日本共産党にとって「基本政策」とは何なのか・追記あり


<変更履歴>
2023.9.11 8:15 イメージ図修正
2023.9.11 13:00 字句修正
2023.9.12  20:30 追記
  「国民連合政権」の一点での一致点と共産党の「基本政策」
  「野党連合政権」での共通政策と共産党の「基本政策」
2024.1.6 イメージ図修正

「基本政策」をめぐるイメージ図

「基本政策」と「綱領の根幹」

松竹氏は、『シン・日本共産党宣言』や自身のブログなどで、日本共産党に核抜き専守防衛や自衛隊合憲を「基本政策」にしてはどうかと提案しています。当然、松竹氏はそれは、党綱領の範囲内での提案だと言っています。

一方、日本共産党が松竹氏の意見を批判するとき、"安保条約と自衛隊合憲を「基本政策」にせよと迫り、綱領の根幹や根本を否定するものだ"と主張しています。

松竹氏を批判するのであれば、"松竹氏は○○を基本政策にせよと言うが、わが党は○○を基本政策とし、綱領の規定の○○に反するから受け入れられない"と主張すればよさそうなのですが、そうは主張しないのです。"安保廃棄と自衛隊の段階的解消は綱領の根幹・根本であり、それを否定するものだ"と主張します。

そもそも、日本共産党の文献で「基本政策」という用語はほとんど目にしません。
一方、共産党以外の政党やマスコミは、ひんぱんに「基本政策」の一致がない連合政権はありえないと書きますが、当たり前すぎるのか、「基本政策」の定義を示すことはありません。

立憲民主党のWebサイトには「綱領」と並んで「基本政策」が掲げられていますが、基本政策とは綱領の中の主要な政策を列挙したものと思われます。ただし、立憲民主党はかつての社会党のように革命を目指す政党ではないので、その綱領には、革命の獲得目標や将来像、革命に至る中間段階での獲得目標、当面する行動綱領が体系的に書き込まれているわけではありません。
綱領も基本政策も、その内容は、あくまで現時点での当面する行動綱領にしかすぎないものなので、綱領=基本政策といっても問題ない性格の文書です。

日本共産党にとっての「基本政策」

そこで、日本共産党の「基本政策」とは何かを調べてみました。
結論からいうと、日本共産党はみずからの「基本政策」とは何かを現在明らかにしていないように見受けられました。
もちろん日本共産党は、綱領から大会決定、選挙政策まで、大量の体系だった戦略・戦術・政策を確立していますので、「基本政策」という名の文書がなくても、それに代わる何かがあればよいのです。

「基本政策」なるものを作成していないが、綱領のなかのこれとこれがそれに相当するなどと言ってくれればよいのですが、そう言ってくれる文書が見つかりません。

一方で、日本共産党は自ら「基本政策」という用語を使ってたりもします。日本共産党は、「国政選挙での選挙協力は内政・ 外交の基本政策の一致を前提にしてきました」(『日本共産党の百年』、2014年のWeb記事、2000年の志位氏、1998年の不破氏)と言っています。
しかし、webサイトをみてもやはり現在の「基本政策」が何なのかはっきりと書かれていないのです。

この『百年』の記述から読み取れることは、共産党は「基本政策」を綱領の意味で使っていないということは確実です。綱領が一致すれば別々の政党である必要はないのですから。

国政の基本問題についての一致する共同目標だった「革新三目標」

過去の『前衛』などを検索した結果、いま明確に確認できることは、1972年に、「国政の基本問題についての政治上の一致、責任ある共同目標の設定が必要」としたうえで、革新三目標に賛成するすべての政党を結集した民主連合政府の樹立を呼びかけていたということです。「国政の基本問題についての政治上の一致」とは「基本政策の一致」と同義に考えて差し支えないでしょう。

