ワンパンマンのS級ヒーロー・キングから考えるChatGPTの威力
読者の皆様は『ワンパンマン』をご存じでしょうか? 『アンパンマン』ではなく『ワンパンマン』です。
以下の記事を書いた際に触れましたが、筆者は海外での生活が長く、海外での日本アニメの人気には詳しいです。しかし、日本国内での流行にはあまり詳しくありません。
20年前なら『ちびまる子ちゃん』、『サザエさん』、『ドラえもん』などの視聴率が30%を超えていたので、視聴率を調べるとどれくらい知名度があるか分かり易かったです。ところが、最近はNetflix,Amazon Prime Video,HuluなどのVOD(ビデオ・オン・ディマンド)で番組を観ている人が多いので、日本でどれほど『ワンパンマン』の話が通じるか把握し辛いです。
ワンパンマンにも、ロボットやサイボーグが登場しますが、本稿で取り上げる『キング』は普通の人間です。
ワンパンマンをご存じない方のための簡単にあらましを説明すると、ワンパンマンはヒーロー漫画で、多くの悪役とヒーローキャラクターが登場します。ヒーローには、S級、A級、B級、C級の格付けがあり、S級ヒーローとしては、スーパーマンのような戦闘力を持つ人間、超能力者、武術家、そして戦闘機や戦車を凌駕する武力を持ったロボットやサイボーグなどが登場します。
S級ヒーローの中でも『キング』というキャラクターは特異な存在です。彼は普通の人間であり、特別な能力や戦闘技術を持っていません。ところが、様々な誤解や偶然から彼はS級ヒーローとして『地上最強の男』と評価されています。
キングをS級ヒーローとして認定したのは、ヒーローを統括する『ヒーロー協会』です。しかし、実際にはキングは一度も喧嘩をしたことがないゲーム好きのオタクです。それにも関わらず、ヒーロー協会とマスメディアが、彼を『地上最強の男』と称賛しているため、大衆は彼が実際にそのような存在であると信じています。
ワンパンマンの『S級ヒーロー・キング』を『ChatGPT』に置き換えると、ChatGPTの実力がどれほどのものか分かり易いので、本稿ではキングの話をしました。
ChatGPTは文章力や企画力などで評価されていますが、その評価は主観的で、使い方や利用者のスキルによっても変わります。企画のアイディアを出すツールとしては優れていますが、そのアイディアが上手く行くかどうかは、実行する人の能力や運によります。
ChatGPTも翻訳機能を持っていますが、Google翻訳やDeepL翻訳などの専門の翻訳ツールと大差ありません。
アルゴリズム取引や企業の格付けなどの分野でも、AI技術は利用されていますが、ChatGPTはこれらの目的で使用されるわけではありません。
顔認識や感情認識、音声認識専用のAIが多数存在しますが、ChatGPTの主な機能は文章による感情分析などの言語処理です。
プログラミング言語も言語なので、ChatGPTやその他のLLMでも、人間の言葉をもとに簡単なプログラミングを作成することはできますが、システム設計や要件定義から自動的にプログラミングする機能は持っていません。
現在、様々なAIが組み合わされてAGI(汎用性人工知能)が構築されていますが、ChatGPTの役割は主に自然言語処理です。
ワンパンマンにおいて『S級ヒーロー・キング』は、非常に重要なキャラクターですが、何でもできるヒーローではありません。
ChatGPTやその他のLLMに期待されているのは、現時点での自然言語処理能力ではなく、今後、他のAIなどと組み合わせた時に、どのようなパワーを発揮するかです。
AI倫理の観点での懸念事項は、ChatGPTやLLMが出力する文章(ディープフェイクニュースや誤情報など)が、前述の金融・証券取引AIや、格付けAIに影響を与えて世界恐慌の原因や、世界大戦の引き金にもなり得ることです。
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