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なぜ、「足袋」の着用をオススメするのか?〜合気道と畳との関係〜【後編】

【中編】では、
ビニール畳の上で、合気道ならではの「滑るような足捌き」を行うためには、「足袋」が最適ではないかという、私なりの結論と、その理由を書きました。

↓ ↓ 【中編】の記事はこちら↓ ↓

今回の【後編】では、
私のオススメの足袋(稽古用)のご紹介と、おまけとして「畳あれこれ話」を書いています。

【参考】 オススメの足袋


① オススメ足袋のご紹介

最後に、私が長年愛用している足袋を紹介します。

ちなみに、下の写真が私の足袋です。この記事を書く直前に穴が空いてしまったのですが、長く使用した実感として、耐久性は保証できます(※穴が空いているのが拇指球の位置です)。

最初に購入した決め手は、武術家の甲野善紀先生が愛用しているという文言でしたが、私もすでに8年近く利用して、その良さがよくわかります。履きやすく、ずれにくく、高い耐久性があるので稽古用として最適と言えます(※足袋裏の補強方法を下に書いています)

福助足袋(高級雲才石底)
「拇指球」の部分に穴が空いた足袋
(筆者愛用品ですが、ついに穴が空きました。酷使したので汚れています。。)

下のWEBサイトから購入できます。
「サラシ裏」
「ネル裏」の2種類がありますが、「ネル裏」は少し暖かいので、冬場の稽古にオススメです。

福助(fukusuke)ONLINE STORE】

【Amazon(ブランド:「fukusuke」)】

② 足袋裏の補強(帆布の貼り合わせ)

足袋の素材は綿が基本です(上で紹介した足袋も綿100%)。

通常の利用環境であれば高い耐久性を発揮しますが、ビニール畳での合気道の稽古は摩擦が大きく、頻繁に稽古していると穴が空いてしまいます(上写真)。安いものではないので、使い捨るのはもったいない。

ということで、私は「帆布*」によって足袋裏を補強しています。

*「帆布」は、(公財)合気会の本部道場をはじめ、多田先生の傘下道場等において、柔道用ビニール畳の畳表に付けられている素材です(「(おまけ)畳あれこれ話」を参照)。帆布は、耐久性に優れている上に、合気道ならではの足捌きを助けてくれる素材です。

せっかく購入した足袋ですので、道着等と同じく、長く、大切に使いたいですね。ということで、参考までに、私が実践している足袋裏の補強方法をご紹介します。慣れれば、10分程度で1足ペアの作業を終えられます。

  1. 厚手の帆布生地(8号生成)・手芸用ボンドを用意

  2. 足袋裏の形に合わせて、帆布を裁断

  3. 裁断した帆布を、足袋裏にボンドで貼り付ける(+アイロンで圧着)

手芸店で最も厚手の「帆布」を利用
(8号生成帆布)
手芸用ボンド
(コニシ社「ボンド 裁ほう上手(120g)」)
足袋裏に合わせて帆布を裁断
足袋裏に帆布を貼り付けた状態
(アイロンで熱圧着)

【おまけ】 畳あれこれ話


①「JUDO」の世界的な普及と「ビニール畳」

「柔道」は、1964年の東京オリンピックで、正式競技として初採用されました。そして、日本武道館で行われた柔道競技には、伝統的な琉球畳表の柔道畳が使われていました(*1)。

しかし、「柔道」が世界の「JUDO」として競技性を高めていくとともに、世間で流通する柔道畳は、国際規格に合わせてビニール畳へと変わっていきました。

破れれば補修が必要となる琉球表の畳では激しい稽古はできませんし、何よりも、自然素材の畳の補修は日本でしかできません。仕方のない変化だったと思います。

(*1)参考:「今、蘇る伝統柔道畳表」(最終閲覧:2022/12/30)

②「帆布張り」の稽古環境

私が稽古をさせていただいた主な道場*の畳表には、全て「帆布」が付けられていました。その環境から外に出てみると、それがどれだけ幸せなことだったのかを、身にしみて感じています。

*合気道自由が丘道場/よみうりカルチャー自由が丘/合気道月窓寺道場/(公財)合気会本部道場(※筆者の稽古への参加数順)

ちなみに、合気会の本部道場では、こまめに畳の補修が行われているようです。私が稽古でお邪魔したときも、使い込まれた畳だと感じた覚えはありますが、帆布の破れを見た記憶はありません。

先日(2022/12/19)、(公財)合気会の公式Twitterアカウントが、畳交換・補修の動画を投稿されていました。畳屋さんの全面協力の下、帆布の畳表が保たれていることがわかります((動画)本部道場の畳交換の様子

ちなみに、当時の植芝道場の風景についても、多田先生がお書きになっています。かつての畳の様子がよく分かる部分なので、ここで引用させていただきます。

道場は六十畳の広さがあり、縁のない琉球畳を刺してある稽古畳が、四十枚敷かれている。畳は随分すり切れているのもあった。残りの二十畳は黒光りしている板の間だ。
(中略)何よりも感じることは、道場全体に長い間(この道場は昭和六年建築であった)、多くの人が真剣に修行を行ってきた雰囲気が染みこんでいた。

(多田宏(2018),『合気道に活きる』, 日本武道館, pp57-58)

「多くの人が真剣に修行を行ってきた雰囲気」という記述が大好きです

私が禊(みそぎ)の呼吸法と座禅の修練に通った「一九会道場」(東京都東久留米市)も、多くの人が修行を重ねてきた場であるため、こうした雰囲気を感じました。やはり、稽古や修行には、使い込まれた畳がよく合いますね。

畳が敷かれた禅堂
@一九会道場(筆者撮影)

③ 新しいビニール畳ほど、合気道に向いていないのかも…

私が日本・イタリアで出会ったビニール畳は、古いほうが(相対的に)沈みにくく、足へ吸い付く感じも小さかったように思います。そして、反対に、新しいほど、(相対的に)沈み込みが大きく、足に吸い付いてきました。

ちなみに、「ここでは合気道はできない」とさえ感じた場所は、某県のアリーナ柔道場(2016年竣工)でした。足が沈み込んで踏ん張りが効くので、見方を変えれば、「競技柔道」にとっては最適な環境だと思われます。

しかし、そのビニール畳は青みがかっており、もはや、「畳」を模すことすら放棄してしまったように感じたことも事実です

考えてみれば、昔ながらの「畳」を踏んだことすらない海外の柔道選手にとってみれば、ビニール畳の「色」など関係ないはずです。より競技がしやすく、より技がかけやすいのであれば、それで良し。

ビニール畳の色の変化からも、「柔道」が、世界の「JUDO」に変化したことが感じ取れます。

しかし、これは柔道に限った話ではありません。
合気道も海外普及が進むほど、稽古環境の一部であるはずの「畳」への意識は、相対的に小さくなっていくでしょう。

また、切実な問題として、柔道用のビニール畳が「競技柔道向き」に変わっていくほどに、合気道の稽古には不向きになっていく、という課題があります。

こうした、大きな流れは止めようもないように思います。
せめて当会では、自らの足で踏む「足元」に、こだわっていきたいと考えています。

(本文終わり)



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