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上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その7

『ほくほくおいも党』には「卒業制作版」(単行本)と、改稿された「小学館STORY BOX版」(Web版)があります。 この「雑感」は「卒業制作版」をもとにしています。 前回は、『ほくほくおいも党』の主人公・千秋が「おしつけ式外部注入・直系尊属型」メソッドによって入党したため、活動家二世に共通する悩みに加え、親子関係が原因の特別の悩みを抱えることになった、と書いた。 今回は、まず、その「活動家二世に共通する悩み」について他の文献を参考に考えてみる。続いて、「割り切り」や「千

    • 上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その6

      『ほくほくおいも党』には「卒業制作版」と「小学館STORY BOX版」があり、内容に若干違いがあります。 この「雑感」は「卒業制作版」をもとにしています。 ◆活動家二世・エントリーメドッド(3) 前回に続いて、活動家二世の入党過程をパターンごとに見ていく。 今回は『ほくほくおいも党』の主人公・千秋が経験した「外部注入・直系尊属型」メソッド。 <活動家二世/外部注入・直系尊属型> 前々回も引用したけど『ほくいも』で千秋が入党を勧誘されるシーンを再掲する。 結局、千秋は諦

      • 上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その5

        ◆活動家二世・エントリーメソッド(2) 前回につづいて、活動家二世のエントリー過程について。 <活動家二世/外部注入・地域型> 千秋が入党の勧誘をうけるときも、最初から父が登場したわけではなく、はじめはオーソドックスな手法で勧誘が開始される。 親の活動家仲間やその周辺に勧められて民青に入るーーこのタイプの人たちが二世のなかでいちばん多いとわたしは思っている。スタンダードである。 親が地域支部(居住地域を舞台として活動する党員でつくられる支部。例えば左京地区北白川A支

        • 上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その4

          ◆専従活動家と二世 『ほくほくおいも党』には、活動家二世たちが集うコミュニティーがでてくるのだが、そのメンバーの加入条件がこうなっている。 専従活動家と非専(専従ではない)活動家とで決定的な違いはある。それは、専従活動家の給料の少なさと遅配からくる、その経済的不安定さであろう。子らにとっては専従活動家家庭に共通の体験であるだろう。 ただ、『ほくいも』では、県営住宅に住んでいること以外はとくに貧乏には触れられていない。「なに食べたい?」では、父が専従活動家で幼いころからの貧

        上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その7

          上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その3

          ◆赤旗って、なに 『ほくほくおいも党』は読者にやさしい。「赤旗」とは何であるかを説明してくれるのだ。 「赤旗」が共産党の日刊の機関紙だと小説内で解説する人をこの作者以外に見たことがない(あったらすいません)のでまたまた嬉しくなった。 『パルタイ』(倉橋由美子)なんかパルタイが何であるかは一切書かない。パルタイが何かわからん人は読んでいただかなくて結構という高飛車な小説である。 プロレタリア文学・民主文学に近い作家らの小説も「ハタ」や「赤旗」を説明しないのは、読者が知って

          上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その3

          上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その2

          ◆ビラ配りと子ども あなたの親が共産党の活動家であったなら、あなたが小学生だった頃、親のビラ配り(宣伝ビラの全戸配布)についていったことがあるだろう。 『ほくほくおいも党』はそんなビラ配りのシーンから始まる。 自身が小さかった時の原風景として記憶しているビラ配布の場面が思い起こされ、主人公・千秋の姿と自分が二重写しになるに違いない。 実は、わたしも、ビラ配りするときは、子どもらが小学5年くらいになるまでは、よく彼らを連れていった。 配偶者さんが土日出勤の時など子を家に置い

          上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その2

          上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その1

          X(twitter)で流れてきたポストに目を奪われた。 「お父さんは、なんでわたしたちを共産党にいれたの?」 このあまりにも強烈すぎるコピーとかわいい女の子のイラスト。 作者は現役学生のようだ。 なんなんだこれは? しかも、作者は「民主文学」の新人賞受賞者でもあるらしい。 「民主文学」とは、小林多喜二らプロレタリア文学の正統なる後継団体が発行してる雑誌て、掲載される作品の多くが日本共産党員の手によるものだ。 そういう雑誌で新人賞を取った子が「お父さん、なんでわたしたちを共

          上村裕香『ほくほくおいも党』 雑感その1

          日本共産党にとって「基本政策」とは何なのか その2

          「日本共産党にとって「基本政策」とは何なのか・追記あり」を2023年9月11日~12日にアップしました。 同noteのうち、「『野党連合政権』での共通政策と共産党の『基本政策』」の部分において、野党連合政権にたいしての日本共産党からの政策提案が提示されていない旨のことを書きましたが、間違いでした(注)。 2020年12月の第2回中央委員会総会において「新しい日本をつくる五つの提案」が決定され、共産党からの野党連合政権への政策提案がなされておりました。 ついては、以下のとおり書