革新三目標とは次の3項目です(85年11月の第17回大会で改定)。
① 日米軍事同盟と手を切り、真に独立した非核・非同盟・中立の日本をめざす。
② 大資本中心、軍拡優先の政治を打破し、国民のいのちとくらし、教育をまもる政治を実行する。
③ 軍国主義の全面復活・強化、日本型ファシズムに反対し、議会の民主的運営と民主主義を確立する。
ですので、旧綱領であった当時は、革新三目標が「基本政策」だったと言っ
て間違いないでしょう。

たたし、ここでいう「民主連合政府」とは旧綱領時代のもので、この「民主連合政府」は、当面する革命である反帝・反独占の民主主義革命を行う民族民主統一戦線政府を樹立する以前の、中間段階の政府でした。

現綱領では、当面する革命を行うのは「民主連合政府」となっています。この政府が行う民主的改革は、現綱領に列挙されています。
この綱領で列挙された政策が「国政の基本問題についての政治上の一致、責任ある共同目標」(いわゆる「基本政策」)だと考えているのでしょうか。しかし、それでは、共産党綱領の当面する革命を、他党との共同目標に設定することになってしまいますから、それはないと思われます。

現綱領における「さしあたって一致できる目標」

現綱領では、革命を行う政府樹立の前の中間段階として、「国民の利益にこたえ、現在の反動支配を打破してゆくのに役立つかぎり、さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府をつくる」と規定されています。
そして、「さしあたって一致できる目標」とは、綱領に列挙されている「民主的改革の内容の主要点のすべてではないが、いくつかの目標では一致し、その一致点にもとづく統一戦線」と綱領に書かれています。

しかしながら、2023年現在、「いくつかの目標では一致」する「一致点」とは何かが、かつての革新三目標のように共産党側から明確に提示されていないように思われます。

いいかえれば、現在、日本共産党は「基本政策」に相当するものが未整理状態にあると言えます。
党綱領で列挙する「民主的改革の内容の主要点のすべてではないが、いくつかの目標」を取捨選択し、個々の目標について、数年でめどが立つような政策にブレークダウンする作業になるかもしれません。

これらの「基本政策」に相当する政策の整理作業をせずにいると、党綱領で規定する「民主的改革=民主主義革命」が「基本政策」となってしまいます。
それは結局、民主主義革命の路線に一致できる党派や人びととだけしか統一戦線をくめないことになります。

<2023.9.12追記>

「国民連合政権」の一点での一致点と共産党の「基本政策」

一方、2015年9月に日本共産党が提唱した「戦争法=安保法制廃止の国民連合政府」で掲げた目標は、共産党にとって「基本政策」だったのでしょうか。

この政府は「戦争法(安保法制)廃止、立憲主義をとりもどすの一点で一致」する政府であり、「さしあたって一致できる目標の範囲」の政府ではあるものの「暫定的なもの(戦争法廃止という任務を実現したあとは解散・総選挙)」でした。
本来なら「国政選挙での選挙協力は内政・ 外交の基本政策の一致を前提」であるところ、「立憲主義が破壊されるという非常事態のもとで、立憲主義をとりもどすという一点での(選挙)協力」を行うことにしたのです。
以上のとおり、当然ながら、「戦争法=安保法制廃止の国民連合政府」で掲げた一致点だけでは、共産党にとって「基本政策」とは言えません。

「野党連合政権」での共通政策と共産党の「基本政策」

<2023.9.26以下追加>
続きは、
「日本共産党にとって「基本政策」とは何なのか その2」へ
https://note.com/aikawa313/n/ncc743f3b7416

<2023.9.26 以下削除>

その後、国政選挙における市民と野党の共闘と連携が進められてきました。
そして、「(2021年10月の)総選挙に向けて、党は、9月8日に他の野党と市民連合の共通政策に署名するとともに、9月30日、立憲民主党との党首会談(志位和夫委員長・枝野幸男代表)をおこない、『新政権』において『合意した政策を実現する範囲での限定的な閣外協力』をおこなうことを合意しました。野党共闘がついに政権問題での合意に」(『日本共産党の百年』)いたります。

