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御用学者列伝:東大発ベンチャーの闇 I

 このnoteを愛読していただいている皆さまは、私が『本は読むものではなく書くものである』と頻繁に述べているのをご存じかと思います。これは、自分が購入した図書にかけた費用と、自著から得られる印税を比較した場合、印税の方が圧倒的に多いという事実を指しています。

 日本では最近、情報のインプットとアウトプットに関する議論が盛んになっています。しかし、プロの作家や文筆家にとっては、図書の購入費用よりも自著からの印税収入が多いのは自然なことです。

 さらに、私は『東京大学は学ぶ場所ではなく教える場所である』という信念を持っています。この信念は、東京大学大学院で産学連携アドバイザーなどを務めた経験から生まれています。

 私は海外での生活が長いため、日本語より英語の方が得意、或いは、便利です。そのため、学術論文は基本的にすべて英語で執筆しています。国際科学論文の90%以上が英語であり、日本語で学術論文を発表する日本の科学者は極めて稀です。日本語で書かれている論文でも、文末の引用文献を見ると、英語で発表済みの国際論文を自ら日本語に訳していることが多いです。

 論文の評価基準は多岐にわたりますが、査読を通過していない、或いは、査読を通過することを目的としていない論文は、私にとって単なる学術的エッセイや科学的読み物に過ぎません。但し、科学的読み物にはその分野における価値が存在し、学術界や科学の最先端で何が起こっているのかを多くの人々に平易な言葉で説明することは極めて重要です。

 大学教授や研究者にとっては、論文執筆は業績を示す重要な指標です。査読プロセスもまた、その業績評価において重要な役割を果たします。私自身も多くの論文査読を経験してきましたが、さまざまな理由で査読を拒否することもあります。

 他の研究者が行った競争的研究費の申請審査にも携わる機会も多く、明らかに実現不可能な研究には、0点を付けたことも少なくありませんが、その一例がユーグレナの研究です。

東大発ベンチャーの闇

#ユーグレナ 社は東京大学発のベンチャー企業として知られ、東京証券取引所一部に上場しています。しかし、ミドリムシとしても知られる #微細藻類 のユーグレナが世界の #エネルギー問題 #食糧問題 を解決できるという同社の主張は、現実的ではないと長らく指摘してきました。

#クロロフィル #光合成効率 を基にすると、ユーグレナがソーラーパネルの効率を上回ることは不可能です。培養に必要な大量の水、適切な温度条件、化学肥料やミネラル、糖分などを考慮すると、ユーグレナによる問題解決は非現実的です。

 クロロフィルによる太陽光エネルギー変換効率の理論値は約28.2%ですが、実際には光合成の内部メカニズムや光吸収の不完全さによるエネルギー損失があり、実際の変換効率は8%程度まで低下します。全生育期間を通じた太陽光エネルギー変換効率の実質的上限は約1~2%になります。

 ユーグレナの光合成率は光の強さ、CO2濃度、温度、培養条件など多くの要因に影響されます。研究室内の最も効率的な条件下でも、光エネルギー変換率は約3%から6%に留まり、これはソーラーパネルの約20%に比べて大幅に低い変換率です。さらに培養密度の増加は光合成率の低下を招きます。ユーグレナを培養液から分離して、油を抽出する過程で必要なエネルギーも含めると、エネルギー収支が成立しないことが明白です。

 日本国内ではソーラーパネルの設置に適した土地が限られており、自然災害による損傷リスクも高いため、ソーラーパネルよりも太陽光エネルギーの変換効率が低いユーグレナによるエネルギー生産は非現実的です。

 そのため、同社ではマレーシアでの培養を検討していましたが、必要な水資源や設備を設置する場所が確保できる目途は立っていません。ちなみに、マレーシアでのパーム油生産には九州と四国の面積を合わせた面積を上回る600万㌶のパーム畑が使用されており、パーム栽培が深刻な熱帯雨林の環境問題を引き起こしているます。

 日本国が必要としている石油に匹敵する熱量のパーム油を生産しようとすると、最低でもマレーシアの国土面積3300万ヘクタールの2倍程度の面積が必要となります。

 九州以上の面積を必要とする大規模なコンクリートプールの建設や、培養タンクの設置は、エネルギー収支を考慮する前に、非現実的であるとの指摘がなぜなされないのか理解に苦しみます。

#燃料にミドリムシは入っていない   #バイオベンチャーの雄 『ユーグレナ』の現在地 新規事業でも巻き返せるか!?【経済記者インサイト】(2024年3月29日)

#武智倫太郎


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