めから知っていたという事になる。どうして、そのことをパイロットに教えなかったのか?)彼が反論したので、もう一人の声がそれに答えていたのは間違いなかった。
 -いやいや!確かに、日にちはそうだけど、場所は違うよ。わたしは壁に向かって歩いて追いかけていた。それでも、だれも見えないし、何も聞こえませんでした。 それでも、王子はもう一度言い返していました。
 -その通りだね。君は砂漠の中をぼくの足跡がどこから始まっているかわかるでしょ。君はそこで待つしかないでしょ。ぼくは今夜そこに行くから... わたしは壁から20メートルくらいの所にいたけれど、変わらず、何も見えませんでした。
 ちょっとして、また王子が話し始めました。-君はいい毒をもっているんだよね?きみは確かにぼくを長い時間苦しめたりしないよね?
 -今は、行っててよ... 降りたいから!

 それから、自分で壁の下の方に目を降ろすと、わたしはびっくりして飛び上がった!そいつは、鎌首を王子に向かって立ち上げ、30秒で人を殺せる黄色いヘビがいたのだった。 すぐにピストルをポケットに探して、その後を辿ったけれど、わたしの足音でヘビは、噴水が終わるときのように、砂の中に静かにもぐった。 さほど急ぐような様子もなく、金属のような軽い音を立てて石の間に潜り込んだのでした。
 わたしは雪のように真っ青になった王子が壁から落ちるのを腕で受け止めるのにぎりぎりたどり着いたのだった。 -なんてことだ!君は今ヘビと話していたね!
 わたしは、王子がいつも付けている金色のスカーフをほどきました。そして、こめかみを湿らして、水を飲ませました。もう王子に尋ねたりはしませんでした。王子はじっとわたしを見つめると、腕をわたしの首に回しました。わたしは、鉄砲に打たれて、死にかけている鳥のような、王子の心臓の音を感じていました。そして、王子は言いました。
-ぼくは、あなたの機械の悪いところが見つかって良かったって思ってるよ。あなたは自分の所へ帰れるね...
 -どうして、そんなこと知ってるの? わたしは今着いたばかりで、おおかたの予測に反して、自分の仕事がうまく行ったことを君に知らせようとしてたんだよ!
王子はわたしの質問には、何も答えませんでしたが、こう言いました。
-ぼくも、そうなんだよ。今日、自分の所へ帰りたいとね... でも、嬉しそうではありませんでした。
 -ほんとに遠いのだから... ほんとに難しいのだから...
わたしは、いつもとは違う事が起きるのを感じていました。わたしは、王子を腕の中に小さな子どもを抱くようにしていたけれども、引き留められずに、深淵の中にまっすぐに引き込まれてゆくように感じたのでした。
王子は、遙か遠くに失われたものを真剣に見つめていました。-ぼくはあなたがくれた羊を持っている。羊の入った箱を持っている。それに口輪も...  王子はそれから物憂げにほほえんだ。わたしは長い間待っていました。王子の体が少しずつ暖まって来るのが分かりました。
-君は怖がっているのだね... もちろん、怖いのだ!でも、王子は優しく微笑んだ。 -今晩がいちばん怖いと思う...

 もう一度わたしは元に戻せない感じがしていました。王子の笑い声を聞くことは決してできないという思いには耐えられない事が分かったのでした。王子の笑い声はわたしには、砂漠の中の泉のようなものでしたから。
-君の笑い声をまた聞きたいよ... そう言うと王子は -今夜は、1年目なのです。1年前に、ちょうどこの場所の真上にぼくの星があったのです...
 -それって、ヘビと話したことや会う約束したり星なんかの悪い夢じゃないのか...
でも、王子は何も答えないでわたしに言いました。
-大事な事って、目には見えないでしょ... -それは、そうなんだけど... -この事は花のようです。 もしも、あなたがとある星に探している花が好きだったら、夜星空を見るのが気持ちよくなる。全ての星に花が開いたようです。 
-そうですね... -あなたは夜、星を見たのですね。ぼくの星を探して指さしてあげるにはあまりにも小さいのです。ぼくの星はたくさんの星の中のひとつなんです。それだから、全ての星を見るのが好きになれるのです。星たちはみんなあなたの友達になるでしょう。そこで、ぼくはあなたに贈り物を差し上げましょう。
王子はまた笑った。-わたしは君の笑い声が好きです!-そうなんですよ。これがぼくの贈り物なんです... それは水に似てるでしょう... -何を言ってるのかな?
-ひとびとは、みんな違った星を持っている。旅行家なら、星は案内人だ。他の人にとっては小さな明かりでしかない。また、科学者にとっては、星は課題であり、また、ビジネスマンに取っては金であったりする。でも、これらの全ての星は黙っている。
あなたには、誰とも似ていない星をあげるね。
-君は、何を言いたいの? -あなたが夜、星空を眺めたときに、その星のひとつに僕は住んでいるから、そして、ぼくがその星のひとつで笑っているから、そうすれば、あなたにとっては、全ての星が笑っているようになるでしょう。あなたは、笑うことを知っているたくさんの星を持つでしょう。

