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ペテン師鳴き止む

一年を24に区切ったものを二十四節気と言いますよね。もともとは中国で生まれた言葉らしいんですが、大寒とか、立春とかわたくしどもの生活の中でもよく耳にする言葉です。気の利いたカレンダーなんかには時々書いてありますよね。

春分とか秋分とかは祝日にもなっておりますからたいへん馴染み深く、一年を通して季節の移り変わりを楽しむ道標になっています。

二十四節気で言うといまは清明。万物が清く明るく生き生きと見える時期であることからこのような名前がついているということなんですが、自宅のある神田川のあたりでは、今時期川に沿って桜が大変綺麗に咲いておりまして写真撮影の見物客であふれております。まさに清明!

それから、最近知ったことなんですが、二十四節気をさらに三分割したもので、「七十二候」というものがあるそうです。一年で割ると4~5日ごとに切り替わり、中国・日本の人たちの季節に対する敏感さを実感させられます。農林水産省のホームページなんかでは、トップページでこの七十二候が確認できて、当然農は季節や旬というものに色濃く影響されますから、このように七十二候を意識する場面も多いのかと思います。

それで、七十二候で言うといまは「玄鳥至」、「げんちょういたる」と読むそうで、ツバメが南の方からやってくるという意味らしいんですが、明日4月9日ごろまでをそういうふうに呼んでいる、ということです。明後日ごろからはこれが「鴻雁北(こうがんきたす)」、ガンが北へと渡っていくというものに切り替わるのだそうです。

この七十二候、鳥とか虫とか花とかがよく登場するんですが、ざっと眺めて特に好きだったのが「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」、モンシロチョウの幼虫が羽化する時期という意味なのですが、だいたい季節が春分に切り替わるころ、3月半ばから20日ごろを言うそうです。

この七十二候、眺めているだけでも季節の移ろいを細かく感じることができて楽しいので、みなさんの誕生日とかがどれにあたるか等ぜひ見てみてほしいんですが、相当昔に考案されたものだということで、当然現代社会ではあまりなじみのない言葉もちらほらと見受けられます。

例えば「蟋蟀在戸(しっそくこにあり)」。これはキリギリスが家の中で鳴き始める時期、具体的には10月18日~22日ごろまでを指すんですが、キリギリスのことを蟋蟀と呼ぶ人は令和の時代にはほとんどおらんのではないかと思うんです。キリギリスを意識することもほぼないので、七十二候が時代に即したものになっているかというと、必ずしもそうではない気がしてきます。

そうすると、現代に即した七十二候を作ってみたいという気持ちになりますよね。ならないですか?そうですか。おれはなりましたんでね。少し考えてみたんです。それが表題「ペテン師鳴き止む」です。

今時期ですと、新年度が始まって一週間というタイミングですが、フレッシャーズなんかの歓迎ムードがひとまず落ち着いて通常営業モードに移行し始める時期ではないでしょうか。先週くらいまでは、SNSなんかを見ていますと見るからに意識の高そうなクリエイター風の人や、歌川広重@イラストレーターの人みたいな名前のアカウントがこれから社会に出ていくルーキーたちに向けて社会の荒波をサバイブするための講釈を垂れている風景が頻繁に観測されました。たとえば、

「これから社会に出ていく人たちへ。仕事はこれからの人生の時間の大半を占めるけど、たかが仕事です。辛くなったら全然逃げていいし、行きたくない飲み会には行かなくてもよい。会社の中にいると忘れてしまいがちだけど、あなたは一人の大人として自由であることを、時々思い出してください。ただし、自由には責任が伴っていて~~~云々云々」

みたいなノリのポストのことです。

ポストを見ると平日の昼間など、一般的な社会人は既に働いている時間帯に投稿されているものもちらほらと見受けられます。つまり、勤務時間中に自分の仕事そっちのけで若者に向けて説教を打ち込んでいるということですよね。

「よーし、今から仕事をうっちゃらかして迷える新社会人に人生の先輩として金言を授けちゃうぞ!」ってことですよね。そんなことを考えている人間は全員バカでペテン師である!ということをおれはかねてから主張しておりまして、そういう人間は居酒屋とかでみんなに聞こえるような大きい声で、これからアッコさんとザギンでシースーとか、ローンチがどうのこうのとか言っているに違いないのです。信用してはいけない。

それで、今週になるとそういった声がとんと見られなくなりますよね。これは先週に新人に講釈を垂れるためにうっちゃらかした仕事の納期がいよいよ差し迫ってきたから、仕方なく仕事に着手し始めるという事情によるものと見て間違いないと踏んでおるんですが、すなわち「ペテン師鳴き止む」ということでございます。「納期始めて迫る」でもいいんですが、俺的七十二候で言うと、そういうことになります。

ただこれはエッジが効きすぎているというか、個人的な偏見がものすごい。もはや単なる偏見では片づけられない、なにか恨みつらみのような感情も顔を覗かせていますから、おそらく浸透しない。おれはもっと一般的なみんなに広く受け入れられる七十二候を考えたい。そしてこれを「サラリーマン川柳」よろしく「サラリーマン七十二候」として、令和を生きる企業戦士に広く受け入れられるものとして編纂したい!という思いも湧いてきます。

それでいうとキックオフミーティングが落ち着き始める時節柄、「キックオフミーティング止む」とか、それから人事異動やフレッシャーズ諸君の入社に伴い新しい名刺が支給され始める時節から、「名刺始めて届く」あたりがいいのかな、なんて思っておりますがね。仕事そっちのけでそんなことばかり考えております。春ですね!そんな感じです。


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