          日本共産党にとって「基本政策」とは何なのか その2

          日本共産党にとって「基本政策」とは何なのか・追記あり

          <変更履歴> 2023.9.11 8:15 イメージ図修正 2023.9.11 13:00 字句修正 2023.9.12 20:30 追記   「国民連合政権」の一点での一致点と共産党の「基本政策」   「野党連合政権」での共通政策と共産党の「基本政策」 2024.1.6 イメージ図修正 「基本政策」と「綱領の根幹」 松竹氏は、『シン・日本共産党宣言』や自身のブログなどで、日本共産党に核抜き専守防衛や自衛隊合憲を「基本政策」にしてはどうかと提案しています。当然、松竹氏

          日本共産党にとって「基本政策」とは何なのか・追記あり

          『日本共産党の百年』読書ノート その17

          限定的な閣外協力 7中総の開催月に誤植があったとコメントした以外は、引用だけです。 『百年』は、限定的な閣外協力について次のように記述する。 合意をうけての志位委員長記者会見は次のとおり。 なお、この合意に基づく政権が共産党綱領上の「さしあたって」政府であることは間違いないはずが、暫定的な政権(政策目標を達成したら解散する)として位置付けているのかは、そういう説明がないので、分からない。反戦争法統一戦線政府提唱の時は「暫定政権」との説明があったが、この2021年10

          『日本共産党の百年』読書ノート その17

          『日本共産党の百年』読書ノート その16

          戦争法廃止国民連合政権(反戦争法統一戦線政府)の性格。 『百年』の「戦争法(安保法制)反対の国民的闘争と市民と野党の共闘の発展」の項。 『百年』は、戦争法採決直後の「国民連合政権」提唱について次のように書く。 当初提案した「国民連合政府」は、“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点での合意を基礎にした政府で、暫定的なものであった。 「国民連合政府」は、綱領上は、民主連合政府に至る前の段階での、「さしあたって一致できる範囲」での統一戦線での政府という位置づけである。

          『日本共産党の百年』読書ノート その16

          『日本共産党の百年』読書ノート その15

          党の組織と運営の民主主義的な性格~党規約全面改定 『百年』の「第22回大会」(2000.11)の規約改定の部分。 『八十年』の記述は、規約改定提案を簡潔に(簡潔すぎるきらいはあるが)まとめたものとなっている。 一方、『百年』の記述は、そのほとんどが、志位委員長の「日本共産党創立100周年記念講演会・日本共産党100年の歴史と綱領を語る」からの引用である。 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-09-19/2022091907_

          『日本共産党の百年』読書ノート その15

          『日本共産党の百年』読書ノート その14

          (5)第5章部分過渡的な時期の自衛隊活用 『百年』の「第22回大会」(2000.11)の部分。 『百年』は、自衛隊の段階的解消をめざす道筋として、  ①安保条約廃棄前の段階(民主連合政府ができる前)  ②安保条約が廃棄された段階(民主連合政府ができた後)  ③国民の合意で、自衛隊の段階的解消にとりくむ段階、 という3つの段階をふむことを示した後に、次のように記述する。 上記のとおり、『百年』は、「『自衛隊が一定期間存在する』過渡的な時期」と書いている。民主連合政府ができ

          『日本共産党の百年』読書ノート その14

          『日本共産党の百年』読書ノート その13

          外国諸党との関係、一国一前衛党論、不当美化論 『百年』では、次の記述が新たに追加されている。『八十年』にはない。 これらの原則は、外国の共産党との関係を律する基準として実践してきたものだが、今回、外国の諸政党との関係を律するわが党の側の一般的な基準としてあらためて位置づけるため中央委員会で確認したものだという。 外国の政党との関係に関連するが、「一国一前衛党論」についてその考え方をそろそろ再整理してほしいところだ。 というのも、一国一前衛党論は、時として、3原則と衝突

          『日本共産党の百年』読書ノート その13

          『日本共産党の百年』読書ノート その12

          「人間抑圧型の社会」という用語 『百年』。第20回大会(1994.7)での旧ソ連社会論。 第20回党大会にかかる箇所に、「社会主義とは無縁の人間抑圧型の社会に変質した」とある。 『八十年』では「社会主義とは無縁な体制」だった箇所を、『百年』では「社会主義とは無縁の人間抑圧型の社会」」に改めている。 問題は「人間抑圧型」という用語である。 第20回大会の議案には、次のとおり、「人民が…抑圧される存在」「自国人民への抑圧」などの表現はあるが、「人間抑圧型」は使われていない。

          『日本共産党の百年』読書ノート その12

          『日本共産党の百年』読書ノート その11

          湾岸戦争は帝国主義戦争ではない 『百年』の湾岸戦争の部分。 とあるがその論文の内容の記述がない。 『七十年』では ストレートに言うと次のようになるようだ(共産党の見解ではありません)。 9条を将来にわたって守り生かす政策への転換 『百年』の第20回党大会(1994年)の部分。 従来の中立自衛路線を改め、「9条を将来にわたって守り生かす」政策への転換をする。侵略にたいしては警察や自警組織で対応するとした。 従来の「中立自衛政策」は次のとおり。 『百年』では続けて

          『日本共産党の百年』読書ノート その11