この政権についても「さしあたって一致できる目標の範囲」の政府であることは確かです。
そして、この野党連合政権を、「暫定的」でなく「持続的」(「政権構想と統一戦線論の決算」)なものと日本共産党が位置付けているのであれば、そこで合意した「共通政策」は、日本共産党の「基本政策」と同等と考えてよいでしょう。
(もっとも、2021年の政権合意は「合意した政策を実現する範囲での限定的な閣外協力」ですので、共産党の考える「基本政策」のレベルに達していないことは確かです。)

しかしながら、この政権を日本共産党は「暫定的」と位置づけているのか「持続的」と位置付けているのかは、明確には表明されていません。
志位和夫『新・綱領教室』(2022.4)では、「2021年の総選挙では…実現できませんでしたが…安保法制廃止・立憲主義回復をはじめとする緊急的課題実現のための野党連合政権をつくることは、日本の政治にとって必然的発展方向」(p55)、「今回の提案は、一過性の提案ではありません…引き続き、粘り強く追求していきたい」(p118) と書いています。「緊急的」という表現は、共産党の考える「基本政策」とは一致していないという含みをもたせているのでしょうか。一方で「必然的発展方向」「引き続き…追求」との表現は、「持続的」な政権であるという含みをもたせたいのでしょうか。

いずれにしても、これまでの「市民連合」などとの共通政策合意の過程にしても、共産党は受け身であるように見えます(見えるだけかもしれませんが)。
1970年代の「民主連合政府綱領についての日本共産党の提案」のような攻勢的な提案を共産党側からおこなっていないため、各党・各団体との政策協議の結果として公表された共通政策がどこまで妥協・譲歩したものなのかも判断ができません。
野党連合政権は「日本の政治にとって必然的発展方向」なのであれば、なおさら、野党連合政権に提案する共産党の「基本政策」を早々に明確にしていくべきでしょう。

<追記ここまで>

日本共産党が松竹氏を批判するときは、自衛隊の段階的解消の第1段階において打ち出す「〇〇三目標」または「野党連合政府綱領についての日本共産党の提案」のようなものを提示したうえで、松竹氏を批判しないと建設的な議論にならないでしょう。
また、松竹氏にあっては、日本共産党が党内用語として常用していない「基本政策」という用語を使って自説を展開するのであれば、その定義づけを明確にしたうえで提案を行うことで、議論の土台を共通化させることに役立つのではないでしょうか。

引用:松竹伸幸氏がいう「基本政策」

共産党が2000年の22回大会で、自衛隊を解消するための3つの段階を打ち出したことである。そこでは、日米安保を解消するのは第2段階で、自衛隊の解消は第3段階とされている。つまり、第1段階は、日米安保も自衛隊も存在することが前提となっていることだ。その段階では、軍縮や海外派兵阻止などを政策として掲げていることである。
その立場に立って、第1段階での政策を、基本政策だという位置づけにすれば、民進党との接点が生まれるように思える。少なくとも綱領のなかには、安保と自衛隊解消が基本政策だと書いているわけではないし、第2段階(安保廃棄)に至るのだって何十年もかかるだろうから、それほどまでの長期間に通用する政策を基本政策(当面の基本政策というのでも構わない)と位置づけても、全然おかしくない。もし、民進党が求めているように、綱領にそういう記述を入れられるならベストだ。
問題は、基本政策というからには、その政策が連立のための戦術というものでなく、国民の命にとって大事だという思想がなければならないことだ。だけど、参議院選挙の最中に出た法定ビラでは、憲法九条を守ることも国民の命を守ることも大事だという文脈で自衛隊は解消しないと明言したわけだから、乗り越えるべきハードルは高くないように感じる。

2016.9.21 編集長の冒険「『第一段階も基本政策』とする以外にないでしょ」
http://www.kamogawa.co.jp/~hensyutyo_bouken/?p=2529

