風くんと、待ち合わせ。
三ヶ日は出掛けられなかったから、
一週間遅れの初詣になっちゃった。
キミに着物姿で会うの初めてだけど、何て言ってくれるかな。
待ち合わせの駅前。
あ、いるいる。
寒そうにコートのポケットに手を突っ込んで、たんたん足踏みしてる。
紺のパーカーに黒のニット帽。
いつものキミのかっこだけど、流石にコート着てきたんだね。
コートにもフード付いてるから、首回りがわちゃわちゃして大変なことになってる。
小さく手を振ってみたけど、見えてるかな?
ふふ、今ごろあわてて眼鏡かけてる。
キミは、ちょっと目を丸くして、すぐにそっぽを向いちゃった。
「お待たせ」
どうしてこっちを向いてくれないの?
ちょっと赤くなってるよ。
さ、いこうよ。
あ、寒いと思ったら、雪になったね。
アップにしたうなじに雪が降りかかって冷たいな。
ふと、空を見上げたキミ。
背の高いキミの横顔は、ずっと上の方。
ちらっと横目で私の方を見て、キミは、ふわりとコートの左側を広げてそっと肩を包んでくれる。
いつもの香水の匂い。キミの体温で暖まった優しい香りがふわっと広がる。
キミに抱きしめられたみたいで、ちょっと照れくさい。
昔からキミを見守ってくれてる産土神様がいらっしゃる、小さな小さな神社。
小さなキミがここにいたんだね。
「ぶ?ぶぶす??」
う、ぶ、す、な。
「うぶ?ふぶすな???もう、わし、わからん💦」
うん、いつものキミだ。
そんなとこ、好きだよ。
石段を登る。
そっと差し出してくれたおっきな手。
思わず、顔を見上げると、またそっぽ向いちゃった。
手を握り返すと、ちょっと驚いた顔で「冷てぇ」って。
私の手、冷たかったね、ごめん。
手を引いてくれてありがとう。
人影がまばらな境内。
キミの柏手がすごく大きく響いて、びっくりして横を見る。
ちょっと俯いて手を合わせてるキミ。
綺麗で長くてまっすぐな指。
右手の小指が少し曲がってるのは、中学の部活のバスケで突き指したからって、教えてくれたよね。
ふわふわの髪の毛
ちょっと伸びたおひげ。
閉じた瞼。長い睫毛が下を向いてる。
さっきまでの雪雲から、太陽が出てきた。
キミの向こう側に太陽が見える。
太陽越しのそんなキラキラの横顔を見てると、
ふと気づいたみたいにキミはこっちを
向く。
今度は、私がそっぽを向く番。
でも、見られちゃったかな、ちょっと泣きそうになってたの。
キミは何をお願いしてたの?
私の願いはキミに出会ってから、いつも同じ。
『神様、どうぞ、私の大切なこの人の笑顔をお守りください、ずっとずっと、、、。』
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