学生時代から難産によく遭遇し、
指導者から「吸引女！」と呼ばれていた。
（吸引分娩ばかりを引き当てるから）

とにかく経過の長いお産が多いのだ。
ただ、このおかげで耐え抜くメンタルと
最悪の事態を招かないための様々なケアの
タイミングを学んでくることができた。

今回のお産も前回は吸引分娩。
そして、現在、まさに停滞中。
さらに、産婦は不安、恐怖、緊張から、
仙骨の動きが弱くなっている。

こ　れ　は、よ　く　な　い！

私の本能が感じとった。

これまでたくさんのお産を見せてくれて
立ち会わせてくれて、学ばせてくれて
助産師として生かせてくれて、ありがとう。
力足らずだった方、ごめんなさい。
力があると思っていた自分、ごめんなさい。
いいお産をしようと思って、ごめんなさい。

そんなふうに思考を巡らせていたら、突然、
彼女の身体の求めているケアがわかり、
心が求めている言葉が浮かび、
母なる地からいのちが生まれだした。

本当に、
暖かくなった大地からいのちが芽生えるように
むく、むくっと赤ちゃんが生まれてきたのだ。

頭の半分が出たところで陣痛がとまる。
みんなで頭をなでなでし、名前を呼んで
お迎えする。

かわいいかわいい、いのちの芽生え。

お母さんにお臍を切ってもらい、
生まれてくれてありがとう、のハグをする。

もう不安や恐怖はない。
そこにあるのは、愛と感謝。

10年間の節目にふさわしい、
自分が試されたお産。
もっともっと味わいたいこの魂の歓び。
私はまだまだ傲慢で、無力で、エゴな人間だと
気付かされたお産。

さて、助産師は何をする人ぞ。

新たな課題を抱き、
私もまた長い冬眠から覚めるように
むくっむくっと動き出してみよう。