基本政策とは何かという問題ともかかわるが、私に言わせるとそれは、現在の日本が直面する問題を解決する政策のことであって、綱領の第一段階がそれに当たるそれ以降は、基本政策というより、理念の問題になる。軍事力のない世界は、崇高な理念として位置づけるならば、他党にとっても「そんな考え方もあるよね」となるんぼではないか。
もし野党共闘を大切にし、日米安保堅持を掲げる野党政権が続いても、共産党がそれに「閣外からの協力」をするというなら、そこまで踏み込んで他の野党や国民に説明しないと、「野合」批判は収まることはないだろう。連合の「基本政策が異なる政党だからダメ」という態度を変えることもできないだろう。
私にとっては、この転換は、すでに綱領に書かれていることの解釈の問題であって、簡単なことである。しかし、安保の即時廃棄、自衛隊解消こそが基本政策だと解釈してきた党指導部にとっては苦痛を伴うものだ。しかし、この転換の理論的な基礎も、2004年に綱領を改定したときに与えられていたものである。

2022.02.16 松竹伸幸オフィシャルブログ「野党政権と共産党綱領の諸問題・5」
https://ameblo.jp/matutake-nobuyuki/entry-12727515080.html

共産党の綱領は、通の人にしか分からないことだが、じつは柔軟な政権共闘の考え方をしている。基本政策で一致する政党と「民主連合政権」の樹立をめざすが、基本政策が一致しない政党であっても、当面の大事な緊急課題で協力し合えるなら、暫定的な政権を組むことが想定されている。(p77)

これだけの譲歩をしたはずなのに、いまだに他の野党からは引き続き「安保・自衛隊という基本政策が異なるので共産党は政権共闘の対象にならない」と言われている。共産党の側も、それに反論するどころか、基本政策が違うことを堂々と認め、「違いは野党連合政権に持ち込まないから政権共闘をしよう」と呼びかけている。(p85)

共産党自身、野党共闘で政権をつくっても、安保・防衛政策をめぐる独自の立場を持ち込むことはしないと言明しているのは、自衛隊活用や安保条約の発動は基本政策ではないとみなしているからである。(p117)

…第一段階から第三段階まで分けているのは、自衛隊解消という基本政策を実現する段取りを示すためであって、それぞれの段階で独自の防衛政策が求められるという視点が、現状では欠落しているのである。その結果、せっかく段階論を採用し、安保も自衛隊も堅持する第一段階という考え方をとって他の野党との接点をつくりながら、しかも党員には評判の悪い安保・自衛隊活用論にまで踏み込みながら、基本政策は安保廃棄・自衛隊違憲解消のままなのだ。(p118)

「核抑止抜きの専守防衛」は、そこを転換する。安保も自衛隊も維持する基本政策を打ち出すことで、他の野党との間で議論のための共通の土俵ができるのだ。(p118)

私の立場が現在の共産党と異なるのはどこか。共産党は第一段階で安保安保や自衛隊の存在を認め、その活用も容認するが、それを基本政策とは位置づけないことだ。共産党の基本政策は、安保廃棄、自衛隊違憲解消なのである(ただちに実現を求めないとはいえ)。それに対して私は、安保と自衛隊の維持を前提にした「核抑止抜きの専守防衛」を基本政策としたいと考える。
大会決議の第一段階を基本政策とはしないという考え方は、大会決議にも綱領にも明記されているわけではないので、私の提起が綱領、大会決議に反しているとまでは言えない。(p174)

2023.1.20 松竹伸幸『シン・日本共産党宣言』

私と志位氏の違いは、おそらく一つしかありません。一方の志位氏は、第一段階において侵略されたら日米安保も自衛隊も使うと明言しているが、共産党の基本政策はこの段階でも安保廃棄と自衛隊解消だとしています。他方の私は、そういう立場では国民に説明がつかないので、安保も自衛隊も使うというなら、それにふさわしい政策を確立すべきだと考えている。それが「核抑止抜きの専守防衛」なのです。

2023.02.27 松竹伸幸オフィシャルブログ「外国特派員協会での冒頭スピーチ(2023.2.27)」
https://ameblo.jp/matutake-nobuyuki/entry-12791264458.html

