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こっち側とあっち側

先日、大学生から取材を受けた。その中でFMPORTのこと、閉局への思い、そして今、いろいろお話しさせてもらって、最後に聞き手の男子学生さんにこんなことを言われた。

「とてもリスナーに感覚が近いなと思いました」

「YES」と即座に思った。そりゃそうだ、だって私はずっとこっち側にいた、いや今もいるのだから。

ラジオの送り手側(パーソナリティ)を「あっち側」とするなら受け手(リスナー)はこっち側だ。私は恥ずかしながら意識があっち側だったことがない。20年以上喋る仕事をしているのにである。

そもそもこの世界への入り口が、喋り手としてではなく派遣の事務員であったことも大きいと思う。右も左もわからない状態でとりあえず言われるがままにワイド番組のリポーターになり毎日無我夢中だった。自分が送り手になったなんて意識を持つ余裕はなかった。月〜金の帯番組での中継だったこともあり事務仕事の一環のつもりでしかなかった。

リポーター卒業後、様々な番組を担当して16年続く「ナイトアイ」をやることになるわけだが、「ナイトアイ」の放送は週に一回。フリーランスがそれだけで食べていけるわけがない。もともと私にとって仕事=一般事務だったので、求人誌やハローワーク  等で働き口を探し、並行してラジオ出演をする、というスタンスになる。なんだろう、盛り上がっている輪の中に入れなくて、いつも離れたところからひとり輪を眺める感じっていうのかな。

そして何より私がこっち側だと思い続ける最大の理由は、味方がいるからだと思う。FMPORT閉局後、社員だった人から言われた。「営業的にナイトアイは稼がない、だからいつも打ち切り候補番組に挙がっていた。だけど最後まで続いたのはリスナーからの支持が強かったから」

そう、週末の、特に日曜夜はテレビが強い。「地方はラジオといえば朝夕のドライバーズゾーンなんだよ」と、営業的企画書を持っていっても、絶対相手にしてもらえなかった。私の声は届かないのかと落ち込むことも多かったけれどリスナーにはちゃんと届いていたんだ、閉局後、初めて泣いたのはあの時だったかもしれない。

誤解のないよう言っておくが、あっち側の人たちをdisっているのではない、間違ってもそんなことない。むしろ、プロ意識のカケラもない私の方が未熟だ。そして、一流の人は「あっち側」としての高い意識を持ちながら、「こっち側」の感覚を忘れないでいる。

私はどうなったら「あっち側」意識を持てるのかな。仕事が増えたら?喋り仕事で生活が成り立つようになったら?スポンサーがたくさんつくような仕事をするようになったら? わからない。

わからないが、ただひとつ最近わかったことがある。私がこの世界で持ち続けているのは劣等感だとばかり思っていたが、そうじゃない、むしろいつもリスナーと動いている、いやリスナーの声に支えてもらっているという優越感なんだ。  

なんぐさんが書いてた。「リスナーがいなければ、ただの「社会不適合者」って。

いつも救ってくれてありがとう、心からありがとう。あなたに感謝の花束を。


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