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パリ 25ans 14 juillet

14 juillet, 8pm, Metro ligne 9

「じゃあAlma Morceauの橋のところで待ってるから。」Yuanは、そういうと電話を切った。

革命記念日の花火は、エッフェル塔側であがるので、トロカデロ広場やChamp de marsあたりはものすごい人で座る場所もない。結局少し離れたところからしか見れないのだから、郊外だけどここから歩いていける公園からも花火を見ることができるので、そこから見ようと思っていると何度もいったのだけど、なんで?とか、近くで見たほうがいいとか、そこからはほとんど見えないとか、30分くらい押し問答が続いた。地下鉄9番線のAlma Morceau駅をでてすぐにある、アルマ橋は人もそれほど多くないというので、そこなら1本でいけるからと、橋の上の金色の炎のような形をした像のところで待ち合わせることにした。

電話の後、すぐに部屋を出て、ちょっと肌寒いと思ったけど、もう花火開始まで時間がなかったのであわてて地下鉄に乗った。9番線は普通に出発し、途中の駅もそれほど乗り降りはなかった。あと10分ほどで花火が始まる、というときちょうどトロカデロ駅で電車が止まった。が扉が開かない、駅にも人がいない。しばらくして、駅と周辺道路が封鎖されているから、このまま通過しますというアナウンスが流れた。降りようとしていた人たちは、口々に何か言って、席に座った。Alma Morceauまでは二駅なのに、なかなか発車しない。遠くでドーンと花火が上がる音がし始めたころ、ゆっくり進み始めた。Alma Morceau駅についた時には、すでに花火を見終わった人がなだれのように駅に入ってきていて、出入口の階段を上ろうとしても、降りてくる人の流れが多すぎて押し戻されてしまう。かきわけかきわけなんとか地上に出たとき、待ち合わせたはずの時間から1時間以上たっていた。

セーヌ河岸の歩道の人はすでにまばらになってきていて、赤く輝くエッフェル塔の周りに火薬の煙がかすかに漂っているだけだった。アルマ橋の金色の炎の像の周りには、その下の高速道路で亡くなったダイアナ元妃への追悼の花束が今もたくさん手向けられていた。その側でこちらに小さく手を振っている背の高い人がいた。Yuanだった。

「やっとついた・・」「やっと会えたね」「トロカデロで電車が止まって・・」「花火、終わっちゃった」顔を見合わせたら、急におかしくなって、二人で笑った。

「きれいだった?花火?」「きれいだったよ、残念」「ああ、ほんと残念!」「ちょっと散歩しない?」地下鉄に向かう歩道はまだ人であふれていたので、セーヌ河沿いの遊歩道を歩いた。ほかにも誰かいるのかと思ったら、彼だけだった。遊歩道にはところどころ屋台が出ていて、綿菓子やサンドイッチやポップコーンやベニエや、甘いにおいスパイシーなにおいバターのにおいにウキウキしてきた。

「この綿菓子って、フランス語でなんていうの?」「バーバパパ」「え?バーバパパってあのバーバーズーのお父さん?」Yuanは一瞬?という顔をして、ああっとわかった顔になり、「違うよ!そのバーバパパじゃなくて、Barbe a Papa パパのひげ」「あ、ひげ!ってバーバパパ知ってるんだ」「知ってるよ、小さいころアニメでやってた、ピンクとか黄色いやつでしょ」「そうそうバーバママとかいた」「食べる?バーバパパ」そういって買ってくれた綿菓子はピンク色でイチゴの味がした。彼はお腹がすいたとメルゲーズというスパイスの効いたソーセージにフライドポテトがたっぷり乗ったサンドイッチを買ってほおばった。

「日本のアニメもけっこうみるよ。ドラえもんとかドラゴンボールとか。あとほら小さくなるやつ、えっとなんだっけ、ハイスクール、奇面組」「うそ!?そんなのまでやってるの?フランスで?」「高校生で時々小さくなるの、面白いよね。あと、ミヤザキの映画も好き。トトロを見て泣いちゃった」「私も好き。めいちゃーんって探すところ。」昨日初めて会った人なのに、こんな話で盛り上がると思わなかった。遊歩道はコンコルド広場に続いていて、チュイルリー公園に来ている移動遊園地の明かりが見えてきた。「せっかくだから、観覧車のろうよ!」


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