結局現在(2023年6月)は、(共産党は)第一段階の基本政策も安保廃棄と自衛隊廃止という先祖返りをしてしまったので、よけいに政権協力はあり得ない。泉さんは、率直にそのことを指摘すればいいだろう。

2023.06.24 松竹伸幸オフィシャルブログ「立憲・泉さんへ候補者調整問題で助け船」
https://ameblo.jp/matutake-nobuyuki/entry-12809213459.html

引用:日本共産党がいう「松竹氏の『基本政策』」

松竹氏は、19日の記者会見で、2021年の総選挙で日本共産党が「安全保障問題、とりわけ自衛隊問題での野党間の違いを克服できなかった」などとして、それが野党共闘の失敗の原因であるかのようにいいます。そして、「『政権共闘の議論の対象になる』というぐらいのもの(政策)は提示する必要がある」として、安保・自衛隊政策を転換するよう主張しています。 それでは提示すべき政策とはなにか。松竹氏は新たに出版した本のなかで、次のようにのべています。
「共産党が現段階で基本政策として採用すべきだと私が考えるのは、結論から言えば、『核抑止抜きの専守防衛』である。日本は専守防衛に徹するべきだし、日米安保条約を堅持するけれども、アメリカの核抑止には頼らず、通常兵器による抑止に留める政策である」
 これは、日本共産党の綱領の根幹をなす、国民多数の合意で日米安保条約を廃棄するという立場を根本から投げ捨て、「日米安保条約の堅持」を党の「基本政策」に位置づけよという要求にほかなりません。
 松竹氏は、「専守防衛」を党の「基本政策」に位置づけることも主張しています。いま私たちは、「専守防衛」さえ覆す岸田内閣の大軍拡に反対する国民的多数派をつくるために奮闘しており、「自衛隊は合憲」と考えている多くの人々とも、「岸田内閣の大軍拡を許すな」という一点で広く協力していくことを願っています。しかし、そのことと、「専守防衛」を党の「基本政策」に位置づけることとは全く性格を異にした問題です。「専守防衛」とは、自衛隊合憲論を前提とした議論だからです。結局、松竹氏の主張は、自衛隊は違憲という党の綱領の立場を根本から投げ捨て、自衛隊合憲論を党の「基本政策」に位置づけよという要求にほかなりません。
松竹氏は、自身のこうした主張を、「綱領の枠内」のものと言い訳をしていますが、驚くべき主張というほかありません。
 党綱領では、日米安保条約について、「日本を守る抑止力」どころか「日本をアメリカの戦争にまきこむ対米従属的な軍事同盟条約」(第4項)と規定し、「日米安保条約を、条約第10条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ」(第13項)と、日米安保条約廃棄の旗を高々と掲げています。
 自衛隊については、「国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」(第13項)と明記していますが、ここには自衛隊が憲法違反であるという認識と、自衛隊解消によって憲法9条の完全実施に進むという目標がはっきりのべられています。
 党綱領のこれらの根本的命題を投げ捨て、「日米安保条約の堅持」と自衛隊合憲論を党の「基本政策」に位置づけよと主張しながら、自分の主張を「綱領の枠内のもの」と強弁する。いったい松竹氏は、長い間党に在籍しながら、綱領を真剣に学んだことがあるのでしょうか。
日本共産党に対して、日米安保容認、自衛隊合憲の党への変質を迫る議論は、総選挙以来、自民党や一部メディアによって、執拗(しつよう)に繰り返されてきた攻撃です。松竹氏の行動は、“日本共産党という党の存在に期待している”といった装いをこらしながら、こうした攻撃に押し流され、迎合したものと言わざるをえません。

2023.1.21 赤旗編集局次長藤田健「規約と綱領からの逸脱は明らか―松竹伸幸氏の一連の言動について」
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-01-21/2023012104_03_0.html

