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海とハリガネムシ

「ハリガネムシって知ってますか?、カマキリの中にいる寄生虫なんですけど」

撮影終わり、夜の海で風に吹かれながら彼女はポツポツと言い出した。

彼女は、私が去年の春から撮り続けている被写体で私の表現活動にはなくてはならない方のひとり。
彼女が、海に行きたいと言ったので大磯まで行って撮影していた。

いつも消えそうな雰囲気の彼女。


彼女は時々、面白いことを言うのだ。
興味深いというかなんというか。

で、今回はハリガネムシ。

「カマキリの中にはハリガネムシが寄生していて、カマキリを水辺に誘導するんです。
私の中にも、きっとそいつがいるんです。」

そうか。だから消えそうなのか、となんだか腑に落ちた。


夜の海。暗闇の中。
波がかき消す本音、風が私たちを包む。
ファインダー越しで彼女に吸い込まれるような感覚。

「私女の子の中であなたが一番好きかも」
私は言った。
「えー嬉しい、ありがとうございます」
と彼女。

彼女は知らない
私にとって、彼女がハリガネムシなのだ。

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