王子は、そう言って、また笑った。
 -あなたが慰められるとき(人は誰でも慰められるから)、あなたはぼくと知り合ったことに満足してくれるでしょう。あなたはづっとこれからも友達だから。そして、ぼくと一緒に笑いたくなる。時々窓を開けて、こんな風によろこんでね。...そうすると、あなたの友達は空を見て笑っているあなたを見てとても驚くことでしょうね。そして、友達にこう言えばいい。「そうなんだよ、わたしは星を見ているといつもながら笑えるんだよ。」 すると、みんなは、あなたがおかしくなったと思うよね。ぼくがあなたをからかっているようになることでしょうね...
そして、王子は笑った。-それは、ぼくがあなたに、星の小さな鈴の山の代わりに、笑う鈴をあげてしまったようなものですね。そう言って王子はまた笑いました。それから、王子は真顔になりました。-今夜 ね 来ないでね。 -わたしは、君と別れたりしないよ。-ぼくには気分が悪くなるだろうし... それに、ぼくは、ちょっと、死んだみたいにるなかも知れないし。それだから、見に来ないで。それは罰じゃないのだから... 
 -わたしは離れないからね。でも王子は心配そうでした。 -わたしは言いました。ヘビのせいなんだよ。ヘビはあなたを殺さないかもしれません... でも、ヘビっていじわるだから、遊びで殺すかもしれないよ。
 -わたしは、そばを離れないからね。でも、何かが王子を安心させたのでした。-ヘビも2度目なら毒はないんだよね... その夜、わたしは王子が出発するのを見かけなかった。王子は音もなくいなくなったのです。わたしが、王子に追い付いたとき、王子は意を決して早足で歩いていました。王子はわたしにひとこと言いました。
 -あっ!あなたはそこにいたの... そして、わたしの手を取りました。でも、王子はまた悩んでいました。-あなたはすべてを見ることになる。すると、あなたは苦しくなる。僕は死んだようになるけれど、死なないよ...
わたしは、何もいいませんでした。
-分かるでしょ。あまりにも遠いので、この体じゃ無理なんだよ。重すぎてね。
わたしは黙っていた。-でもそれは捨てられた古い外見のようなものです。古い外見なんて悲しくはないでしょう...
王子はちょっと弱気になっていました。でも、王子は再びがんばっていた。
 

わたしは黙っていた。
-これって、すごく面白いことでしょう! あなたは、5億の鈴をもって、僕は五億の井戸を持つことになるからね... そして、王子は黙った。泣いていたから...
-ここが、そうなんだよ。ぼくを一人にしておいてほしい...

王子は、怖くて立ってはいられなかったのでした。

 王子はまた言いました。 -あなたは、分かるでしょ... ぼくの花のこと... ぼくはあの花に責任があるのです! 花はとても弱くて!うぶすぎるし。生きていくのに4つのとげしか持っていないし...
わたしも立っていられなくて座りました。すると王子が言いました。 
-ほら、これがすべてです。王子はまだ少しためらっていたけれど、起きあがり一歩前に出ました。でも、わたしは動くことができませんでした。
黄色い光の他何も見えませんでした。王子は一瞬動かなくなりました。叫んだりしませんでした。一本の木がゆっくりと倒れるように静かに倒れました。砂の上だったので、物音ひとつもしませんでした。

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