松竹伸幸氏は、1月に出版した本のなかなどで、「核抑止抜きの専守防衛」なるものを唱え、「安保条約堅持」と自衛隊合憲を党の「基本政策」にせよと迫るとともに、日米安保条約の廃棄、自衛隊の段階的解消の方針など、党綱領と、綱領にもとづく党の安保・自衛隊政策に対して「野党共闘の障害になっている」「あまりにご都合主義」などと攻撃を行っています。

2023.2.6 日本共産党京都南地区委員会常任委員会・日本共産党京都府委員会常任委員会 【コメント】松竹伸幸氏の除名処分について
https://www.jcp-kyoto.jp/newseditor/newseditor-8743/

安保条約堅持・自衛隊合憲論を党の「基本政策にせよ」と主張するなど、綱領と規約の根本を否定する重大な内容を主張しながら、「規約と綱領の枠内」(会見)という偽りを振りまくことが、善意に党を考える姿勢といえるでしょうか。

2023.2.9 赤旗政治部長中祖寅一「『結社の自由』に対する乱暴な攻撃――「朝日」社説に答える」
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-02-09/2023020902_01_0.html

あれこれの異論を、党内の党規約に基づく正式のルートで表明するということを一切やらないまま、突然、外から党の規約や綱領の根本的立場を攻撃するということを行った。これは規約に違反するわけですから、しかるべき対応をやったということです。

日米安保条約堅持、自衛隊合憲という党綱領に反する主張を公然と行うとともに、日米安保条約廃棄、自衛隊の段階的解消の方針――わが党綱領とそれに基づく党の政策的立場に対して、「野党共闘の障害になっている」「あまりにご都合主義」と言って攻撃したわけです。

彼の政治的主張は、つまるところ日米安保条約堅持を党の「基本政策」にせよということです。そして在日米軍の核抑止力には頼らない方がいいけど、通常戦力の抑止は必要だということをはっきりいっている。つまり、在日米軍は日本を守る抑止力だといっているわけです。

はっきりいえば、この間日本共産党に対するいろんな攻撃がありました。その攻撃のなかで、“いまのこのご時世に日米安保条約廃棄といっているのは、もうとんでもない安全保障論だ”という攻撃が中心です。“そんなことをいっているから野党共闘もうまくいかないんだ”と。こういってさんざん攻撃してきたものでした。同じ攻撃をやっているわけです。

2023.2.10 志位委員長の記者会見・松竹氏をめぐる問題についての一問一答
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-02-10/2023021002_04_0.html

 松竹氏の言動については、党の規約を認めることができず、日米安保条約の廃棄という党綱領の核心部分を認められないと述べていると指摘。「党員としての立場がないことが明らかな人が、『党員である』ことを売りにして党の外で騒ぎたてることは、党に対する攻撃以外の何物でもない」と述べました。

2023.2.11 結社の自由への不見識 田村氏が「毎日」社説で指摘
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-02-11/2023021102_03_0.html

志位氏は▽松竹氏の処分は「異論」を理由になされたものでなく突然公然と党攻撃を開始したことによるもの▽処分は本人への聞き取りも含め段階的な手続きで行われたものであること▽氏の主張は安保堅持・自衛隊合憲論を「党の基本政策にせよ」というもので綱領の否定に行き着くこと▽日本共産党は党人事におけるポスト争いとは無縁であり「党首公選制」は党の成り立ちにそぐわないこと―などを丁寧に説明しました。

2023.2.11 事実踏まえぬ党攻撃 「毎日」社説の空虚さ
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-02-11/2023021102_04_0.html

引用:日本共産党がいう「基本政策」

党は戦後一貫して国政選挙での選挙協力は内政・ 外交の基本政策の一致を前提にしてきましたが、立憲主義が破壊されるという非常事態のもとで、立憲主義をとりもどすという一点での協力の道に踏み出した

『日本共産党の百年』p51s2

国政で協力するには、基本政策の一致が必要です。ところが、民主党は自民、公明と一緒になって消費税増税や社会保障改悪をすすめた張本人です。原発再稼働もTPPも沖縄新基地建設も推進で、安倍政権との対決軸はありません。

