見出し画像

MENA(中東・北アフリカ)専門家によるイラン解説 IX

 ヨーロッパとアジアが接続された大陸は #ユーラシア大陸 として知られています。この事実は小学校の高学年で習いますが、中学の地理や理科で、 #大陸移動説 #ユーラシアプレート #アラビアプレート の衝突帯が #ザグロス山脈 であることも学んでいるのではないでしょうか?

ザグロス山脈

 教育カリキュラムは、通った学校や『ゆとり教育』の導入前後で大きく異なるため、ここで #イラン #縫合帯 について改めて説明します。

 人類最古の文明である #メソポタミア文明 は、現在のイラクからイランの西側で発生しました。この文明はチグリス川とユーフラテス川の恵みによって、人類が都市文明を築く基盤を作りました。これも小学校で学ぶ内容ですが、詳しく説明すると、これらの川の水源は、 #ペルシャ湾 からの湿った空気がザグロス山脈で結露し、降雨されることによります。この縫合帯が人類の文明の発展に大きく寄与していることが分かります。

縫合帯(Suture Zone)とは

 縫合帯とは異なる #大陸プレート が衝突し融合して新たな大陸を形成した境界領域のことです。この地域では大陸の衝突による圧力と熱で岩石が変形や変質を起こし、山脈が形成されることが多いです。また、地殻が厚くなる特徴があり、豊富な #鉱物資源 が埋蔵されていることが知られています。

イランの縫合帯

 イランはユーラシアプレートとアラビアプレートの衝突帯に位置し、この縫合帯はイランを横断しています。この地域はザグロス山脈として知られ、地質学的に多様な岩石が存在します。イランは石油や天然ガスの豊富な埋蔵量で知られていますが、これ以外にも鉄鉱石、銅、亜鉛、クロムなどの金属鉱物資源が豊富です。また、美しい宝石として知られるトルコ石(ターコイズ)の主要な産地の一つでもあります。

 イランの経済はこれらの資源に大きく依存しており、地質的な特性が国の産業や政策に直接的な影響を与えています。さらに、イランには塩湖が多数存在し、これらの #塩湖 #リチウム などの重要な鉱物資源の潜在的な採掘場所として注目されています。特に、世界的にリチウム需要が高まる中で、イランの塩湖はリチウム生産の有望な源と見なされており、将来的には電気自動車産業などへの影響も期待されています。このため、リチウム採掘はイランの新たな経済的機会を創出する可能性があります。

世界の大陸縫合帯

 世界には多くの縫合帯が存在し、それぞれ独自の地質学的特徴を持っています。例えば、 #ヒマラヤ山脈 #インドプレート #ユーラシアプレート の衝突によって形成された縫合帯であり、この地域の圧力と熱による地質学的活動は世界で最も活発な部分の一つです。また、 #アンデス山脈 #南アメリカプレート #ナスカプレート の衝突によるもので、重要な鉱物資源を含んでいます。

日本の縫合帯

 日本列島は、複数のプレートが衝突する複雑な大陸縫合帯上に位置しています。具体的には、 #北アメリカプレート #ユーラシアプレート #フィリピン海プレート 、そして #太平洋プレート の境界にあり、これらのプレート活動により、多様な地形や地質が形成されています。

 多くの日本人は日本が地下資源に乏しい国だと誤解していますが、実際には縫合帯に位置する日本は、金、銀、銅、亜鉛などの豊富な資源を有する世界屈指の資源埋蔵国です。かつては #佐渡金山 が世界でも有名な金山として知られていました。また、 #足尾鉱 山のように鉱害事件を切っ掛けに、元衆議院議員の田中正造が日比谷で明治天皇に直訴しようとしたことは小学校の授業で習っているはずです。

 これらの事例からも、日本には質の高い銅脈が存在することが分かります。 #人魚峠 にはかつてウラン鉱山が存在しました。さらに、ニッケルやコバルトを含む #熱水鉱床 も世界的に有名です。また、 #南関東ガス田 #新潟県内油ガス田 には、大量のガスや石油が埋蔵されています。

日本の地下資源採掘と環境問題

 日本では豊富な地下資源がありながら、その採掘が進まない主要な理由の一つが #環境問題 です。高い人口密度と厳しい環境規制、地理的な災害リスクが大規模な採掘活動に与える影響を懸念しています。例えば、南関東ガス田のガス生産は600年にわたって採掘することが計画されていますが、少量のガス採掘でも千葉県の広域で地盤沈下を引き起こしています。このような天然資源の採掘に伴う環境破壊は、世界共通の課題です。日本が自国の天然資源を採掘せずに他国から輸入する現状は、実質的に公害の輸出とも言えます。

つづく…

#武智倫太郎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?