2014.11.22 2014総選挙 web記事「協力・共同は?一致点で幅広い国民と共同」
https://www.jcp.or.jp/akahata/web_daily/2014/11/post_39.html

(一二)現在、日本社会が必要としている変革は、社会主義革命ではなく、異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配の打破――日本の真の独立の確保と政治・経済・社会の民主主義的な改革の実現を内容とする民主主義革命である。それらは、資本主義の枠内で可能な民主的改革である…

(一三)現在、日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容は、次のとおりである。
〔国の独立・安全保障・外交の分野で〕
 1 日米安保条約を、条約第十条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ。…
 2 …
 3 自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる。
……
(一四)

統一戦線の発展の過程では、民主的改革の内容の主要点のすべてではないが、いくつかの目標では一致し、その一致点にもとづく統一戦線の条件が生まれるという場合も起こりうる。党は、その場合でも、その共同が国民の利益にこたえ、現在の反動支配を打破してゆくのに役立つかぎり、さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府をつくるために力をつくす。

日本共産党綱領(2020.1.18 第28回党大会で改定)

野党の選挙協力について問われた志位氏は、「これには、三つの原則が必要」だとして、(1)双方に協力する意思があること(2)基本政策の合意が必要であること(3)ギブ・アンド・テークの関係にあること―の三点をあげました。
そのうえで志位氏は、「現状では野党の選挙協力をおこなう条件はない」として、「基本政策の一致がないもとで無理に選挙協力を結べば、与党から“野合”と攻撃され、かえって野党の力を弱めることになる」と指摘。「選挙は、自公保政権の延命を許さないという共通の立場にたちながら、野党間でおおいに競争していくということでのぞむ」とのべました。

2000.12.8「森改造内閣、野党関係…志位委員長語る」 TBS系CS放送
https://www.shii.gr.jp/pol/2000/2000_12/2000_1209.html

――菅直人氏や公明党は共産党との連携に消極的なのは綱領で社会主義への二段階革命をうたっているからと言っています。
志位「私たちは社会の発展は一気に進むのではなく、階段を上るように段階的に進むものだと考えています。そして、どんな一歩を上がるのも国民の審判で決まる という立場です。一旦共産党と協力したら社会主義まで付き合わなきゃいけないということはない。当面の一致点があるなら国民のために協力し合うというのが野党間の当たり前の協力だと思う。」
――他の野党との選挙協力の可能性は
志位「選挙協力は、国政全体についてある程度包括的な合意がないと難しい。今そういう条件は熟していません。共産党が大きく伸びることで政党間の関係で前向きの変化を作る力になると思います。」

志位書記局長 1999.2.5朝日新聞

――でも野党第一党の民主党は政権連合の呼びかけを始めるようですが。
不破「基本政策に日米安保条約堅持と書いてあればその1行で我々は賛成できない。結局全政策をお任せしますと民主党に吸収されるようなものだからこれで行きましょう という政党はないでしょう。一方で 各党の共通項をまとめてみても漠としたものしかできず意味がない。だが自民党の悪政をいかに歯止めをかけるかという野党共闘はその気になれば知恵が出るものだ。」
――政権構想は1種類ではないと
不破「安保闘争の時に自民党の良識派を含めた選挙管理内閣と安保に反対する社会党との民主連合政権という2つの政権を同時に提案した。その後もいつの日か民主連合政府ができるまで黙って待つのでなく、局面局面でよりベターに打開する対応をしてきた。今は首相指名投票の共闘などを問題にしようと思っている。」
――衆院は小選挙区制だから野党陣営が共闘しないと結局自民党が勝利する可能性が強いのでは
不破「国政選挙の共闘は他党の代表が我が党の支持者の期待を当選後に裏切らないようにしてくれないと困ります。消費税で一致してもガイドラインで別の対応を取ると投票した人の支持を失う。だから70年代の選挙区共闘ではきちんとした政策協定を結びましたが、今の野党状況はそこまでには至っていない。次の総選挙では今回の参院選の高知型の無党派との共闘はありえても政党間の共闘は難しいと思う。」

不破委員長 1998.7.17朝日新聞

日本共産党は、かねてから…革新政権をつくるためにどういう目標でどのように共同するかという問題、すなわち政権構想と統一戦線[選挙共闘=選挙協力の意―引用者注]の問題にあることを指摘してきた。…今日の統一戦線の問題が、国政革新をめざす政党、政治勢力のあいだの持続的共闘である以上、…国政の基本問題についての政治上の一致責任ある共同目標の設定が必要であることは当然のことである。
日本共産党は…つぎの革新三目標をあらたに提示し、この目標に賛成するすべての政党、政治勢力を結集した革新統一戦線とそれにもとづく民主連合政府[現綱領でいう民主連合政府ではないー引用者注]の樹立をよびかけつづけてきた。
 ① 日米軍事同盟と手を切り、日本の中立をはかる。
 ② 大資本中心の政治を打破して、国民のいのちとくらしをまもる政治を実行する。
 ③ 軍国主義の全面復活・強化に反対し議会の民主的運営と民主主義の確立をめざす。

「政権構想と統一戦線論の決算」(赤旗1972.12・『前衛』1973.2臨時増刊 pp273-276)

引用:連合がいう「基本政策」

政権選択選挙である衆議院選挙において政党が連携・協力する場合 には基本政策(主には経済政策、社会保障、外交・安全保障)が大枠で一致し ていることが極めて重要である。
…参議院選挙の選挙区での候補者調整という選挙戦術につい ては連合として結果的に容認してきた。しかし、国政選挙において、その範囲を超 えて、基本政策や綱領等で掲げる国のめざす方向が大きく異なる政党同士が連携・ 協力することや、そのように根本的に整合を欠いた状態で部分的一致を理由に個別 の政策協定を締結することは、組合員はもとより多くの有権者の理解を得ることは 難しい…

2021.12.16 第49回衆議院選挙の取り組みのまとめ(第3回中央執行委員会確認)
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/rengotv/kaiken/20211216_49th_matome.pdf?12

引用:中北教授がいう「基本政策」

この当時(2000年11月),民主党は参議院の一人区での選挙協力にメリットを感じていていたが,これについ ては共産党の方が否定的であった。例えば,不破委員長は「国政選挙の共闘は,他党の代表が,我 が党の支持者の期待を当選後に裏切らないようにしてくれないと困ります。消費税で一致してもガイドラインで別の対応をとると,投票した人の信を失う」と述べ,「政党間の共闘は難しいと思う」 と語った。志位和夫書記局長も「選挙協力は,国政全体について,ある程度包括的な合意がないと 難しい。いまそういう条件は熟していません」と説明するとともに,双方の協力の意思,憲法問題 などの基本政策の合意,対等・平等という三つの条件を示した。

2015 年の安保法制反対運動を契機に始まった野党共闘は,1990 年代末と比較するならば,共産 党が民主党に歩み寄って選挙協力が行われ,深まりをみせてはいるが,共産党が求める連合政権に ついては,民主党が未だに受け入れていない。選挙協力が重ねられるにつれ,市民連合を媒介とす る政策合意の内容は多岐にわたるようになった。しかし,その分,安保法制を廃止し,集団的自衛 権の行使容認の閣議決定を撤回すれば,直ちに解散・総選挙を実施するという当初の暫定政権から 変化してきているのであり,そうである以上,外交・安全保障などの基本政策での一致が必要に なっている。民主党からすれば,その面での共産党の歩み寄りが不十分だからこそ,連合政権は難 しいということであろう。

民主・共産両党をはじめとする野党は今後,外交・安全保障などで妥協点を見出し,連合政権に 向けて合意に達することができるであろうか。それが共産党の綱領の根幹に関わる以上,極めて厳 しい道のりであることは間違いない。

中北浩爾「野党共闘への道 ―連合政権と選挙協力をめぐる日本共産党の模索」(大原社会問題研究所雑誌 2021.7号 No. 753)
https://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/753_05.pdf

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